ウォルト・ディズニー・カンパニー(以下、ディズニー)は、アメリカに本社を置くエンターテインメント企業です。1923年に創業者のウォルト・ディズニーによって設立され、「ミッキー・マウス」などのアニメーションで大成功を収めました。
現在ではアニメーションや映画制作に加えて、テーマパーク・リゾート・ストリーミングサービスの運営など、幅広い事業を展開しています。本記事ではディズニーの会社概要や業績、今後の成長戦略について紹介します。
ディズニーは何の会社?
出典:ディズニー
ディズニーは世界中で親しまれているグローバル企業です。2019年にストリーミングサービス「Disney+(ディズニープラス)」を開始すると、わずか数年で会員数が1億人を突破し、2024年6月には1億5380万人に達しました。この大企業の成長を裏付ける、会社概要や歴史、企業理念を見ていきましょう。
会社概要
ディズニーの会社概要は以下のとおりです。
会社名 | The Walt Disney Company |
本社 | アメリカ |
設立 | 1923年 |
従業員数 | 225,000人(2023年9月30日時点) |
売上高 | 888億ドル(2023年) |
進出地域 | 190カ国 |
歴史
ディズニーの歴史は、1923年に創業者のウォルト・ディズニーとその兄のロイ・O・ディズニーが設立したアニメ制作スタジオ「ディズニー・ブラザーズ・カートゥーン・スタジオ」に始まります。ミッキー・マウスが登場する短編アニメ「蒸気船ウィリー」は1928年に公開され、大成功を収めました。1950年からは実写映画やテレビ番組制作を開始し、1955年にはアメリカのカリフォルニア州にディズニーで初めてのテーマパーク「ディズニーランド」をオープンしました。
その後、1993年にミラマックス・フィルムズ、1995年にキャピタル・シティーズABCを買収し、動画制作会社の買収によりメディア業界への影響力を強めます。2019年にはストリーミングサービス「Disney+」を開始し、エンターテイメント事業で更に影響力が拡大しました。
企業理念
ディズニーの企業理念は、「世界中の人々を楽しませ、好奇心を満たし、ひらめきと感動をお届けすること。」です。この理念で世界最高峰のエンターテインメント企業としての地位を確立し、クリエイティブな精神で革新的な技術を世界へ発信し続けています。
ディズニーの経営状況
ディズニーの経営状況として、直近6年間の売上高と純利益を紹介します。
参考:ディズニー「Investor Relations」
2023年の売上高は888億ドル(13兆3,200億円)で、2022年の827億ドル(12兆4,050億円)から61億ドル(9,150億円)増加しました。一方で、2023年の純利益は33億ドル(4,950億円)で、2022年の35億ドル(5,250億円)から2億ドル(300億円)減少しました。※1ドル=150円換算
新型コロナウィルスの影響が大きかった2020年には、純利益が24億ドル(3,600億円)の赤字となりましたが、その後は25億ドル(3,750億円)から35億ドル(5,250億円)の範囲で推移しています。2018年と2019年の純利益が100億ドル(1兆5,000億円)を超えていたことを考えると、近年は売上が増加しているものの、純利益が伸び悩んでいる状態です。
また、同社の地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。
参考:ディズニー「Investor Relations」
世界中に事業を展開しているディズニーですが、グラフから主要な地域は南北アメリカであると分かります。
ディズニーの事業別売上高の推移
ディズニーの経営状況を深掘りするために、この章では事業別売上高に焦点を当てて解説します。まず、事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。
参考:ディズニー「Investor Relations」
グラフから同社は1つの事業に頼るのではなく、3つの事業がそれぞれ売上高を確保していることが分かります。この章では、各事業の事業内容に加えて、売上高と営業利益の推移を紹介します。
エンターテインメント事業
エンターテインメント事業の主な事業内容は、コンテンツの制作や配信、テレビ局・ケーブルチャンネル・ストリーミングサービスの運営です。同事業の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:ディズニー「Investor Relations」
2023年の売上高は406億ドル(6兆900億円)で、2022年の395億ドル(5兆9,250億円)から11億ドル(1,650億円)増加しました。一方、2023年の営業利益は14億ドル(2,100億円)で、2022年の21億ドル(3,150億円)から7億ドル(1,050億円)減少しました。
直近3年間は売上高が増加しているのに対して、営業利益は減少を続けています。この大きな要因は、同事業でストリーミングサービスを担うDtoC部門の苦戦が挙げられます。DtoC部門の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。※DtoCとは、メーカーとエンドユーザーが直接取引するビジネスモデルのこと。
参考:ディズニー「Investor Relations」
DtoC部門の売上高は増加傾向にありますが、2023年の営業利益は24億ドル(3,600億円)の赤字です。このグラフから、同部門がエンターテインメント事業の営業利益を圧迫していると言えます。
エクスペリエンス事業
エクスペリエンス事業の事業内容は、テーマパークやリゾートの運営です。同事業の売上高と営業利益は以下のとおりです。
参考:ディズニー「Investor Relations」
2023年の売上高は325億ドル(4兆8,750億円)で、2022年の280億ドル(4兆2,000億円)から45億ドル(6,750億円)増加しました。2023年の営業利益は89億ドル(1兆3,350億円)で、2022年の72億ドル(1兆800億円)から17億ドル(2,550億円)増加しました。売上高と営業利益が増加した要因として、テーマパークの入場者数の増加及び一人当たりのチケット収入の増加が挙げられます。
スポーツ事業
スポーツ事業の事業内容は、スポーツに特化したテレビやストリーミングサービスのコンテンツの制作、配信です。同事業の売上高と営業利益は以下のとおりです。
参考:ディズニー「Investor Relations」
2023年の売上高は171億ドル(2兆5,650億円)で、2022年の172億ドル(2兆5,800億円)から1億ドル(150億円)減少しました。2023年の営業利益は24億ドル(3,600億円)で、2022年の27億ドル(4,050億円)から3億ドル(450億円)減少しました。売上高と営業利益が減少した要因として、加入者数の減少が挙げられます。
ディズニーの成長戦略
ディズニーは今後の成長戦略として、ストリーミングサービスの黒字化を掲げています。この目標達成のための施策として、買収したストリーミングサービスの「Hulu」と「Disney+」の統合が計画されています。Huluは2008年にアメリカでサービスを開始したストリーミングサービスで、2011年には日本でもサービスの提供が開始され、登録者数は280万人を超えています。 両プラットフォームを統合することで、多様な視聴者層の獲得し、ストリーミングサービス市場における競争力を高めようとしています。
ディズニーと提携する日本企業
ディズニーは、ミッキー・マウスのキャラクターをはじめ、世界的に高い人気と知名度を誇る巨大エンターテインメント企業です。同社が近年、最も注力している事業がストリーミングサービスの「Disney+」で、世界中に1億5380万人の会員を獲得していることが注目すべき点です。日本での活動を見てみると、日本テレビや講談社が「Disney+」と提携し、日本発のコンテンツを世界中に配信することで新たなファンの獲得につなげています。ストリーミングサービスを提供している経営者様は、事業展開の仕方として参考にしてみてはいかがでしょうか。