ヘアシャンプー市場。海外の動向から各社の戦略まで。P&G(米)、ユニリーバ(米)、ロレアル(仏)、ミルボン(日)、アンファー(日)

世界のヘアケア市場は、健康的な髪への需要の高まりで堅調に拡大しています。米リサーチ会社 Transparency Market Researchによると、同市場は2016年から2024年までの期間中に3%の 年平均成長率で着実に成長する見通しとなっています。

また、2024年には1050億ドル規模に達すると専門家は予測しています。ここでは、海外と日本のシャンプー業界の動向についてご紹介します。

外資のシャンプーブランド

それではまず初めに、日本で根強い人気を誇る女性向けシャンプーの外資系ブランドを見てみましょう。

P&Gのパンテーン(米国)

P&G

https://pantene.jp/ja-jp/product/basic-line

同社はアメリカオハイオ州シンシナティ市に本社におくP&Gの主力商品です。1945年に誕生した「パンテーン」のシャンプーは、70年以上もの間世界中で愛され続けています。

日本法人P&Gジャパン研究所でも研究開発がされており、成熟した日本の消費者を理解することで他国でも通用する革新的な開発を行っています。

ユニリーバ・ジャパンのLUX(米国)

LUXpng

https://www.lux.co.jp/haircare/

米系の王者がP&Gであるならば、欧米の王はユニリーバでしょう。世界190カ国でブランドを展開し、代表的なブランドにDoveやLUXなどのヘアケアブランドを持っています。他社との差別化は、「顧客の感性を理解する鋭さ」です。消費財メーカーでは、顧客分析をデータ化し、計算されたニーズ分析を基に消費者のニーズにあった商品を販売しています。

ロレアルのELSEVE

日本ロレアル

フランス発の世界最大の化粧品会社のロレアルは、34ものブランドを150カ国で展開しています。日本ロレアルはアジアで唯一、基礎研究と評価が可能な施設を備えており、アンチエイジングやヘアケア分野においても有効成分の開発に成功しています。

それでは次に、日本人が海外でシャンプーを使用する際の注意点についてお話しましょう。海外旅行に行った際に、日本から持ってきたシャンプーの泡立ちが悪くて困ったことはありませんか?もし今後海外に行くことがあれば、海外現地のシャンプーを利用することをお勧めします。

しかし、現地のシャンプーを買ってみたけれどもシャンプーの際にキシキシするといったご経験をお持ちの方もいるでしょう。泡立ちの原因は、水が原因です。例えばヨーロッパと日本を比較すると、ヨーロッパは硬水、日本はと水の質に違いがあり、泡立ちに影響するのです。

今はコロナ渦で海外に渡航できませんが、今後もし例えばアメリカに出張や旅行に行くことがあれば、下記のシャンプーが美容師の間で「日本人に合う」とされている評価の高いブランドです。

おススメシャンプー:女性

1位 Organix オーガニクス マルラオイル シャンプー&コンディショナー

オーガニクスシャンプーの特徴は、クリーミーな泡で髪や頭皮の汚れをしっかり洗浄できることです。海外特有の髪のきしみもありません。

オルガニックス

おススメシャンプー:男性

giovanni スムーズアズシルク モイスチャー シャンプー

giovanni

汚れた髪や頭皮をしっかり洗浄する脱脂力の高いシャンプーで、泡立ちが良いと定評があります。海藻、ベジタブルプロテイン、オーガニック植物保湿成分などの安心感のある成分も使用されており、パサつきやきしみが気にならない仕上がりが実現します。

日本のヘアケア市場

矢野経済研究所の発表では、2018年の育毛・発毛剤・毛髪業含むヘアケア市場の規模は、前年比1.3%増の4488億9000万円と微かに増加し、2019年の市場規模を100.7%になると推測しています。

富士経済の調査が2019年1月~6月にかけて行った調査では、2019年のヘアケア市場は1.2%増と伸長が見込まれ、単価が上昇傾向にあるようです。

日本ヘアケア市場

近年、環境の変化に伴った敏感肌女性の増加、安全・安心志向の高まり、エコやロハスを重視したライフスタイルを意識する消費者が増えています。国内の自然派・オーガニック化粧品市場には、国産ブランドのみならず海外ブランドの導入が進んでおり、2018年度の国内オーガニック化粧品市場は前年度比104.9%の1,415億円となりました。

日本では約5年程前からノンシリコンシャンプーやオーガニックシャンプーが人気となりましたが、現在はボタニカルシャンプーの存在もシャンプー市場を語る上で欠かせません。それぞれの特徴と人気の理由を見てみましょう。

日本のオーガニックナチュラルコスメ

https://www.ryutsuu.biz/commodity/k072716.html

ノンシリコンシャンプー

一般的にシャンプーに配合されている「シリコン」の正式名称は「シリコーン」です。シリコン(元素の1つであるケイ素)を合成処理したもので、シクロメチコン、ジメチコン、シロキなどの成分があります。

