2023年、ベトナムは5.05%のGDP成長率を達成しました。高い水準で成長を続けているベトナムは、2030年に世界トップ11の市場になると予想されています。
本記事ではベトナムへの進出を検討している経営者に向けて、同地域で影響力を持つビングループ(Vingroup)の概要や歴史、中期経営戦略を紹介します。
参考:VietBiz「2030年にベトナムが消費市場でイギリス・フランスを超える可能性:世界11位の消費市場へ」
ビングループ(Vingroup)とは
ビングループは不動産事業などを展開するベトナム最大級のコングロマリットです。ビングループの概要は以下のとおりです。
会社名 | Vingroup Joint Stock Company |
本社 | ベトナム |
設立 | 1993年 |
創業者 | ファム・ニャット・ブオン氏 |
売上高 | 101.8兆ドン(2022年) |
従業員数 | 51,400人 |
不動産事業のほかに小売、医療、電気自動車の製造・販売など多角的に事業を展開しており、2022年の売上高は101.8兆ドン(約5,700億円)でした。※1ドン=0.0056円換算
ここでは、ビングループの歴史や事業内容、日本企業との協業事例について紹介します。
歴史
ビングループは、1993年にベトナム人のファム・ニャット・ブオン氏が仲間とともに、ウクライナでTechnocom(現Vingroup Joint Stock Company)を設立したのが始まりです。設立当初、即席麺を製造・販売したことで大成功を収めました。
そして、2000年にブオン氏がベトナムに帰国し、2002年には不動産開発の関連企業であるVincom JSCを設立しました。その後は不動産事業や観光施設・娯楽施設の開発運営で成功します。
2013年になるとブオン氏はVinschoolを設立し、教育分野にも進出します。2015年にはベトナム初の野生動物のサファリパークを営業開始しました。さらに、2017年には自動車事業のVinFastを設立し、自動車や電動バイクの分野に進出します。
事業内容
ビングループが「どの事業」で、「どの程度の業績を収めているのか」を知りたい方もいるでしょう。そこで、ビングループの事業別売上高の構成割合を紹介します。
参考:Vingroup Company「Investor Relations」
グラフからビングループの主要事業は、不動産や製造、リゾート開発です。これらの主要事業を担う関連企業を紹介します。
Vinhomes:不動産
出典:Vinhomes
Vinhomesは2008年に設立した不動産開発・管理会社で、アパートやヴィラの管理・運営も行っています。※ヴィラとは一戸建てタイプの宿泊施設のこと。
2018年には、ベトナムで最も高いビルであるランドマーク81(高さ461メートル)をビンホームズ・セントラル・パークにオープンさせました。そして、2023年2月時点でVinhomesは28のプロジェクトを進行中です。
このように事業を拡大するVinhomesは、117,000戸以上のアパートやヴィラを所有し、8つの地域で約425,000人の居住者にサービスを提供しています。
Vinpearl:リゾート開発
ビングループのホテル業・娯楽施設業を担っている関連企業はVinpearlです。
Vinpearlは2003年に設立した企業で、ベトナムにおけるリゾート開発の先駆的な役割を果たしてきました。現在では31の高級ホテル・リゾート施設・ゴルフコースを所有しており、人気観光地に15,400の客室を管理しています。
VinFast:電気自動車
近年、ビングループが注力している事業は電気自動車です。
電気自動車事業は、2017年に設立したVinFastが担っています。同社は、世界的な電気自動車の普及の推進役となることをビジョンに掲げています。
ベトナムのハイフォン市に最先端の自動車製造施設を有しており、最大90%の自動化を実現しているのが特徴です。2023年には、アメリカで電気自動車「VF 9モデル」の販売を開始しました。
またVinFastは、ベトナムにおいて電動スクーターでトップシェアを誇っています。VinFastの電動スクーターはバッテリー技術の向上により、長距離走行が可能になったことで、従来のバイクユーザーから選ばれるようになったためです。
日本企業との協業事例3選
ベトナム進出のために、影響力の大きなビングループと提携している日本企業は多くあります。今回はそのような企業の中から、3つの事例を紹介します。
三菱商事株式会社・野村不動産株式会社:スマートシティー開発
2020年、三菱商事株式会社と野村不動産株式会社は、ビングループがホーチミン市で実施するスマートシティー開発に参加を表明しました。
両社はVinhomesと協業し、21棟のアパートを建設する予定で、投資額は約1,000億円となる見通しです。
ホーチミン市には、ビンホームズ・セントラル・パークやランドマーク81など、ビングループの代表的な施設があります。
参考:JETRO「ホーチミン市のスマートシティー開発、日系がビングループと共同事業」
ウェルコンサル株式会社:高齢者向け介護サービス
ウェルコンサル株式会社は、関西を中心に介護事業を展開している企業です。
そのウェルコンサル株式会社はビングループと提携し、ベトナムでの高齢者向け介護サービスの提供に乗り出しました。
現在日本では、介護業界の人材不足が深刻化しており、海外の人材を積極的に雇用する動きが広がっています。
ウェルコンサル株式会社でも、約150人のベトナム国籍の介護人材を雇用しており、そのような人材が帰国した際に現地で働ける場所を作ることを目的としています。
参考:アジア経済ニュース「介護ウェル、ビンGと提携」
ルネサス エレクトロニクス株式会社:電気自動車向け半導体
ルネサス エレクトロニクス株式会社は、自動車・産業・インフラ・IoT分野の企業にマイコンや半導体を提供するグローバル企業です。※マイコンとは、電子機器を制御するための部品のこと。
同社は2022年に、電気自動車事業に注力するビングループと提携し、電気自動車の開発や半導体の提供で協業を拡大することを発表しています。
参考:ルネサス エレクトロニクス株式会社「ビンファストとルネサス、自動車開発の包括的な戦略パートナとして協業を拡大」
ビングループの中期経営戦略
ビングループのビジョンは、「Vingroup aims to develop into a leading Technology – Industry – Services group in the region.(ビングループはテクノロジー、産業、サービスにおいてトップクラスの企業に成長すること。)」です。そして、ビジョンを実現するために、中期経営戦略の柱として5つの要素を重視しています。
- エンパワーメント
- 標準化
- 簡素化
- 自動化
- 最適化
特に、次世代のリーダーやマネジャーの育成の重要性から「エンパワーメント」をスローガンに、従業員の育成に取り組んでいます。※エンパワーメントとは、自信を与えることや力をつけることを指し、ビジネス用語では「権利委譲」や「能力開花」の意味です。
成長が予想されるベトナムへの進出を検討しよう
ベトナムは今後、急激に成長すると見られている市場です。日本からも距離が近いため、多くの業種で魅力のある市場といえるでしょう。同地域へ進出をするなら、ビングループとの提携も一つの方法です。本記事で紹介した協業事例を参考に、ベトナムへの進出を検討してみましょう。