クアルコム(Qualcomm)とはどんな会社?会社概要や業績を解説 

クアルコムは、アメリカに本社を置く、モバイル通信技術や半導体を開発している企業です。長年、モバイル通信技術の発展に貢献している企業ですが、近年ではモバイル向けチップセットの「Snapdragon(スナップドラゴン)」のメーカーとしても知られています。本記事では、クアルコムの会社概要や経営状況、成長戦略を紹介します。 

クアルコムとはどんな会社 

出典:クアルコム 

クアルコムは、モバイル向けチップセットに強みを持つファブレス企業です。ファブレス企業とは、生産設備を持たない半導体メーカーを指します。ここでは、同社の会社概要や歴史、主要製品を紹介します。 

会社概要 

クアルコムの会社概要は以下のとおりです。 

​​会​社名 Qualcomm, Inc. 
本社 アメリカ 
設立 1985年 
拠点 150拠点以上 
進出地域 世界37カ国 
従業員数 49,000人(2024年9月29日時点) 
売上高 390億ドル(2024年度) 

歴史 

クアルコムは、1985年にアーウィン・M・ジェイコブス氏を中心とする7人によって設立されました。社名は「Quality Communications(質の高いコミュニケーション)」が由来です。 

同社は、CDMA(符号分割多元接続)方式の通信技術の開発に成功し、3Gのモバイル通信技術として採用されました。これにより、通信分野の発展に大きく貢献しました。さらに、4Gや5Gの分野においても高い技術力を発揮しています。現在は、次世代の通信技術である6Gの初期ビジョンを見据え、2030年以降の技術革新の実現を目指しています。 

また、同社は2009年にAMDからハンドヘルド事業の一部を買収し、その技術を基にSnapdragonを開発しました。そして、現在はファブレス半導体メーカーとして製品を展開しています。 

※CDMAとは、同一周波数帯域内で複数の端末を接続するための技術 

主な製品 

クアルコムはモバイル通信技術とモバイル向けチップセットに強みがあり、スマートフォン、自動車、IoTに向けて多様な製品を展開しています。 

例えば、主力製品の「Snapdragon」は、パソコンでいうところのCPUに当たるチップセットで、スマートフォンやタブレットの処理能力の向上に貢献しています。そして、近年では自動車やIoTにもSnapdragonが搭載されるようになりました。 

他にもBluetoothやWi-Fi通信といった無線通信に必要なRFFEモジュールや、高速通信を実現するための5G通信モジュールなどの製品を展開しています。 

クアルコムの経営状況 

クアルコムの経営状況として、直近6年間の売上高と税引前利益の推移を紹介します。 

参考:クアルコム「Historical Financial Results」 

2024年度の売上高は390億ドル(5兆8,500億円)で、2023年度の358億ドル(5兆3,700億円)と比較して、32億ドル(4,800億円)増加しました。また、2024年度の税引前利益は103億ドル(1兆5,450億円)で、2023年度の74億ドル(1兆1,100億円)と比較して、29億ドル(4,350億円)増加しました。売上高と営業利益が増加した要因は、QCT事業とQTL事業の好調が挙げられます。各事業の業績については後述します。※1ドル=150円換算 

また、同社の地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。 

参考:クアルコム「Historical Financial Results」 

グラフから、クアルコムの主要地域は中国・アメリカ・韓国で、この3カ国で全体の91%を占めています。 

クアルコムの事業別売上高の推移 

クアルコムの経営状況について、事業別売上高に焦点を当てて解説します。同社の事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。 

参考:クアルコム「Historical Financial Results」 

グラフより、クアルコムの主要事業はQCT事業とQTL事業で、その中でも中核を担っているのがQCT事業です。ここでは、主要2事業の内容に加えて、売上高と税引前利益の推移を紹介します。 

QCT 

QCT事業は、モバイルデバイス、自動車、家電製品、産業用デバイス、ネットワーク向けの半導体及びシステムソフトウェアの開発・販売を行う事業です。同事業の売上高と税引前利益は以下のとおりです。 

参考:クアルコム「Historical Financial Results」 

2024年度の売上高は332億ドル(4兆9,800億円)で、2023年度の304億ドル(4兆5,600億円)と比較して、28億ドル(4,200億円)増加しました。また、2024年度の税引前利益は95億ドル(1兆4,250億円)で、2023年度の79億ドル(1兆1,850億円)と比較して、16億ドル(2,400億円)増加しました。売上高と税引前利益が増加した要因は、一部の大手取引先からの受注が28億ドル(4,200億円)増加したことが挙げられます。 

QTL 

QTL事業は、同社の特許技術のライセンス供与を担う事業です。具体的には、3G・4G・5Gに関する通信技術の特許を他社に提供することで、ライセンス収入を得ています。同事業の売上高と税引前利益は以下のとおりです。 

参考:クアルコム「Historical Financial Results」 

2024年度の売上高は56億ドル(8,400億円)で、2023年度の53億ドル(7,950億円)と比較して、3億ドル(450億円)増加しました。また、2024年度の税引前利益は40億ドル(6,000億円)で、2023年度の36億ドル(5,400億円)と比較して、4億ドル(600億円)増加しました。売上高と税引前利益が増加した要因は、3G・4G・5Gに関するライセンス収入の増加が挙げられます。 

クアルコムの成長目標 

クアルコムは2024年の投資家向け説明会で、エッジデバイスにおける同社の独自のポジションによって、2030年までに9,000億ドル(135兆円)の市場が開拓可能であることを示しました。そして、2030年までに累計500億台のエッジデバイスの出荷を見込んでいます。 

※エッジデバイスとは、末端の端末を指します。具体的にはスマートフォンや自動車、家電製品などです。 

そして、クアルコムは今後のエッジデバイスにおいて、AIを搭載する「オンデバイスAI」の需要が増えると予想しています。そのため、同社はAI処理性能を高めた半導体製品に成長の可能性を見いだしています。 

なお、同説明会で発表されたQCT事業の5年間の財務目標において、2029年度までに達成すべき売上高の目標値は以下のとおりです。 

  • 自動車業界:80億ドル 
  • PC関連:40億ドル 
  • 産業製品:40億ドル 
  • XR(拡張現実):20億ドル 
  • IoT(PC・産業製品・XR含む):140億ドル 

クアルコムが注視する次のトレンドはオンデバイスAI 

クアルコムは長年、モバイル通信技術をリードしてきた企業です。近年ではモバイル向けの半導体チップセットの分野においても活躍しています。そのクアルコムが次のトレンドとして注視しているのは「オンデバイスAI」です。生成AIの新たなトレンドとして、今後は「オンデバイスAI」の動向にも注目してみてはいかがでしょうか。 

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