いまさら聞けないメルカリの人気の理由。メルカリの始め方からビジネスモデルと成長モデル、米国展開の海外構想まで

今や国内でその名を知らない人はいない仮想フリーマーケットアプリの「メルカリ」は、2013年に創業されて以降、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長しています。

2020年6月にはCBO(Chief Business Officer)として、FacebookやGoogleで要職を務めたラーゲリン氏を迎え、さらなる急成長ぶりが話題になっています。メルカリは2013年7月にサービスを開始して以降、「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」をミッションとし、「捨てる」をなくすために個人間で簡単かつ安全に売買できるフリマアプリ「メルカリ」を展開してきました。

現在、日本国内の利用者数は月間1,350万人を超えています。

2020年は、新型コロナウイルス危機で人々が家で過ごす時間が増え、行動を制限されるなどの生活様式の変化は、企業の勝ち組と負け組を分けました。

メルカリは、東証マザーズ指数の構成銘柄で最大の比重を占める、指数上昇への寄与率は20%に上るほど業績を上げました。

ここでは、メルカリの人気の理由や、アメリカでの海外戦略についてご紹介します。

取引推移と売上推移

メルカリの累計取引件数は2019年9月時点で5億件と、創業の2013年からから急激な伸びを示してきました。現在は多くの人が利用していることから、その伸びは緩やかになっています。日本国内の利用者数は月間1,350万人と言われています。

メルカリ累積取引数

https://about.mercari.com/press/news/articles/mercari_500million/

アプリのダウンロード数が2000万を突破するまで、500万ダウンロード達成以降に急速にユーザーが増えていることが分かります。

  • 2013年7月 サービス開始
  • 1年2ヶ月後の2014年9月:500万
  • 5ヶ月後の2015年2月:1000万
  • 3ケ月後の2015年5月:1500万
  • 5ヶ月後の2015年10月:2000万

2020年2月の決算で、2019年10~12月期の売上高が184億円と、前年同期比で39%増加したことを発表しました。(ただし、メルペイへの投資によって営業損益は68億円と赤字幅が拡大しました。)

メルカリ売上

https://graph-stock.com/graph/mercari-revenue-2020-2q/

メルカリ人気の理由

それでは、なぜメルカリはこれほどまでに人気を博したのでしょうか。

メルカリがHPで公表している「メルカリを使う理由ランキング」で1位だった理由は「不要だったものが売れる」でした。

メルカリ使う理由

https://about.mercari.com/press/news/articles/mercari_500million/

その他、メルカリが支持される要因には下記が挙げられます。

  • スマートフォン1つで売買できる手軽さ
  • 売れる楽しさ、掘り出し物を探して買う楽しさ
  • エスクロー決済システムで支払いトラブルを回避できる
  • 日本郵便、ヤマト運輸と連携し、匿名配送が可能
  • 個人情報を保護への配慮が徹底している
  • 若者の心をとらえた

※エスクロー決済システム

物品などの売買において、信頼のおける「中立的な第三者」が契約当事者の間に入って代金決済等取引の安全性確保を行うこと

日本になかなか定着しそうになかったバーチャルでのフリーマーケットが定着した要因に、「若者の心をとらえた」ことは大きいでしょう。2017年8月、楽天リサーチが発表した「中古品の売買に関する調査」によると、中古品の購入に対して「抵抗がない」と回答したのは全体の31.9%、「抵抗がある」と回答したのは46.3%でした。

年代別内訳を見ると、20代の41.3%が「抵抗がない」と回答しています。以降年代が上がるにつれて徐々に割合が低下しました。60代の26.3%が最も低い結果になり、若い世代ほど中古品の売買に抵抗がないことが分かります。

ニュースリリースによると、2016年12月時点でメルカリには1日に100万品以上の新規出品がありましたが、そのうち50%以上の取引が24時間以内に成立しています。このような数字からも、スマホに慣れ親しむ若い世代にとって圧倒的に手軽であることも人気の秘訣だったのでしょう。

中古市場に抵抗がある人が多いということは、今後も市場拡大の可能性があるということです。メルカリはこの伸びしろにビジネスチャンスを感じているようです。

メルカリとヤフオクの違い

もともと日本には、20年近く最大のフリーマーケットサイトであり続けたヤフオクが存在しています。

今までの常識では、メルカリのような新参者が参入して、ある程度大きくなったら、ヤフオクのようなガリバー企業がメルカリと同じサービスを始めることで瞬殺すること(経済用語で「同質化」と呼ばれます)も可能です。

しかし、メルカリはヤフオクと共存しながら成長しているのは興味深い事実です。ヤフオクと住み分けができている要因は主に下記の2つが挙げられます。

メルカリヤフオク

https://ecnomikata.com/ecnews/25672/

個人情報を開示しなくてもよい

メルカリの場合はヤフオクと違って、相手に個人情報を知られないまま取引を完了できるという特徴があります。このことが、ターゲットユーザーである女性に特に刺さったようです。

