現在、生活する上で無くてはならないお店といえば、そう100円ショップ。駅の近くやモール、主要幹線道路などには必ずありますよね。最近では商品のクオリティも高く、長く使用できるものから、おしゃれなものまで品揃えも豊富です。
国外においても、日本でいうところの100円ショップや金額均一ショップが人気です。世界の100円ショップ市場についてご紹介します。
日本国内の100円ショップの市場
100円ショップ人気の背景とは
日本においては「失われた20年」と呼ばれる長引く不況、デフレがありました。通常デフレ下では物価も下がるのですが、日本では不況で所得が下がったにも関わらず輸入品などの価格が高騰し、特に食品関係はむしろ値上がりになっています。その状況下で、100円ショップは変わらず均一の低価格なため、景気の低迷時にも売り上げを伸ばし続け、不況にもたいへん強い業界ともいえます。
100円ショップ市場の現在
100円ショップ市場は、大手4大100円ショップ企業である「ダイソー」「セリア」「キャンドゥ」「ワッツ」で売り上げの多くを占めています。売上高の順位では、1位「ダイソー」2位「セリア」3位「キャンドゥ」、そして4位「ワッツ」の順になります。
市場規模は各企業が軒並み毎年売り上げを更新しており、2010年では5000億円半ばであった市場規模が2020年度には、この大手4社の合計のみで約8525億円にも上ります。店舗数も右肩上がりに推移し、2021年1月には8000店舗を超えました。さらに新型コロナウイルスの影響により在宅時間が増加し、生活消耗品、家庭用品、インテリア用品、清掃用品などの売り上げも増加しています。
100円ショップは既述のように、低価格のため不況にも強いといわれています。インフレ時にもデフレ時にも価格変動がなく、もしこれから景気が下向きになったとしても、100円ショップの売り上げにはそれほど影響がないと考えられています。
このように、日本ではさらに売り上げを伸ばしている100円ショップですが、海外ではどのような展開をしているのでしょうか。
日本の100円ショップ企業の海外進出
まずは日本の有名100円ショップの海外展開状況についてです。全ての大手100円ショップ企業が海外出店しているわけではない状況ですが、海外進出企業は日本のイメージをうまく活用し展開を行なっています。
ダイソー
日本の100円ショップ最大手の「大創産業」が展開するダイソー。2021年国内に3620店舗を出店しています。世界中のさまざまな国と地域に多くの店舗を出店しています。
まずはアジア地域からご紹介します。
地域 | 諸国 | 出店状況 |
---|---|---|
アジア | 台湾、韓国、香港、マカオ、ラオス、ベトナム、カンボジア、ミャンマー、タイ、中国、シンガポール、フィリピン、マレーシア、インドネシア、モンゴルの15の国と地域。 | アジアの多くの主要都市に出店しており、中国でも上海などの大都市部に展開しています。 |
オセアニア | オーストラリア、ニュージーランド | 南半球、日本の真南にあるオセアニア地域は、もちろんこの2大国に出店しています。 |
北米 | アメリカでは、ワシントン州シアトル、カリフォルニア州サンフランシスコ、ロサンゼルス、テキサス州ダラス カナダは、リッチモンド | すでに多くの均一ショップが浸透している北米市場にも大都市に進出しています。 |
中東 | UAE、クウェート、サウジアラビア、カタール、バーレーン、オマーン、イスラエル | 中東では日本製の商品が人気が高く、進出企業も増加しています。 |
南米 | ブラジル | その他、南米地域も出店計画中。 |
広大な地域と景気の安定する北米での店舗運営は納得の展開ですが、均一ショップや、日本人気の高いアジア地域や中東地域にも力を入れています。
看板には「DAISO JAPAN」と日本のブランドであることを明確にし、信頼性や高品質感を表現しています。ダイソーは海外でも店舗数を増加させている上、実店舗だけではなくインターネットによる注文も受け付けています。そこでは、日本で購入可能な商品と同様なものや、アジア地域で人気のあるサンリオ商品などを取り扱い、トレンドのネットショッピング需要を満たしつつ、日本らしさをアピールしています。さすが業界最大手といえる海外展開とその内容ですね。