髪のキューティクルを保護し、指通りをスムーズにする役割を持っており、これらが配合されていないものが「ノンシリコンシャンプー」です。ノンシリコンシャンプーには、.下記2つのメリットがあります。

長所:カラーリングやパーマがしっかりとかかり、長持ちする

シリコンには、髪のキューティクルに張り付き髪を保護する機能があるため、シリコン配合のシャンプーを使用するとカラーリングやパーマの薬剤が浸透しにくくなってしまいます

長所:頭皮を健やかに保つことができる

シリコン配合のシャンプーを使用後、しっかりすすがないと頭皮にシリコンの成分が残り、フケや痒みなどの頭皮トラブルにつながる可能性がありますが、ンシリコンシャンプーであれば、頭皮にシリコンの成分が残ることがありません

第3のシャンプーとして注目を集めるボタニカルシャンプー

ノンシリコンシャンプーに次ぐ「第3のシャンプー」として注目を浴びる「ボタニカルシャンプー」は、2017年後半に店頭で見るようになりました。商品名のボタニカルは「植物性」のことをを指し、商品にはサトウキビや甘草やヤシなどの植物由来の成分を多く含んでいます。

自然素材の商品ではあるものの洗髪の際のきしみも抑え、低刺激のため子どもでも安心して使用できる点が特徴です。

ボタニカルシャンプー

https://www.bioliss.jp/

オーガニックシャンプーとの違い

ボタニカルシャンプーとオーガニックシャンプーはどう違うのかという点ですが、オーガニックの基準を満たすのは下記のポイントをクリアした場合です。

オーガニックシャンプー

https://www.mine-3m.com/mine/news/image?news_id=105845

実際のところはオーガニックもボタニカルも、ほとんど違いはなくいのですが、「有機植物を使っているかどうか」だけがポイントになります。
もしも2つのどちらを購入するか迷った際は、以下を基準を参考にしてください。

・より安全で頭皮や髪にやさしい → オーガニックシャンプーが向いている

・そこまで自然派ではないが、天然由来成分多めのシャンプー → ボタニカルシャンプが向いている

アルジェラン

オーガニックシャンプーで人気のアルジェラン

女性だけでなく男性も、近年「オーガニック」や「天然素材」などのキーワードを重視するようになっています。今後もボタニカルシャンプーはまだまだ人気が続いていくのではないでしょうか。

オーガニック大国と呼ばれるほどオーガニック製品が人気のフランスでは、オーガニックシャンプーを使っているフランス人が多いようです。最近日本で増えているシリコンフリーのシャンプーも以前から定着しており、ドラッグストアでは2ドルから販売されています。

フランスで人気のあるオーガニックシャンプーは、ル・プチ・マルセイユなどが挙げられます。

ル・プチ・マルセイユ

https://kireinotes.com/are1385345f83137acbb00c002098c63f4575f1f41

ミルボン

ミルボン

https://www.milbon.co.jp/

ミルボンは1960年に大阪で創業されました。創業者は業務用ヘア化粧品の代理店出身で、国内ヘア化粧品メーカーとして241番目の後発組です。設立当初はターゲティングを行わず、なるべく幅広く自社商品を販売してきましたが、途中で戦略を変更。

その後は一貫してターゲットから理容室(床屋)を除外し、美容室に限定する戦略を取ってきており、エンドユーザーはほぼ女性になります。飽和状態とも言える美容室の中から、潜在的な成長力が感じられる美容室を見極めて取引をしてきました。

同市場規模1,600億円と決して大きくない市場において、ヘア化粧品だけに限定し、その中でもヘアケア用剤を軸にし美容室向けのトップのポジションを獲得し維持しています。

ミルボン業績推移

https://www.jmrlsi.co.jp/scto/case/2018/milbon.html#:~:text=%E3%83%9F%E3%83%AB%E3%83%9C%E3%83%B3%E3%81%AF%E7%BE%8E%E5%AE%B9%E5%AE%A4%E5%90%91%E3%81%91,%E5%84%84%E5%86%86%E3%82%92%E7%AA%81%E7%A0%B4%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82

美容室向けの業務用ヘア化粧品という分野において、ミルボンはで国内トップシェア(約15%)のメーカーとなり、96年に業界初の株式店頭公開をしました。99年に国内トップとなってから今日までトップを維持しています。

1996年の株式公開から2017年12月期まで、21期連続増収で売上高は300億円を突破し続けています。この成功要因は上記で述べた「差別化集中戦略」を継続してきたことが要因です。

オージュア

https://www.milbon.co.jp/ir/upload_file/m000-/20200331_61s1q_presentation_material.pdf

