CMP研磨剤事業参入へ向けた市場調査・委託先選定

CMP研磨剤事業参入へ向けた市場調査・委託先選定

業界 : 半導体・電子材料業界
対象国・地域 : 米国・欧州

クライアント企業は非鉄金属メーカーであり、パワー半導体のSiC基板向けの研磨剤を開発しています。欧州展開には、現地環境規制に合わせた生産・販売網の構築が不可欠であり、採算性を伴わせるための販売数量の確保や委託先の探索に苦慮していました。プルーヴでは、環境規制による事業上の制約条件の確認から、販売戦略・生産網の構築までを支援し、中長期的な視点で、新規開発製品であるSiC基板向けの研磨剤の事業性検証を行いました。

課題

クライアント企業は非鉄金属メーカーであり、半導体産業に対しては研磨剤向けの結晶材を納入していました。これまでシリコン製の基板においては高いシェアを有していましたが、SiC基板やGaN基板の開発が進むことを背景に、まずはSiC基板向けの研磨剤材料を新規で開発しました。日本国内では、CMP研磨剤メーカー及び半導体装置メーカーと連携のうえ開発を進め、日本での販売先は見通しが立っていました。

しかしながら、欧州においては同研磨剤の取扱い及び廃棄に関し、法規制上の利用制限がかかっており、日本国内からの販売・出荷が困難な状況でした。サプライチェーンの構築が必要ですが、事業採算に見合った販売数量の確保の見通しが立たない状況でした。欧州パワー半導体メーカーのSiC基板向けの調達方針分析に加え、法規制及びサプライチェーン再構築に伴うコストを考慮した価格設定が不可欠であり、事業成立へ向けた多くの変数を特定しながら、投資判断を行う必要がありました。

半導体業界の実績が豊富であることに加え、欧州パワー半導体メーカーへのネットワークも豊富であったことから、短期間で必要不可欠な情報取得と分析が行えると判断いただき、プルーヴに支援を依頼されます。

支援内容

具体的な支援策は以下の通りです。

  1. CMP研磨剤を対象とした欧州環境規制の調査
  2. パワー半導体メーカーのCMP研磨剤における課題や意思決定要因の特定
  3. SiC基板向けの競合製品の特定
  4. 販売及び加工委託先の特定と条件交渉
  5. SiC向けCMP研磨剤の市場規模試算及びTAM/SAM/SOMの試算

欧州におけるCMP研磨剤市場を鳥瞰的に分析した上で、個別具体の営業及び製造網の確立へ向けては、幅広な企業リストから絞り込みを行い、複数社との交渉をもって適切な条件へ妥結するための交渉をサポートしました。
市場分析の際は、各物性別の研磨が用いられる工程等を事前に詳細に調査し、当事業の販売先として想定可能なSAM/SOMを分析しました。

今回のご支援のポイントは、中長期的な視点でパワー半導体の市場変化を推定し、根拠を伴った形式で事業性の検証を行った点です。CMP研磨剤はシリカ系・セリア系・アルミナ系・ダイヤモンド系に分類可能であり、各物性に応じて研磨対象が異なります。CMP研磨剤の市場規模や成長率については、文献調査から把握することができますが、結晶の物性ごとの見通し分析を行うためには、半導体工程や材料に対する深い理解が必要です。単にマクロな情報に頼るのではなく、個々の工程や技術を詳細に紐解きながら、根拠に基づく分析が求められる事例でした。

今回の支援は、半導体業界に関する豊富な知見及びネットワークを活用し、二次情報だけでは判断不能な情報収集及び分析を行えることを生かせた事例といえます。

結果

欧州の環境規制を正確に把握し、その範囲内で事業展開を図るための条件を確認する支援を行いました。これにより、クライアント企業は中長期的なSiC基板およびCMP研磨剤の市場見通しをもとに、具体的な生産・販売網の構築に向けた初期的な事業基盤を構築することができました。
また、二次情報に頼るだけでなく、パワー半導体の製造工程を具体的に分析することで、根拠に基づいた研磨剤の物性別見通しを導き出すことができました。

クライアント企業の技術者との対話が可能なレベルまで技術情報を学び、その情報に裏付けされた事業性分析を行えた点をご評価いただきました。

クライアント企業は、まずは生産委託先企業との技術連携を開始し、テスト品の試作を進めています。このテスト品を活用して、欧州のパワー半導体メーカーとの個別技術実証を計画中です。

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