広大な地域と景気の安定する北米での店舗運営は納得の展開ですが、均一ショップや、日本で人気の高いアジア地域や中東地域にも力を入れています。
ワッツ
業界では売上高第4位のワッツですが、ダイソーに続いて次に海外展開に力を入れている企業です。
アジア地域から出店を開始し、タイに2009年、中国に2012年、マレーシアに2013年、ベトナムに2014年、そして南米のペルーに2015年と着実に展開を進めており、現在海外に83店舗を有しています。特に100円ショップが人気なタイでは「KOMONOYA」(こものや)という別ブランドも有しており、合計で50店舗を出店しています。
海外事業はこれからも拡大していく方針で、ペルー出店を足掛かりに、南米の国々への拡大も進める計画です。
キャンドゥ
キャンドゥも海外展開をフランチャイズ形式で行っており、2007年に中国の上海「感動商業有限公」を子会社として展開しています。2015年には韓国、モンゴル、タイにも進出しました。しかし、中国と韓国に関しては残念ながら既に終了してしまいました。
タイはバンコクにある映画館のモール「メジャー・ラチャヨティン」など多くの人々が集まる場所に店舗を構え、現在タイ国内で8店舗が営業しています。
セリア
100円という価格にこだわり、日本製商品の取扱いも豊富なセリア。ダイソーとは異なりおしゃれなインテリア雑貨など、デザインにこだわった商品も多いですよね。セリアは2021年で1787店舗を国内展開しており、国内第2位の売上高を誇っています。
海外出店に関しては、将来的に他企業に追随して海外展開を行う可能性もありますが、現在のところは行っていない状態です。
各国の価格均一ショップ企業の状況
アジアの国々でも100円ショップのシステムと類似した「価格均一ショップ」の人気が高く、各国それぞれの物価に合わせて展開されています。
中国
世界第2位の経済規模を誇る中国にも均一ショップは存在しています。既述のダイソーも中国に進出していますが、その価格は100円の商品で10元からです。日本円で換算すると170円程なので、価格は倍近くになっています。日本より価格は割高な設定ですが、100円ショップのようなワンコイン形式(中国での10元は紙幣)となっています。そして、日本のダイソーが100円、200円、300円という商品があるように、中国版でも日本のダイソー価格が商品それぞれに設定されています。
無印良品やユニクロのロゴ・商品デザインと似ていると、日本進出の際に話題となった「名創優品」も中国主体の企業で、中国国内はもちろん、日本をはじめ世界各国に進出を図っています。
ローカルの10元ショップも存在しますが、いまだ中国国内の市場的には100円ショップは普及しているとはいえない状況です。「100円ショップの里」と呼ばれる、日本の100円ショップで販売される商品を製造する地域も有する中国。価格設定を見直し、商品内容を中国の国民に合わせることができれば、これから伸びる可能性のある市場と考えられています。
タイ
タイではもともと価格均一ショップは人気で、タイでの均一ショップなどの日用短期消費財の市場は約12億バーツ。日本円で換算すると約40億円規模にもなります。タイの最大手の均一ショップは「AEKO」(エーコー)というお店で、タイ国内に400店舗弱を展開しています。タイに出店しているダイソーの価格は60バーツから。日本円で換算すると約200円なのでこちらも価格的には日本の倍になります。
他にも均一ショップは価格で種類分けされており、ダイソーのような「60バーツショップ」をはじめ、低価格の「20バーツショップ」、ダイソーより高価格の「80バーツショップ」、そしてそれ以上の価格の均一ショップも存在しています。
今後もローカル企業の店舗の拡大やダイソー、名創優品のように海外からの参入も増加が見込まれ、さらに10%弱の成長があると予想されています。比較的物価の低い国々での人気が高いですが、欧米などの物価が高い国々でも均一ショップは人気が高くなっています。
イギリス
イギリスでは1ポンドで商品を販売するので「ポンドショップ」などとも呼ばれています。
その中で特に有名なポンドショップといえば「Poundland」(ポンドランド)です。比較的新しく立ち上げられた企業で、1990年に設立されました。商品は1ポンド=約150円にて購入可能で、1週間に約700万人がポンドランドで買い物をするといわれているほど大人気のお店です。
