パラマウント・グローバルは、アメリカに本社を置くメディア企業です。同社はReinforz Insightの「2023年最新版:世界の地上波放送会社ランキング時価総額TOP67」において、世界4位を獲得しています。メディア業界に対して影響力の大きい企業の1つと言えるでしょう。
しかし、2024年7月7日にスカイダンス・メディアからの買収提案を受け入れたことが明らかになり、今後の動向に注目が集まっています。本記事では、パラマウント・グローバルの会社概要や業績について紹介します。
パラマウント・グローバルとはどんな会社?
出典:パラマウント・グローバル
パラマウント・グローバルは、メディア・ストリーミング・エンターテインメントの事業を手掛けているメディア企業です。映画製作・配給会社の「パラマウント・ピクチャーズ」やケーブルネットワークの「CBS」、ストリーミングサービスの「Paramount+」などを運営しています。この章では、パラマウント・グローバルの会社概要や歴史、経営理念を紹介します。
会社概要
パラマウント・グローバルの会社概要は以下のとおりです。
会社名 | Paramount Global |
本社 | アメリカ |
設立 | 1986年 |
従業員数 | 23,137人(2022年12月31日) |
売上高 | 296億ドル(2023年) |
配信地域 | 180カ国以上 |
加入者数 | 43億人 |
歴史
パラマウント・グローバルの起源は、1912年にアドルフ・ズコール氏がニューヨークで映像制作会社「フェイマス・プレイヤーズ・フィルム・カンパニー」を設立し、長編ドラマを公開したことが始まりです。同氏は1914年に映像制作・配給会社「パラマウント・ピクチャーズ」を設立し、映画の配給を開始しました。 1916年にはハリウッドで最初の長編映画を製作し、その後も数多くのヒット作を生み出しました。1931年にケーブルネットワークであるCBS初のテレビ放送を開始し、1940年にはカラーテレビ放送を開始しました。2014年に「CBS All Access」としてストリーミングサービスを開始し、 2021年に「Paramount+」と改名した現在は、北米・中南米・北ヨーロッパ、オーストラリアなど世界中でサービスを提供しています。
経営理念
パラマウント・グローバルは、経営理念として以下の3つの価値観を重視しています。
- 楽観主義と決意
前途を切り開き、成功できるという前向きな信念を共有すること。
- 包括性と協調性
多様な声を受け入れ、慎重に行動し、協力して課題を乗り越えること。
- 敏捷性と適応性
起業家的思考を持ち、変化に強く、次の展開を予測して創造するために迅速に行動すること。
パラマウント・グローバルの経営状況
パラマウント・グローバルの経営状況として、直近6年間の売上高と営業利益を紹介します。
出典:パラマウント・グローバル「SEC Filings」
2023年の売上高は296億ドル(4兆4,400億円)で、2022年の301億ドル(4兆5,150億円)から5億ドル(750億円)減少しました。2023年の営業利益は4億ドル(600億円)の赤字で、2022年の23億ドル(3,450億円)から27億ドル(4,050億円)減少しました。営業利益が赤字に転落した主な要因は、2023年に23億ドル(3,450億円)の番組制作費を計上したためです。※1ドル=150円換算
また、地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。
出典:パラマウント・グローバル「SEC Filings」
同社のサービスは世界180カ国以上の43億人に向けて配信されていますが、構成割合から主要地域はアメリカであることが分かります。
パラマウント・グローバルの事業別売上高の推移
パラマウント・グローバルの経営状況を深掘りするために、この章では事業別売上高に焦点を当てて解説します。まず、事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。
出典:パラマウント・グローバル「SEC Filings」
構成割合から、同社の主要事業はTVメディア事業であることが分かります。この章では、各事業の事業内容に加えて、売上高とOIBDAの推移を紹介します。
※OIBDAとは、営業利益に減価償却費を足した指標のこと。
TVメディア事業
テレビメディア事業の事業内容は、国内外のテレビ放送やテレビ局の運営、ケーブルネットワークの運営、番組の製作・配給です。売上高とOIBDAの推移は以下のとおりです。
出典:パラマウント・グローバル「SEC Filings」
2023年の売上高は200億ドル(3兆円)で、2022年の217億ドル(3兆2,550億円)から17億ドル(2,550億円)減少しました。2023年のOIBDAは47億ドル(7,050億円)で、2022年の54億ドル(8,100億円)から7億ドル(1,050億円)減少しました。売上高が減少した主な要因は、広告収入の低迷です。アメリカ国内の広告収入は12%減少し、海外の広告収入は18%減少しました。
DtoC 事業
DtoC事業の事業内容は、国内外のストリーミングサービスの運営です。DtoC事業の売上高とOIBDAの推移は以下のとおりです。※DtoCは、メーカーとエンドユーザーが直接取引をするビジネスモデルを指します。
出典:パラマウント・グローバル「SEC Filings」
2023年の売上高は67億ドル(1兆50億円)で、2022年の49億ドル(7,350億円)から18億ドル(2,700億円)増加しました。一方、2023年のOIBDAは16億ドル(2,400億円)の赤字で、2022年の18億ドル(2,700億円)の赤字から2億ドル(300億円)改善しました。同社のストリーミングサービス「Paramount+」が成長したことで、売上高も増加しています。しかし、成長を支えるためのコストも増加したことで、OIBDAは赤字になっています。
エンターテインメント事業
エンターテインメント事業の事業内容は、全世界での公開やライセンス供与を目的とした映画や短編コンテンツの製作です。エンターテインメント事業の売上高とOIBDAの推移は以下のとおりです。
出典:パラマウント・グローバル「SEC Filings」
2023年の売上高は29億ドル(4,350億円)で、2022年の37億ドル(5,550億円)から8億ドル(1,200億円)減少しました。2023年のOIBDAは1億1,000万ドル(165億円)の赤字で、2022年の2億7,000万ドル(405億円)から3億8,000万ドル(570億円)減少しました。2023年の売上高が減少した理由として、2022年に大ヒットした映画の収入に匹敵するほどのヒット作に恵まれなかったことが挙げられます。
パラマウント・グローバルの今後
パラマウント・グローバルを把握する上で重要な動向として、映画製作会社のスカイダンス・メディアによる買収提案があります。2024年7月7日には、パラマウント・グローバルが買収提案を受け入れたことが明らかになり、スカイダンス・メディアと合併することになりました。合併後は、テーマパーク業界への進出やストリーミングサービスの刷新、ケーブルネットワークの再建を目指す予定です。
ストリーミングサービスの業界再編の動向に注目
パラマウント・グローバルは、アメリカに本社を置く大手メディア企業です。2023年の売上高は296億ドル(4兆4,400億円)でしたが、2023年の営業利益は赤字に陥っており、経営状況が悪化していました。 2024年7月にスカイダンス・メディアによる買収提案を受け入れ、合併後はストリーミングサービスが刷新される予定です。これは今後のストリーミングサービス業界に大きな影響を与えると考えられるため、業界再編の動向に注目しましょう。