メルカリはスマートフォン向け、ヤフオクはPC向け

メルカリはスマホ、ヤフオクはパソコン向きと言われています。メルカリは、「とにかく出品が簡単」と言われており、簡素でシンプルな仕様がスマホにマッチしました。

このように、メルカリはヤフオクとは違う市場をターゲットにしているため、新規参入でもヤフオクとの競争に生き残れたのでしょう。

メルカリの充実のカスタマーサポート体制(CS)

また、メルカリが特に評価を受けているのは、サポート体制が整っているということです。

メルカリは社員の半数以上がカスタマーサポートに充てられているほど、サポートに力をいれています。小泉文明社長は「2013年12月以来のメルカリの成長を支えてきたのはCSです。

CSの行動がファンを作り、会社の売上に貢献してきました。」と述べています。CSが大勢社内にいることで、ユーザーの意見をすぐにエンジニアに届けることができ、的確なサービス改善を行うことが可能です。

自由度の高さゆえに生じる様々なユーザー間のトラブルへの対応もスピーディーに対応できるのはメルカリならではの強みでしょう。

メルカリの後を追うフリマアプリは続々と出てきていますが、上位3社の国内ダウンロード数は圧倒的にメルカリがシェアを持っています。

満足度ランキング

https://about.mercari.com/press/news/articles/mercari_500million/

  • メルカリ:5000万件(2017年6月30日時点)
  • フリル:850万件(2017年6月1日時点)
  • ラクマ:400万件(2016年11月24日時点)

フリルを運営するFablicは、2016年、ラクマを運営する楽天グループの傘下に入っています。しかし、ダウンロード数を合計してもメルカリの4分の1に留まる状態になっています。過去には「いずれメルカリに並ぶ」と期待されたアプリもありましたが、結局はメルカリの強さに太刀打ちできずに消えていったのです。

山田社長は「高い満足感を提供し、『10%の手数料を払っても使いたいアプリ』を目指し、『リサイクルショップよりメルカリで売る方が良い』と思えるサービスにしたかった」と述べています。

メルカリの圧倒的な人気はこの言葉通りに実現し、ユーザーにとってメルカリは、手数料を払ってでも使いたいサービスへ成長していったということでしょう。

海外戦略

次に、メルカリの海外戦略を見てみましょう。

メルカリUSA

https://mercan.mercari.com/articles/22539/

日本で2013年7月にサービスを開始し、大人気の地位を築き上げたメルカリは、その後2014年9月にアメリカでサービスを開始しました。実はメルカリの海外戦略は日本よりも海外に比重を置いています。

2014年にアメリカ進出の戦略の際、「1:9でアメリカに焦点を向ける」という海外施策を打ち出しました。アメリカ市場に注力し続けた結果、2017年6月時点、アメリカでのアプリダウンロード数は2500万件を超えました。

メルカリ海外展開経緯

https://www.businessinsider.jp/post-169655

2017年からアメリカのCEOを務めるラーゲリン氏は、日本市場とアメリカ市場の相違点について下記のように挙げています。それぞれに対して取られた解決策についてもご紹介します。

アメリカでは日本の宅配便のように配送が充実してない

アメリカでは日本の宅配便のように配送が充実してない。コンビニ発送もできないため、配送をいかに簡単にできるようにするかが大きな課題でした。
この課題を解決するために、2018年、面倒な梱包を代行してくれるサービスMercari Pack and Shipをリリースしました。

US版メルカリでは、FedExと米国郵便公社(USPS)の2配送業者と提携していましたが、今回新たにUPSと連携し、匿名配送に加え、The UPS Storeの専門スタッフによる梱包・配送の代行サービスを開始しました。

専門スタッフが梱包を代行することにより、通常ではダンボールには入らない梱包技術が必要な食器、楽器、車の部品など大きな荷物だけでなくれ物を安心して配送することができるようになりました。

オペレーション

https://ecnomikata.com/ecnews/20829/

日本ではモバイルファーストだが米国ではPCファースト

日本のメルカリは常にモバイルファーストでやってきたが、米国ではPCからWebを利用する事例も多く、Webサイトの機能を強化すればするほど成果が出ています。
さまざまな施策を2年にわたって積み重ね、ブランドマーケティングにも積極敵に投資してきました。その結果、2020年の2月、認知度が1.8倍に高まりました

米国には競合が多い

米国にはebay(日本でいうヤフオクにあたる)などの大手マーケットプレイスの競合が多いです。
アメリカにも「海外版メルカリ」のような類似サービスがありますが、モバイルに突出したCtoC向けサービスは存在しませんでした。そのため、メルカリが入り込む隙間は十分存在していたため、積極的にマーケティングを進め、認知度向上を実現してきました。