多くの企業からの参入もあり人気の高いポンドショップは、イギリス国内販売競争が激化していきました。過去に大手ポンドショップの一つであった「Pound World」(ポンドワールド)を中心とした、「Pound Shop Wars」(ポンドショップウォーズ)というタイトルの番組が2012年から2015年まで放送されました。この番組では、ポンドワールドのライバル企業である前述の「ポンドランド」や「99p Stores」(99pストアーズ)との対決や、さまざまな挑戦を行う番組で人気を獲得しました。
これらのポンドショップの店舗様式は日本の100円ショップと同じように、生活用品から食品まであらゆる商品を揃えています。イギリスの物価はスーパーで購入する生鮮食品以外は全体的に日本より高額なため、イギリス人としては、日本の100円ショップと金額的な感覚としてさほど変わらないような形です。
アメリカ
アメリカでも「Dollar Store」(ダラーストア)や「One Dollar Shop」などと呼ばれ、多くの人々が利用しており、さまざまな企業が店舗を展開しています。
市場もとても大きく2020年に920億ドルの市場規模を持ち、前年より2.4%も上昇しています。アメリカでは特に都市部で、好景気によりさまざまな商品の価格が高騰する中、ダラーストアの商品は価格が一定で、購入しやすいという利点から、売上も増加している状態です。中でも「Dollar Genera」(ダラーゼネラル)や「Doller Tree」(ダラーツリー)の成長は目覚ましく、ダラーゼネラルは約17000店舗、ダラーツリーは約15000店舗を構えています。
アメリカの物価もイギリスと似ており、スーパーの生鮮食品などは日本と比べ比較的低価格ですが、そのほかの価格は都市部では日本より高額な傾向にあります。物価が高いアメリカの地域では、低価格で商品が購入できるとして日本のように幅広く人々に浸透しています。
アメリカの中でも特に物価の高いカリフォルニア州でも、「99¢ Only Stores」(ナインティナイン・セント・オンリー・ストアーズ)が多く店舗展開されています。価格は当初、99セント以下のみでしたが、物価の高騰に合わせ、1.99ドルや2.99ドルの商品も展開を開始しています。
日本の100円ショップのように季節のアイテム、ハロウィンやクリスマスの飾りつけ、メイク道具なども販売しており、低価格で気軽に利用できるのが特徴です。そのほかにも個人で経営する小規模なショップが国内に多く存在しており、店舗数も拡大している状況です。
まとめ
日本だけではなく世界でも大人気の100円ショップ市場。さまざまな商品が同価格で販売されていることや、低価格、高品質で購入できることが人気の秘訣でもあります。
今後日本でもさらに店舗数が拡大し、日本企業も海外へ展開する中、どんな商品でも取り扱えるという点で、商品展開も様々なものが増加し、優れたデザインや更なる高品質、低価格を武器に海外でも盛り上がりのある市場といえるでしょう。
100円ショップ市場
https://gyokai-search.com/4-100yen-uriage.html
ダイソー店舗
https://www.daiso-sangyo.co.jp/recruit/daiso/shops
ダイソーオンラインストア
https://www.daisojapan.com/default.aspx
ワッツ企業計画
https://www.watts-jp.com/ir/421/1/
キャンドゥ沿革
https://www.cando-web.co.jp/corporate/about/history.html
タイの100円ショップ
https://www.nna.jp/news/show/1617705
Pound Shop Wars
https://www.bbc.co.uk/programmes/b03txw7z
Dollar General
https://www.dollargeneral.com/
Dollar Tree
https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/935703/000093570318000013/dltr-2018x02x03x10k.html
99¢Only stores
https://99only.com/