ミルボンの主力商品であるブランド「オージュア」は、エンドユーザー1人1人の毛髪診断から「オーダーメイドのヘアケアプログラム」を組み立てるサービス設計となっており、専門の教育研修を受けて基準を合格したサロンのみが扱えるサービスです。

また、試験に合格した美容師を独自資格の「オージュアソムリエ」と認定し、このようにすることで、サロン間及び、美容師間の競争意識が働きます。これによりブランドロイヤリティも高まるという仕組み作りをしています。

オージュアソムリエ

https://www.aujua.com/sommelier.php

ミルボングループは、グローバルポジションにおいてアジアシェア1位、世界シェア5位以内と年々好調な立ち位置を築いています。

グローバルポジション

http://daiwair.webcdn.stream.ne.jp/www11/daiwair/qlviewer/pdf/1902134919zg73w3.pdf

アンファー

アンファー

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000234.000013377.html

アンファー株式会社は、1987年に創業された企業で、日本のエイジングケア化粧品、健康食品製造販売会社です。育毛シャンプー「スカルプD」が主な製品とし、エイジングケア製品は医師が監修しています。

「スカルプDは、もともとは頭髪専門のクリニックで院内専売用に作られました。薄毛を気にする患者さんから『シャンプーはどういうものを使ったらいいですか』という質問を日々受けていた医師が、クリニックで自信を持っておすすめできるシャンプーを作りたいという想いでこの商品の開発が始まりました」と当時の開発担当者は述べています。

2005年に発売当時、メンズシャンプー・リンス市場において、「頭皮を洗う、頭皮をケアする」という斬新なコンセプトを掲げ、スカルプDを売り出していったのです。その後、2009年に初めて売上1位を獲得して以来、今年で10年連続での売上1位を維持しています。

アンファー売上推移

https://www.jmrlsi.co.jp/scto/case/2013/angfa.html

男性の薄毛(AGA)は一般的に20代後半や30代前半から始まるとされています。頭頂部や前頭部が薄くなり、主に生え際から徐々に髪の毛が後退するのが特徴です。アンファーは、生活習慣の改善だけでなく頭皮ケアも30代から始めることを推奨しています。

薄毛に悩む男性は、日本全国で1,800万人以上いるとのデータがあります。毛髪のウェルネス産業の株式会社アデランスが、コミュニケーション方法の多様化が進む現在の社会背景の中、全国の20代から60代の男性を対象とした、「メタモルフォーゼ(ドイツ語で変身を意味する)願望」に関する意識調査を行ったところ、「薄毛対策」の市場は約6000億円にも上ることが分かりました。

将来市場規模(今薄毛ではないが対策に使ってもいいと思える金額)は、その2倍の1兆2000億円強となりました。

スカルプDは薄毛の予防としてのアンチエイジングだけでなく、育毛剤にも力を入れていますが、拡大するAGA市場において揺るがない独自のポジションを築いています。

スカルプD

https://www.angfa.jp/news/?p=2136

最後に

世界や日本のシャンプーの動向についてご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。それほど大きくない日本のシャンプー市場でアンファー社が取った戦略や経営方針は素晴らしいと感じました。

今後は頭皮のアンチエイジング市場がますます拡大しますが、AGAシャンプーで独走するアンファー社の成長市場へのアプローチも興味深いと感じます。

<参考>
https://pdf.irpocket.com/C8170/LOUh/KpDV/PiSe.pdf

https://forbesjapan.com/articles/detail/15441/1/1/1

http://ribiyo-news.jp/?attachment_id=30530

https://mujihi.jp/2019%E5%B9%B4%E3%81%8B%E3%82%892025%E5%B9%B4%E3%81%BE%E3%81%A7%E3%81%AE%E3%83%98%E3%82%A2%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%97%E3%83%BC%E5%B8%82%E5%A0%B4%E3%81%AE%E6%B4%9E%E5%AF%9F%E3%81%A8%E4%B8%96/

https://www.syogyo.jp/news/2020/05/post_027469

https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2163

https://www.milbon.co.jp/app/webroot/ir/pdf/20190213_new-mid_strategy2019-2023.pdf

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000152.000013377.html

https://nkpos.nikkei.co.jp/column/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%97%E3%83%BC%E5%B8%82%E5%A0%B4%E3%81%A7%E3%80%8C%E3%83%9C%E3%82%BF%E3%83%8B%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%80%8D%E3%81%8C%E8%BA%8D%E9%80%B2

https://beauty.epark.jp/hair/article/bc-1/mc-70/sc-133/writing-000029/

https://hansokunodaigaku.com/keiei_post/8605/

https://president.jp/articles/-/33625?page=1

https://haircare-salon.com/archives/5546

https://www.tabitowatashi.com/entry/europa-travel-shampoo/

https://haircare-salon.com/archives/13676#i-2

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