AEONの経営戦略。小売業界のM&Aから海外事業まで

カンボジア国民の平均年齢は24歳と、高齢化が進む日本よりも平均年齢は20歳以上若く、消費意欲が旺盛です。

そんな経済発展が著しいカンボジアに2018年5月、「イオンモール セン ソック シティ」がオープンしました。

カンボジアの勢いを象徴したショッピングセンターで、面積8万5000平方メートルの敷地に店舗やレストランだけでなく、ボーリング場、コンサートホール、室内遊園地、プール、アクアリウムなどの設備もあります。

 

東南アジア諸国には多くの大都市にイオンが続々と進出しています。

バンコクには、イオンの子会社の「スーパーマックスバリュー」が多数あります。日本のカツ丼やおにぎりが売られており、マレーシアにもイオンモールが数多くあります。最近では、ベトナムのホーチミンやハノイにも大規模なモールがオープンしました。

 

近年ASEANは、日本などの先進国を遥かに凌駕する勢いで世界の経済を牽引しています。

例えば、ベトナム、カンボジアのGDPは、1990年と比較すると20倍前後増加しており、マレーシアやフィリピンなどの新興アジア諸国でも4~8倍に拡大しています。人口増加率・地価上昇率において今後も成長を続けられるだけの伸びしろがあり、海外市場として引き続き注目が集まっています。

 

ここでは、イオンのアジアにおける海外戦略やイオンがなぜ海外で成功しているかについてご紹介します。

 

海外に活路を見出す小売業

海外に活路を見出すイオンなどの小売業が増えています。日本は少子化が進み、消費者の人口増と購買力の伸びが期待できませんが、ASEAN市場は、下記のグラフの通り人口に比例して購買力も伸びていっています。

日本・ASEAN_GDP

https://www.cityindex.co.jp/overseas/riverpanorama/charm/

 

JETROの調査によるレポートでは、2015年から2025年の間に、ASEAN諸国の人口とGDPは下記のように増加すると分かっています。

ミャンマー

人口:5069万人→5492万人

一人あたりのGDP:1162USD→2857USD

※以下「人口」と「一人あたりのGDP」省略

インドネシア

2億5756万→2億8451万

3343USD→6413USD

タイ

6796万人→6864万人

5813USD→8826USD

ベトナム

9345万人→億209万人

2070USD→3517USD

 

このようなASEAN市場に日本の多くの小売業界が進出しています。

 

海外進出で成功しているユニクロと良品計画

それではアジアに海外進出している日本の小売大手ユニクロと良品計画の事例を見てみましょう。

 

ユニクロ

中国やタイを訪れると大型ショッピングモールの中には必ずと言っていいほどユニクロが入っており、現地客で賑わっています。2019年上期のIR情報を見てみると、特に中国大陸での売上が伸び、東南アジアではインドネシア、フィリピンが好調となり、大幅な増収増益となりました。

アメリカや欧州を含めた上期の売上収益は5,800億円、前年同期比で14.3%増となりました。海外での出店、販路拡大は経営の観点から成功していると言えるでしょう。

 

特に中国での成功が著しいユニクロですが、中国事業の責任者である潘CEOは、成功要因について、下記の6つがあると述べています。

  1. ユニクロのブランドビルディングの成功
  2. デジタルマーケティングの拡大と進化
  3. 他社に真似できないユニクロの商品
  4. 出店戦略の成功
  5. EC事業の拡大
  6. 強いチームワーク経営・全員経営

特に、中国と日本で特徴が異なる②と⑥のマーケティングについて詳しく見てみましょう。

 

デジタルマーケティングの拡大と進化

中国のユニクロは、新商品や新しいイベントをSNS上で積極的に配信しており、着実に集客に影響しているようです。WeChat、WeiboなどのSNSのマーケティングによって、日本で言うところのインフルエンサーであるKOLの獲得に成功。これによりマーケティング効果がより高まっています。

 

EC事業の拡大

日本に比べて中国では、非常にEC事業が発達しています。ユニクロのEC売上高構成比は全体の約20%となっており、2021年8月期には、売上高構成比が3割を超える計画を出しています。

グローバルで推進しているO2O(オンライン・トゥ・オフライン)と呼ばれる店舗とオンラインが融合した新しい小売りのスタイルも確率し、国土が広い中国大陸では店舗がECの倉庫の役割を担っています。

店舗在庫をオーダーに引き当てながら効率よくビジネスを展開し、購入された商品をいち早く届けるようにしていくとのことです。

ユニクロAI

https://o2o-marketinglab.jp/post/52/20171012010039/

 

無印良品

良品計画は、日本国内に450店舗、海外に470店舗を構えるグローバル企業で、利益の半分が海外事業というのは有名な話です。特にアジアでの売上が好調で、中国本土での存在感が強く、大きな利益を上げています。

 

無印の最近の海外進出状況を見てみると、2020年にベトナムのホーチミン市に、同国で初となる店舗をオープンしました。Muji製品は、ベトナムの人々が近隣諸国のタイ、香港、フィリピン、シンガポールなどのMujiストアを訪れた際、積極的に製品を購入してベトナムに持って帰っており、ベトナム人から非常に支持されているブランドです。