なぜメルカリはアメリカマーケットを狙ったのか

日本国内でメインターゲットを若い女性、主にファッションに強いサービスが海外展開する場合、まずは台湾や韓国で試験的に開始するのが一般的です。

例えば、ラクマは2016年3月から、台湾での提供を開始しています。メルカリはなぜ最初からアメリカを目指したのでしょうか。まずはUSに注力する理由として、メルカリは下記のように言及しています。

  • メルカリでは他のオークションサービスや中古品アプリと違って、注力する部分が全く異なっている
  • メルカリのビジネスには決済と物流という2つの要素が必要で、アジアに乗り出すにはこの2つの要素が整っていないため、ハードルが高い
  • アジアは、韓国や台湾など、人口が少ない国が多くマーケットとして小さい
  • eBayなどのオークションが成り立っているアメリカの方が、中古や二次流通のマーケットが大きく、決済や物流も基盤がある
  • 米国での成功は「グローバルなブランドとしての認知」につながるため、まずアメリカ市場を狙った

アジア市場とアメリカ市場の違いを的確に見出し、逆転の発想を狙った戦略と言えるでしょう。

世界100か国以上と取引できるグローバルサービス

メルカリは、2021年、商品を世界100か国以上に売ることができるプラットフォームサービスを開始しました。国内のメルカリで出品した後、一定期間売れなかった商品を、tenso株式会社の展開する「Buyee」を通して海外に出品することができます。

そのため、日本ではなかなか購入されなかった人気のない商品も、海外で販売できるチャンスが広がります。

Buyeeは、メルカリを利用できない海外在住の顧客から依頼を受け、メルカリに出品された商品を代理で購入します。

Buyee

https://jp-news.mercari.com/2019/11/15/allovertheworld/

人気カテゴリー

Buyeeを使ったこのサービスで商品が売れた場合、Buyeeの国内倉庫に配送するのが一般のメルカリと違いますが、出品者は基本的には今までと同じ取引手順に沿えば取引が進みます。

buyeeとは

https://buyee.jp/?lang=ja

取引の流れと特徴

  • Buyee上で海外の顧客から注文が入ると、Buyeeが公式アカウントで「メルカリ」上の商品を代わりに購入
  • メルカリの出品者は通知を受けたら、Buyeeの国内拠点へ商品発送する
  • 商品が海外に到着後、Buyeeが検品・受取評価が完了した時点で売上金が付与される
  • 海外の購入者とのやりとりは発生することはなく、海外の顧客とのやりとりは全てBuyeeが代行
  • 海外配送等は全てBuyeeが行う
  • Buyeeによる受取評価が完了した後、海外での購入トラブルや返品等のクレームが発生してもBuyeeが対応する
  • 海外に輸出できないもの、新着商品などについては対応不可
  • 海外で売れても特別な手数料は発生することはなく、売れた商品につき、国内メルカリ同様、販売手数料は販売価格の10%
  • メルカリの使用と同じで、個人名を出さなくても良い

今更聞けないメルカリの使い方

それでは次に、メルカリをまだ使用したことのない方のために、メルカリでの出品の仕方をご紹介します。

ステップ

https://www.mercari.com/jp/guide/beginner/

メルカリガイド

https://www.mercari.com/jp/help_center/article/62/

売りたいとき

①商品写真を登録する

  • 商品画像は10枚まで登録可能
  • 傷があることを正直に伝えることも誠実な取引に必要

②商品の詳細を設定する

  • カテゴリーと商品の状態を設定

■ カテゴリー

  • バッグなのか洋服なのか、カテゴリーを選択
  • ブランド名がある商品であれば選択

■ 商品の状態

  • 購入時期、色、状態、使用回数、使用例などを記載

④配送について設定する

■ 配送料は出品者と購入者どちらが負担

■ 配送の方法

コンビニや郵便局で簡単に送れるメルカリ便などがあります

⑤販売価格を設定する

販売価格は、¥300~¥9,999,999の範囲で設定が可能です。

メルカリへ支払う手数料10%と送料が引かれることを考えて値付けしましょう。

⑥「出品する」を押して完了

■最後に

メルカリの人気の理由を知っていただけましたでしょうか。他のオークションサイトと違って、アジア市場でテストする前に最初からアメリカ市場を目指したことは業界においてセンセーショナルだったようです。

今後のメルカリのグローバル展開に目が離せません。

<参考>
https://kigyolog.com/company.php?id=4

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-12-30/QM4IP5DWRGG801

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51150?page=1

https://biz-journal.jp/2017/06/post_19316_3.html

https://japan.cnet.com/article/35130308/

https://mercan.mercari.com/articles/2018-09-21-110000/

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