ベトナムのマサングループ(Masan Group)とは?

ベトナムは東南アジアの中でも親日国として知られ、経済成長が著しいことから日本企業の海外進出先として注目されています。その証拠に株式会社国際協力銀行が2023年に発表した「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」において、ベトナムは日本企業が進出したい国ランキングで2位を獲得しました。

そこでベトナムへの進出を検討している経営者に向けて、同地域で大きな影響力を持つマサングループ(Masan Group)について徹底解説します。

マサングループ(Masan Group)とは

出典:Masan Group

マサングループはベトナムを拠点に小売や消費者向け製品などを展開しており、2023年の売上高は78兆5,169億ドン(約4,553億円)でした。※1ドン=0.0058円換算

マサングループの概要は以下のとおりです。

会社名Masan Group Corporation
本社ベトナム
設立1996年
創業者グエン・ダン・クアン氏
売上高78兆5,169億ドン(2023年)
従業員数35,878人(2023年)

ここではマサングループの歴史や事業内容、日本企業との協業事例について紹介します。

歴史

マサングループは、創業者のグエン・ダン・クアン氏により1996年に前身会社が設立されました。最初は食品や消費財を販売しており、特に東ヨーロッパでソースやインスタントラーメンなどが人気を博していました。

2000年までにはベトナム市場に注力するようになり、2002年にはソースブランドのCHIN-SU(チンスー)を立ち上げています。

2010年には金属のタングステンが採れる鉱山として世界最大級のヌイパオ鉱山を取得し、2011年には飲料部門に参入しました。2014年にヌイパオ鉱山の操業を開始し、2015年にはビール事業にも参入します。

さらに2021年にはMVNO分野の新興企業であるMobicast Joint Stock Companyを買収し、通信分野にも参入しています。※MVNOとは、大手キャリアから回線を借りて、格安SIMを提供している通信事業者です。

事業内容

マサングループの主要事業と各売上が全体に占める割合は以下のとおりです。

参考:Masan Group「INVESTOR RELATIONS

ここでは、さらにマサングループの主要事業を担う関連企業について紹介します。

WinCommerce:小売

WinCommerceは小売事業として、スーパーマーケットのWinMartと、多様な形態の店舗WinMart+の2つのブランドを運営している企業です。ベトナム全土にWinMartが132店舗、WinMart+が3,501店舗を展開しており、ベトナムの消費者の生活を支えています。現在では、ベトナム最大の小売プラットフォームに成長しています。

Masan Consumer Corporation:食品・飲料

Masan Consumer Corporationは、消費者向け製品事業の食品や飲料事業を担う企業です。具体的には魚醤・醤油・チリソースといった調味料、インスタント食品、シリアル食品、日用品、コーヒーやビールといった飲料などを開発・販売しています。

同社は「1億人のベトナムの消費者の物質的および精神的な生活を向上させる」を使命に掲げ、様々な製品を提供してきました。そして現在では、98%の世帯が少なくとも1つの製品を所有するほど、ベトナムの消費者の生活に浸透しています。

Phuc Long Heritage Corporation:紅茶・コーヒー

Phuc Long Heritage Corporationは、ベトナム大手の紅茶・コーヒーチェーンを運営している企業です。ベトナム全土に156店舗を展開しています。

Masan High-Tech Materials Corporation:ハイテク素材

Masan High-Tech Materials Corporationは、2010年に取得したヌイパオ鉱山から採れるタングステンにより、タングステン材料を提供する世界的な企業です。また、同社は蛍石やビスマスの重要な生産者でもあります。

2022年には、タングステンを利用した急速充電のバッテリーシステムのパイオニアであるイギリスのNyobolt Limitedに投資し、持続可能なエネルギーソリューションの開発を支援しています。

Masan MEATLife Corporation:食肉加工

Masan MEATLife Corporationは2011年に設立し、2018年にベトナム初の冷凍肉製品である「MEATDeli」の販売に成功した企業です。同社は、1億人のベトナムの消費者に新鮮で美味しくて、栄養価の高い肉を手頃な価格で届けることを目的に事業を拡大しています。

Techcombank:金融

Vietnam Technological And Commercial Joint Stock Bank(Techcombank)はベトナム最大の金融機関の1つです。そのTechcombankに対してマサングループは、2023年12月末時点で株式の14.39%を出資しています。

Techcombankはベトナムの消費者や民間企業の新たな金融ニーズに応えるために、個人向けローンや当座預金、国際送金、モバイルバンキングなどの多様な金融商品やサービスを提供しています。

日本企業との協業事例

マサングループと提携し、ベトナムへの進出を果たしたい経営者もいらっしゃるでしょう。そこで、ハウス食品株式会社と三菱マテリアル株式会社の事例を紹介します。

ハウス食品株式会社

出典:House Foods Vietnam

ハウス食品株式会社は2009年に、ベトナムへの進出の足掛かりとして、マサングループのMasan Consumer Corporationの株式を約2%取得しました。2012年には、ハウス食品株式会社が100%出資のHouse Foods Vietnam(ハウスフーズベトナム)を現地に設立し、本格的にベトナム進出を果たしています。

参考:日本経済新聞「ハウス、ベトナムに工場建設 現法設立、来春稼働

三菱マテリアル株式会社

三菱マテリアル株式会社は、金属事業・銅加工事業・電子材料事業などを展開する企業です。同社はMasan High-Tech Materials Corporationに対して、株式の10%を出資しています。

出資によりマサングループとの長期的な戦略提携関係を構築し、タングステンリサイクル事業の立ち上げ、高品質タングステン粉末製造の分野での協業を検討しています。

参考:三菱マテリアル株式会社「ベトナム Masan High-Tech Materials Corporation への出資について

マサングループの中期経営戦略

マサングループのミッションは、「To be the pride of Vietnam by winning the love of consumers(消費者から愛され、ベトナムの誇りとなる)」です。ミッションを達成するために、中期経営戦略では以下の3つを柱に達成すべき目標を設定しています。各柱の目標の一例を紹介します。

  • 持続可能な成長に向けたイノベーションの推進

2025年までに「健康に良い」とされる製品を最低5品目導入する。

  • 環境と地域社会への配慮

2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする。

2025年までに水のリサイクルにより、年間水使用量を生産量あたり5~10%削減する。

2025年までに廃棄物のリサイクル率を50%に引き上げる。

  • 従業員と顧客の心をつかむ

従業員満足度を70%以上に維持する。

顧客満足度を90%以上に維持する。

ベトナムに進出するならマサングループに注目しよう

ベトナムにおいてマサングループは、小売や食品業界に大きな影響力を持っています。同分野でのベトナム進出において、重要なパートナーになるかも知れません。ベトナムへの進出を検討しているのであれば、マサングループの動向にも注目しましょう。


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