同社は、今回ベトナムを選んだ理由として、ベトナム国内における急速な経済発展と、現在ASEANの中で3番目に多い人口を有していることを挙げています。

 

イオンの事業内容とダイエー買収

イオンの海外展開の歩みについてご紹介する前に、まず、イオンがどのような事業を行っているか簡単にご紹介します。

私達の身近にあるイオンの傘下には、下記のようなスーパーマーケットのブランドがあります。このブランドもイオンの傘下だったのか、と感じるものもあるのではないでしょうか。

 

身近にあるイオングループ

イオングループ

https://www.aeon.info/ir/individual/everyday/

 

イオンのスーパーマーケット事業は、地域に密着したスーパーマーケット、コンビニエンスストア、ディスカウントストア、小型店などがあり、食品を中心に、生活必需品の提供を行っています。

日本全国に食品スーパー約2,000店舗、コンビニエンスストア約2,000店舗、ディスカウントストア約500店舗、小型店約800店舗を展開しています。

 

イオンで海外展開しているブランド

イオンで海外展開されているブランドは下記のイオン、イオンビッグ、マックスバリューの3つです。

イオングループ_海外ブランド

https://www.aeon.info/ir/individual/everyday/

 

ダイエー買収の経緯

2013年8月、イオン株式会社は株式会社ダイエーを完全子会社化するというニュースは世間を驚かせました。

1957年神戸で創業されたダイエーは「よい品をどんどん安く、より豊かな社会を」を理念とし、1960年代から70年代に大きく成長しました。しかし、バブル崩壊後の1990年代に業績が悪化。以降厳しい経営状況が続きました。

下記は、ダイエーがイオンに買収されるまでの経緯です。

  • 1973 小売業売上高日本一を達成。ダイエー神話
  • 1990 バブル崩壊により土地価格が下落
  • 1997 赤字転落 258億円の経常赤字に転落する。
  • 2001 ダイエー創業者の中内氏が経営から退く
  • 2004 産業再生機構により経営再建へ
  • 2014 イオンによるTOB。上場廃止へ

 

意思決定のスピードアップ、機動的な資金投下、人材の最適配置等が不可欠となり、これらを実行するためにイオンによる完全子会社化を余儀なくされました。完全子会社により、庶民に長く愛された「ダイエー」ブランドは、2018年以降から消えてしまうことになりました。

 

トップバリュ

「エブリデー・ロープライス」を掲げ低価格プライベートブランド商品を提供する「トップバリュ」は、立ち上げ初期のころは「差別化がない」と批判されることもあり、2000年に既存ブランドを白紙に戻したという歴史があります。

その後新しく立ち上げて以降、2016年まで増益があまり見られませんでしたが、ここ数年売上高が急騰しています。

トップバリュ

https://www.ryutsuu.biz/commodity/k041841.html

 

イオンの海外戦略

イオン展開エリア

https://www.aeon.info/export/sites/default/common/images/environment/report/2016pdf/full/02.pdf

 

イオンの経営ビジョンには「アジア50億人の心を動かす企業へ」と掲げられているように、アジア進出への意気込みが感じられます。

イオンは、1985年に初めて香港で海外事業を開始して以降、アジアの事業拡大を重点戦略としています。現在、アジア10カ国で事業を展開しています。

中国・ASEAN地域におけるイオンの歩み

アジアの出店国

  • 香港
  • タイ
  • マレーシア
  • 中国
  • インドネシア
  • フィリピン
  • ベトナム
  • インド
  • カンボジア
  • ミャンマー
  • ラオス

※香港、マレーシア、タイでは現地証券取引所へ上場を果たしています。

 

イオンモールは、中国17店舗、ベトナム4店舗、カンボジア1店舗、インドネシア2店舗を構え、アジア地域では合計24モールあります。

2018年度のアニュアルレポートによると、今後イオンはこのエリアにおいて2025年までに70モール体制を目指し、海外事業の営業利益を350億円にするとのこと。その中にはミャンマー・ラオスへの出店計画も出ています。

中国・ASEAN地域におけるイオンのモール数

https://finance.logmi.jp/279002

 

2018年に発表された2017年度の連結業績レビューでは、中国は13モール中8モールが、ASEANは6モールが、黒字化を達成。赤字のモールも順調に売上が伸長しているため、全てのモールでの黒字化が期待されています。

 

アジア全体で売上が黒字化している理由の一つが、イオンの取っているドミナント(地域集中)戦略です。ドミナント戦略は、地域を特定し、その地域に集中的・優先的に経営資源を投入することによって支配的な地位の確立を狙う戦略です。

この戦略は、限られた経営資源で効率的にシェアを獲得できるように、幅広いエリアに手を出さないため、競合店との共生や一部のニッチ市場を狙う戦略とは対立する考え方です。

イオンブランド

https://finance.logmi.jp/197731

 

