ロク(Roku, Inc.)は、ストリーミングサービスのプラットフォームを展開しているアメリカの企業です。同社は、ストリーミングコンテンツを視聴できる端末やスマートテレビを販売し、ストリーミングサービス上に広告を配信することで広告料を得ています。
同社のサービスの特長は、端末さえあれば無料チャンネルを楽しめる点です。加えて、Amazon Fire TVやGoogle Chromecastなど、他社のストリーミングサービスも同じプラットフォームで利用できることです。
これらの特長から人気を集めており、15カ国以上で8,000万人が利用しています。本記事ではロクの会社概要や業績、成長戦略について紹介します。
※スマートテレビとは、インターネットに接続することで様々な機能やコンテンツを楽しめるテレビのことです。
ロク(Roku, Inc)とはどんな会社?
出典:ロク
ロクは、Reinforz Insightの「2023年最新版:世界の動画配信サービス会社ランキング時価総額TOP29」において、世界4位を獲得した企業です。この章では同社の会社概要や歴史、企業理念を紹介します。
会社概要
ロクの会社概要は以下のとおりです。
会社名 | Roku, Inc. |
本社 | アメリカ |
設立 | 2002年 |
従業員数 | 3,150人 |
売上高 | 34億ドル(2023年) |
進出地域 | 15カ国以上 |
アクティブアカウント | 8,000万(2023年) |
年間総視聴時間 | 1,060億時間(2023年) |
※アクティブアカウントとは、ある期間において1回以上利用があったユーザーのことです。ロクのアクティブアカウントは、2022年から1,000万人増加して、2023年は8,000万人となっています。
歴史
創業者のアンソニー・ウッド氏は、インターネットがテレビを変える可能性を秘めていると信じていました。そして、そのためにはテレビ向けのOS(オペレーティングシステム)が必要と考え、世界初のテレビ用OSの開発に成功します。2008年に、最初のストリーミングプレイヤーの販売を開始し、それから6年以内に1,000万台以上のデバイスを販売しました。2014年にはスマートテレビ向けプラットフォームのRoku TV(ロクテレビ)が発表され、スマートテレビへの接続に対応しました。現在では、アメリカでNo.1のテレビストリーミングサービスのプラットフォームに成長しています。
製品・サービス内容
ロクはストリーミングサービスのプラットフォームを運営しつつ、ストリーミングサービスに関連したデバイスの製造・販売も行っています。デバイスの種類は以下のとおりです。
- テレビ
同社のストリーミングサービスのプラットフォームを内蔵したテレビです。
- ストリーミングプレイヤー
ストリーミングプレイヤーとテレビやモニターを接続することで、簡単に同社のストリーミングサービスを楽しめます。
- スマートホーム
カメラのモニタリングやカスタム照明など、スマートホーム化に役立つデバイスです。※スマートホームとは、ITやIoT技術を活用して便利で快適に生活ができる家のことです。例えば、スマホや音声で照明の明るさを調整したり、外出先からエアコンを操作したりできる家を指します。
- アクセサリー
アクセサリーとして、各種デバイスで使うリモコンの別売りを行っています。
- オーディオ
サウンドバーやサブウーファーなどのオーディオに関連するデバイスです。
ロクの経営状況
ロクの経営状況として、直近6年間の売上高・営業利益の推移を紹介します。
参考:ロク「Quarterly results」
2023年の売上高は34億ドル(5,100億円)で、2022年の31億ドル(4,650億円)から3億ドル(450億円)増加しました。しかし、2023年の営業利益は7億9,000万ドル(1,185億円)の赤字で、2022年の5億3,000万ドル(795億円)の赤字から2億6,000万ドル(390億円)悪化しました。※1ドル=150円換算
売上高が右肩上がりで増えている一方で、直近2年間の営業利益は赤字が拡大している状態です。営業利益が赤字の理由として、営業費用の増大が考えられます。そこで、同様に直近6年間の営業費用の推移を紹介します。
参考:ロク「Quarterly results」
このように、営業費用は右肩上がりに増加しており、直近2年間の赤字の大きな要因は営業費用の急増です。
ロクの事業別売上高の推移
ロクの経営状況を深掘りするために、この章では事業別売上高に焦点を当てて解説します。
まず、事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。
参考:ロク「Quarterly results」
構成割合から、同社の主要事業はプラットフォーム事業であることが分かります。この章では、さらに各事業の売上高と粗利益の推移を紹介します。
プラットフォーム事業
プラットフォーム事業は、デジタル広告の販売やストリーミングサービスの配信が主な事業内容です。プラットフォーム事業の売上高の推移は以下のとおりです。
参考:ロク「Quarterly results」
2023年の売上高は29億ドル(4,350億円)で、2022年の27億ドル(4,050億円)から2億ドル(300億円)増加しました。一方、2023年の営業利益は15億6,000万ドル(2,340億円)で、2022年とほぼ同水準でした。
売上高が増えた原因は、アクティブアカウント増によって、ストリーミングサービスからの収益が増えたためです。ただし、広告収益が減少したため、粗利益は同水準となりました。
デバイス事業
デバイス事業は、先に紹介した同社のデバイスを製造・販売する事業です。デバイス事業の売上高と粗利益の推移は以下のとおりです。
参考:ロク「Quarterly results」
2023年の売上高は4億9,000万ドル(735億円)で、近年の売上高は4億ドル(600億円)から5億ドル(750億円)で推移しています。一方、2023年の営業利益は4,000万ドル(60億円)の赤字です。2022年の9,000万ドル(135億円)の赤字から5,000万ドル(75億円)改善しました。売上高が増加した要因として、2023年3月に発売したテレビの好調が挙げられます。
ロクの成長戦略
ロクは2年連続で営業利益が赤字となり、苦戦が続いています。そこで、新たな成長戦略として、2024年9月に新しい広告製品「Ads Manager」をリリースしました。
Ads Managerの特徴は以下のとおりです。
- 効果を測定して広告の運用を最適化できる
- あらゆる規模のブランドが動画広告を購入できる
- Shopifyストアと統合することで、視聴者はテレビ上でシームレスな購入体験ができる
※Shopifyとは、簡単にECサイトを構築できるECプラットフォームです。
これにより、同社は収益性を向上させ、黒字化を目指すとのことです。
ロクの展開の仕方や広告サービスを参考にしよう
ロクは、テレビで視聴できるストリーミングサービスのプラットフォームを展開している企業です。アクティブアカウント数は増えているものの、直近2年間は営業費用がかさみ赤字に陥っています。そこで、同社は打開策として新たな広告製品「Ads Manager」をリリースして、収益性の向上を目指しています。配信サービスを提供している経営者様は、ロクの展開の仕方やAds Managerを参考にしてみてはいかがでしょうか?