
アロー・エレクトロニクス(以降は、「アロー」と言います。)は、半導体や電子部品の販売を行っているアメリカの企業です。85カ国で事業を展開する世界的な企業で、「フォーチュン・グローバル500(2024)」では133位に選出されました。本記事ではアローの会社概要や経営状況を解説します。
※フォーチュン・グローバル500とは、フォーチュン誌が毎年1回発表している世界中の企業を対象にした総収益ランキングのこと。
アローとはどんな会社

出典:アロー
アローは電子部品や半導体の販売に加えて、コンピューティング・ソリューションの産業用ユーザー、及び商業用ユーザーに高付加価値サービスを提供している企業です。この章では同社の会社概要や歴史、経営理念を紹介します。
会社概要
アローの会社概要は以下のとおりです。
会社名 | Arrow Electronics, Inc. |
本社 | アメリカ |
創業 | 1935年 |
設立 | 1946年 |
拠点 | 233拠点 |
進出地域 | 85カ国 |
従業員数 | 22,000人 |
売上高 | 331億ドル(2023年度) |
歴史
アローの歴史は、1935年にニューヨークのマンハッタンの電気街「ラジオ・ロウ」で、モーリス・ゴールドバーグ氏が中古ラジオやラジオ部品を扱う小売店「アロー・ラジオ」を開業したことが始まりです。そして、「アロー・ラジオ」は1946年にアロー・エレクトロニクスとして法人化されました。
1968年に、ハーバード・ビジネス・スクールを卒業したばかりの3人の若手起業家が民間投資家グループを率いて、アローの経営権を取得。3人は分散した電子部品流通業界をみて、統合による成長の可能性を見いだしていました。
1970年代には、半導体メーカーとのフランチャイズ契約を獲得し、アメリカの20以上の都市に営業所を開設。これにより、エレクトロニクス分野の販売代理店としてアメリカ2位の地位を確立しました。
そして、1979年にはクレーマー・エレクトロニクスを買収し、アメリカ西部の主要市場への進出に成功。1985年にはドイツ最大の電子部品販売会社を買収し、1988年にはアメリカ国内4位の電子機器販売業者を買収しました。1993年にはアジア太平洋地域の多数の国に展開していた販売代理店を買収したことで、アローは世界的な電子部品販売代理店に成長しました。
このようにして、アローは40社以上の企業を買収したことで、現在の地位を確立しています。
経営理念
アロー・エレクトロニクスは、パーパス(目的)に「私たちは人生の生活にプラスの変化をもたらすテクノロジー・ソリューションを実現できると信じています。」を掲げています。
そして、パーパスを達成するために重視しているのが次の3つの柱です。
- 人:すべての人が前向きに働ける職場にする
- 仕事:すべての人のキャリアを高める機会がある
- 報酬:すべての人のパフォーマンスに対する成果を向上する
アローの経営状況
アローの経営状況として、直近6年間の売上高と営業利益の推移を紹介します。

参考:アロー「Financial Results」
2023年度の売上高は331億ドル(4兆9,650億円)で、2022年度の371億ドル(5兆5,650億円)と比較して、40億ドル(6,000億円)減少しました。また、2023年度の営業利益は15億ドル(2,250億円)で、2022年度の21億ドル(3,150億円)と比較して、6億ドル(900億円)減少しました。※1ドル=150円換算
売上高と営業利益が減少した要因として、需要の低迷が挙げられます。これは、2022年度は記録的な売上高と営業利益を達成しましたが、2023年度は市場環境の変化によりサプライチェーン全体で過剰在庫が発生したためです。これにより、グローバルコンポーネンツ事業の需要が低迷して全体に悪影響を与えました。
また、同社の地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:アロー「Financial Results」
地域別売上高の構成割合から主要地域はアメリカ、中国と香港、ドイツであるとわかります。これらの主要地域で全体の61.5%を占めています。
アローの事業別売上高の推移
アローの経営状況について、事業別売上高に焦点を当てて解説します。同社の事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:アロー「Financial Results」
アローには、グローバルコンポーネンツ事業とグローバルECS事業があります。グラフからもわかるように、グローバルコンポーネンツ事業が同社の中核事業です。ここでは、2つの事業内容に加えて、売上高と営業利益の推移を紹介します。
グローバルコンポーネンツ
グローバルコンポーネンツ事業は、電子部品を取引先メーカーに販売する事業です。具体的に、半導体・コンデンサ・抵抗器・電源・リレー・スイッチなどを取り扱っています。
同事業の最大の強みは、複数のテクノロジーや製品を一つの窓口から発注できる点にあります。また、迅速な配達や定期配送にも対応しており、直接メーカーから入手するには難しいスケジュールや数量に対応できるのも強みです。
同事業の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。

参考:アロー「Financial Results」
2023年度の売上高は254億ドル(3兆8,100億円)で、2022年度の288億ドル(4兆3,200億円)と比較して、34億ドル(5,100億円)減少しました。2023年度の営業利益は15億ドル(2,250億円)で、2022年度の20億ドル(3,000億円)と比較して、5億ドル(750億円)減少しました。売上高と営業利益が減少した要因は米州やアジア太平洋地域での需要の低迷が挙げられます。各地域の経営状況は以下のとおりです。
- 米州:主に市場活動の低迷により売上高が減少
- アジア太平洋地域:ほとんどの業種での需要が低迷し、売上高が減少
- EMEA:はじめの3四半期はほとんどの主要業種が成長したものの、第4四半期は減少
※EMEAはヨーロッパ・中東・アフリカの略。
グローバルECS
グローバルECS事業は、企業向けのITソリューションやサービスを提供する事業です。具体的にはデータセンター、クラウド、セキュリティ、分析ソリューションなどが挙げられます。同事業の強みは、複数のITソリューションを包括的に提供できることです。また、ITソリューションをエンドユーザー向けにカスタマイズする支援も行っています。
同事業の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。

参考:アロー「Financial Results」
2023年度の売上高は77億ドル(1兆1,550億円)で、2022年度の83億ドル(1兆2,450億円)と比較して、6億ドル(900億円)減少しました。また、2023年度の営業利益は3億7,000万ドル(555億円)で、2022年度の4億1,000万ドル(615億円)と比較して、4,000万ドル(60億円)減少しました。売上高と営業利益が減少した要因は、米州におけるストレージ・セキュリティ・コンピューティングの需要の低迷が挙げられます。ただし、EMEAでの売上高は増加しました。
アローは戦略的買収で事業拡大を実現した企業
アローは、「フォーチュン・グローバル500」に選出されるほど、世界的に活躍している企業です。半導体・電子部品の販売においてはリーダー的な存在です。同社がこのような地位を確立できた大きな要因として、積極的な買収による事業拡大が挙げられます。特に、買収によって対象エリアを大きく広げることに成功しています。事業拡大や海外進出を検討している経営者様は、同社の展開の仕方を参考にしてみてはいかがでしょうか。