江蘇省蘇州では3モールがドミナント戦略によって集中的にイオンがオープンしており、ドミナントが進んだことで、テナント、地域の消費者に対するブランド力が向上し、ビジネスの展開ノウハウ、主脚力が高まったと報告されています。

月坪賃料のグラフでは、稼働5ヶ月後の1号店を100とした場合、2号店、3号店の月坪賃料を比較してみると、1号店よりも2号店の方が、2号店よりも3号店の方が効率が非常に高くなり、収益にプラスとなりました。

 

それでは次に、それぞれのエリアで特筆すべき成功要因についてご紹介します。

 

中国

中国進出は、2008年の「北京国際商城」の際、苦戦したというエピソードがあります。

総賃貸面積が狭く、テナントリーシングにも苦戦し、空床が発生するといった厳しい状況に遭遇しました。今となってはこの店舗は黒字に転化し、好調です。映画館を入れることに徹底的にこだわり、エンターテインメントを大きく打ち出したことが成功要因の一つとなったと言われています。

ASEAN全体

ASEANは、2014年から、ベトナム、インドネシア、カンボジアの展開を開始しました。2017年度に営業利益ベースで黒字化を達成し、全てのモールが好調です。

イオンモールの認知が向上し、モールの人気を左右すると言われるテナントリーシングのテナント募集説明会には、希望者が多数押し寄せます。出店したいと思われる、選ばれるモールへと成長しました。

また、イオンモールが出店したことを理由に住人が増え、購買層も拡大し、さらに売上がアップするという好循環となっています。所得水準が上がることで中間所得層が増大し、消費水準も購買力も上昇していることも背景です。

ベトナム

地域的には今後もまだまだ人口が増えるため、経済成長が見込めます。出店余地もあるベトナムは、アセアンの中でも最重要マーケットと位置づけられています。

同社はホーチミン市とハノイ市の人民委員会と事業推進に関する覚書を締結しており、ベトナム政府とも良好な関係を築いています。このことも大きなアドバンテージとなっているでしょう。2020年12月、ベトナムで成長著しいハイフォンに進出を遂げました。

イオンハイフォン

https://www.nna.jp/news/show/2130118

 

インドネシア

約2億6,000万人という膨大な人口を持つ巨大市場のインドネシア。2015年5月にオープンした1号店「イオンモールBSD CITY」は、大成功となりました。現在ジャカルタで2店舗出店してます。

都市中心部では商業施設が飽和状態のため郊外へのドーナツ現象も発生しています。このことから、2020年10月に、ジャカルタ中心部から車で約1時間のボゴール県に3店舗を出店しました。

イオン_インドネシア

カンボジア

イオン_カンボジア

https://e-asean.net/5480

 

カンボジアは過去20年間で、約7%の高い経済成長率を達成しており、その勢いは、アジア開発銀行に「アジアの新しいトラ」と称されるほどです。一人当たりの収入は、2000年の288ドルから、2016年の1307ドルに増加。カンボジアは中所得国と変化しています。

イオンの2016年のレポートでは、既存のカンボジア店舗での売上高は20.7%増加しており、他のASEAN諸国に比べて最も高い成長率ということが分かっています。

このような経済成長著しい状況が追い風となり、2017年の連結業績レビューではカンボジアは前年比114.3%を達成しており、好調です。

海外既存モール

 

https://www.ryutsuu.biz/abroad/m100712.html

海外既存モール2

現在イオンは、2022年にのオープンに向けて、プノンペン都中心地から南へ約8㎞に位置したエリアに、東南アジア最大級の都市開発プロジェクト「ING CITY」を着工しています。将来的にはレジデンス・アパートメントやインターナショナルスクールなどを併設し、人口増加対して期待ができる地域に育てていくようです。

 

最後に

2020年に始まった新型コロナウイルスの影響により、現在アジア地域のイオンモールの店舗は閉鎖しているところもあり、一時的に売上が落ち込んでいます。

しかし、今後ASEAN諸国の人口とGDPが右肩上がりなのは明らかです。この危機を乗り越えてアジア諸国のショッピングモールで覇者となる日が期待されています。

 

<参考>

https://www.aeonfinancial.co.jp/corp/overseas/

https://news.yahoo.co.jp/byline/kumimatsushita/20180422-00084269/

https://www.data-max.co.jp/article/32372

https://www.wwdjapan.com/articles/849285

https://www.motleyfool.co.jp/archives/4435

https://www.ryutsuu.biz/abroad/l100832.html

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57868760Z00C20A4DTA000/

https://kigyolog.com/company.php?id=770

https://www.ryutsuu.biz/accounts/m010922.html

https://fundbook.co.jp/supermarket-ma/

https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ24HHY_U4A920C1000000/

https://the-shashi.com/tse/8263/

https://www.digima-news.com/20190228_44005

https://news.yahoo.co.jp/byline/kumimatsushita/20190412-00121982/

http://business-partners.asia/cambodia/nikkei-20170504-aeon/

https://bizhint.jp/keyword/225657

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