
日本の屋内型複合レジャー施設「ラウンドワン」は、米国でも人気があり、出店数を順調に増やしています。実際に株式会社ラウンドワンの米国事業の売上高は、全体の37.4%を占めるまでに成長しました。なぜラウンドワンは米国でこれほど人気を集めているのでしょうか?本記事では、ラウンドワンの基本情報や米国事業の内容、米国で人気のワケを解説します。
ラウンドワンとは?

出典:ラウンドワン
ラウンドワンは様々なアクティビティを楽しめる屋内型複合レジャー施設です。日本では子どもから大人まで楽しめるとして人気があります。同施設で楽しめるアクティビティには以下のようなものがあります。
- ボウリング
- カラオケ
- クレーンゲーム
- メダルゲーム
- アーケードゲーム
- スポッチャ
※スポッチャとは、ローラースケートやダーツ、ビリヤード、バッティング、ゴルフ打ち放しなど、50種類以上の様々なスポーツやアミューズメントを楽しめるレジャー施設です。
ここでは運営会社の会社概要に加えて、ラウンドワンのビジネスモデルや歴史について解説します。
会社概要
ラウンドワンを運営しているのは株式会社ラウンドワンです。同社の会社概要は以下のとおりです。
社名 | 株式会社ラウンドワン |
本社 | 大阪府大阪市 |
設立 | 1980年 |
正社員数 | 2,108人(2024年3月31日時点) |
海外売上比率 | 38.4%(2024年度) |
店舗数 | 合計:156店舗(2024年7月時点) 日本:100店舗 米国:52店舗 中国:4店舗 |
売上高 | 1,592億円(2024年度) |
ビジネスモデル
ラウンドワンのビジネスモデルの特徴は、様々な娯楽施設を一体化した「屋内型複合レジャー施設」です。従来、ボウリングはボウリング場、クレーンゲームやアーケードゲームはゲームセンターといったように、それぞれの専門施設で楽しむのが一般的でした。
しかしラウンドワンは、大型施設に巨額の初期投資を行い、複数のアクティビティを一カ所に集約しました。その利便性を強みに、幅広い年齢層の集客を可能にし、安定した収益を生み出す仕組みを構築しています。
さらに、アニメや有名人とのコラボイベント、深夜営業によるナイトタイムエコノミーへの対応も人気を支えています。※ナイトタイムエコノミーとは、夜間帯の経済活動のことです。
歴史
株式会社ラウンドワンは、1980年に大阪府泉南市で設立されました。同年にローラースケート場をオープンし、1982年にはボウリング事業を開始しました。
1990年には、ボウリングとアミューズメントを融合させた「屋内型複合レジャー施設」という独自のビジネスモデルを確立。さらに1999年にはカラオケを導入し、2004年からはスポッチャ施設を設置した店舗の展開をスタートしました。
2010年には、米国カリフォルニア州に海外第1号店をオープン。2021年には、中国にも進出しました。現在は、日本国内に100店舗、米国に52店舗、中国に4店舗を展開しています。
ラウンドワンの事業別売上高の構成割合
株式会社ラウンドワンの事業は、「日本事業」と「米国事業」の2つです。両国における売上高の違いを把握するために、事業別売上高の構成割合を紹介します。

参考:株式会社ラウンドワン「有価証券報告書/四半期報告書」
日本事業の売上高に占める割合は61.6%で、依然として主要な収益源です。一方、米国事業も全体の37.4%を占めており、同社にとって米国が重要な市場であることがわかります。また、これらの数字は、同社の米国進出が順調に成果を上げていることを示しています。
米国事業の売上高の内訳
株式会社ラウンドワンの米国事業がどの部門で売上を確保しているかを確認するために、売上高の内訳を紹介します。

参考:株式会社ラウンドワン「有価証券報告書/四半期報告書」
グラフから、米国では「アミューズメント」の売上高が大きな割合を占めていることがわかります。一方、日本事業の売上高の内訳は以下のとおりです。

参考:株式会社ラウンドワン「有価証券報告書/四半期報告書」
日本でもアミューズメントが最大の収益源ではあるものの、米国と比較するとその依存度はやや低く、米国のほうがアミューズメントへの依存度が高いことがわかります。
ラウンドワンが米国で人気のワケ
ラウンドワンは屋内型複合レジャー施設として、多くのファンを獲得しています。特に米国では、アミューズメントを中心に人気があり、売上全体の74.1%を占めるまでに成長しています。その中でも人気を集めているのが「クレーンゲーム」です。ここでは、なぜラウンドワンが米国市場で成功を収めているのか、その背景を3つの視点から掘り下げて解説します。
衰退したショッピングモールに出店
ラウンドワンが米国で人気を集める理由の一つは、その出店戦略にあります。現在、米国ではアパレルの不振などによりショッピングモールの衰退が進み、かつて賑わっていた郊外のショッピングモールでも空きテナントが目立つようになっています。
ラウンドワンは、こうした空きスペースに注目し、若者向けの娯楽施設として出店。高い集客力を発揮することで、ショッピングモール全体の活性化に貢献しています。
その結果、有利な条件で賃料交渉ができるようになり、低コストでの出店が可能となっています。こうした相乗効果により、ラウンドワンは米国で順調に店舗を拡大しているのです。
参考:THE GOLD ONLINE「世界中のショッピングセンターが「明るい廃墟」と化した理由」
日本のキャラクター人気の上昇
ラウンドワンのアミューズメントが米国で成功している理由の一つは、日本のアニメやキャラクター人気の上昇です。店内には、日本のお菓子や玩具、アニメグッズなど、「ここでしか手に入らない景品」が数多く並び、現地の来店者の関心を集めています。中でも、こうした景品を狙えるクレーンゲームは特に人気が高く、アミューズメント部門の売上を大きく押し上げ、米国事業の成長を支えています。
参考:FASHIONSNAP「SPY×FAMILY、ヒロアカ、鬼滅の刃…日本のアニメがアメリカで爆発的な人気を集める理由」
複数のアクティビティを楽しめるという利便性
ラウンドワンの大きな特徴は、複数のアクティビティを一つの施設で楽しめる点です。この点は、米国事業においても大きな強みとなっています。米国では、従来の日本と同様にボウリングはボウリング場、ゲームはゲームセンターといったように、単一のアクティビティに特化した専門施設が主流です。
しかしラウンドワンでは、アミューズメントやカラオケ、ボウリング、スポッチャなど、多彩なアクティビティを一カ所で楽しめます。こうした利便性と独自性が、他の娯楽施設との差別化につながり、高い集客力を生み出しています。
ラウンドワンは米国進出の成功事例
株式会社ラウンドワンは、米国の衰退したショッピングモールに「屋内型複合レジャー施設」という新たな価値を提供し、大成功を収めています。そのような同社が次に注力しているのが、日本食を軸とした飲食店の海外展開です。今後5年間で、米国を中心に10都市に150店舗の出店を目指しています。
米国市場への進出を検討している経営者様は、ラウンドワンの海外展開のやり方を参考にしてみてはいかがでしょうか。