LGは韓国に本社を置く多国籍企業です。韓国財閥の中で4番目に規模が大きく、主に電子機器・化学製品・通信製品を製造、販売しています。
日本においても知名度が高く、2024年上半期に、70インチ以上の有機ELテレビのメーカー別出荷台数シェア1位を獲得しました。
本記事ではLGの会社概要や業績、成長戦略として重要視している5つの成長ドライバーを紹介します。
参考:PR TIMES「LGエレクトロニクス、超大型有機ELテレビの国内シェア1位を獲得!」
LGとはどんな会社
出典:LG
LGは、LGエレクトロニクス・LGディスプレイ・LG化学などのグループ企業で構成される持株会社です。この章では、LGの会社概要・歴史・経営理念・グループ会社の持株比率を紹介します。
会社概要
LGの会社概要は以下のとおりです。
会社名 | LG Corporation |
本社 | 韓国 |
設立 | 1947年 |
従業員数 | 23万人 |
売上高 | 7兆4,453億ウォン(2023年) |
歴史
1947年、創業者の具仁会(ク・イネ)氏が楽喜(ラッキー)化学工業社(現在のLG化学)を設立し、韓国初の化粧品「ラッキークリーム」を開発・販売しました。
1958年には、株式会社金星社(現LGエレクトロニクス)を設立します。同社は、1959年にラジオ、1965年に冷蔵庫、1966年に白黒テレビの製造を開始しました。
その後、1982年にはアメリカのアラバマ州にカラーテレビ工場を開設し、海外進出を推進します。その結果、2006年にビジネスウィーク誌から、「世界最高のIT企業」と評価されるまでに知名度を高めました。
さらに、2007年にLGソーラーエナジーを設立し、2008年には太陽光発電所を設置するなど事業を拡大しています。
経営理念
LGの経営理念は、「顧客価値創造」と「人間重視の経営」の2つです。それぞれの内容は以下のとおりです。
●顧客価値創造
- 顧客第一主義
顧客を最優先に考え、エンドユーザーを重視した意思決定を行うこと。
- 実質的価値の提供
顧客の期待を超える製品やサービスを提供すること。
- 革新的創造
既成概念にとらわれない、差別化されたアイデアを創造すること。
●人間重視の経営
- 自己管理と創造性
何事にも主体性を持ち、率先して行動すること。
- 人間の尊厳の尊重
多様性と個人の尊厳を尊重し、人を最も重要な資産と考えること。
- 能力開発と実現
個人の潜在能力を最大限に発揮できる機会を提供すること。
- 成果主義
短期的・長期的な成果を反映し、公正な評価と報酬を与えること。
グループ会社の持株比率
LGの構成を把握するために、この章ではグループ会社の持株比率を紹介します。
参考:LG「IR Archive」
上の図から、LGの主要なグループ企業の持株比率は以下のとおりです。なお、連結子会社の事業内容は後述します。
●連結子会社
- LG CNS:50.0%
- D&O Corp.:100%
- LG Sports:100%
- LG MDI:100%
●子会社
- LGエレクトロニクス:33.7%
テレビ・洗濯機・冷蔵庫といった生活家電や、車載用機器などを製造する世界有数の総合家電メーカーです。
- LG Chem(化学):33.3%
化学製品・化学素材・電子製品・自動車用品などを製造、販売している企業です。
- LG H&H(生活健康):34.0%
化粧品や日用品、飲料事業などを展開しています。
- LG U+:37.7%
韓国でSIMカードやWi-Fiルーターなどを展開する移動体通信事業者です。
- HSAd(HSアド):35.0%
LGグループの広告代理店です。
LGの経営状況
LGの経営状況として、直近6年間の売上高・営業利益の推移を紹介します。
参考:LG「IR Archive」
2023年の売上高は7兆4,453億ウォン(8,189億円)で、2022年の7兆1,859億ウォン(7,904億円)から2,594億ウォン(285億円)増加しました。一方、2023年の営業利益は1兆5,890億ウォン(1,747億円)で、2022年の1兆9,413億ウォン(2,135億円)から3,523億ウォン(387億円)減少しました。※1ウォン=0.11円換算
LGの事業別売上高の推移
LGの経営状況を深掘りするために、この章では事業別の売上高に焦点を当てて解説します。まず紹介するのは、事業別売上高の構成割合です。
参考:LG「IR Archive」
各事業の事業内容に加えて、売上高と営業利益の推移を紹介します。
LG Corp.
「LG Corp.」事業は、その名のとおりLGの持株会社としての事業です。先に紹介した子会社からの配当収入などが主な収入源となります。「LG Corp.」事業の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:LG「IR Archive」
2023年の売上高は1兆310億ウォン(1,134億円)で、2022年の1兆680億ウォン(1,174億円)から370億ウォン(40億円)減少しました。2023年の営業利益は7,510億ウォン(826億円)で、2022年の8,210億ウォン(903億円)から700億ウォン(77億円)減少しました。ただし、直近6年間で見ると、売上高は高い水準を維持しています。
LG CNS
「LG CNS」事業は、連結子会社の「LG CNS」による事業のことです。同社は顧客にオーダーメイド型のシステム開発やコンサルティング、アウトソーシングサービスなどを提供しています。「LG CNS」事業の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:LG「IR Archive」
2023年の売上高は5兆6,060億ウォン(6,165億円)で、2022年の4兆9,700億ウォン(5,467億円)から6,350億ウォン(699億円)増加しました。2023年の営業利益は4,640億ウォン(510億円)で、2022年の3,850億ウォン(423億円)から790億ウォン(87億円)増加しました。
好調な要因として、DX(デジタルトランスフォーメーション)やクラウド、スマートファクトリーソリューションなどの新技術分野に注力したことが挙げられます。
※DXとは、デジタル技術を活用してビジネスモデルやサービスを変革することです。
※スマートファクトリーとは、AIやIoT技術を活用し、デジタルデータを基に業務管理を行う工場のことです。
D&D Corp.
「D&O Corp.」事業は、連結子会社の「D&O Corp.」による事業のことです。同社はトータルスペースソリューションによって、顧客により良い未来空間を提供しています。「D&O Corp.」事業の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:LG「IR Archive」
※IR情報で確認できた売上高と営業利益は3年分です。
2023年の売上高は2,820億ウォン(310億円)で、2022年の2,580億ウォン(283億円)から240億ウォン(26億円)増加しました。2023年の営業利益は90億ウォン(9億円)で、2022年の70億ウォン(7億円)から20億ウォン(2億円)増加しました。
LG MDI
「LG MDI」事業は、連結子会社の「LG MDI」による事業のことです。同社はLGグループの人材育成、AIの最新技術研究などに携わっています。「LG MDI」事業の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:LG「IR Archive」
2023年の売上高は2,300億ウォン(253億円)で、2022年の2,050億ウォン(225億円)から250億ウォン(28億円)増加しました。2023年の営業利益は90億ウォン(9億円)で、2022年の73億ウォン(8億円)から17億ウォン(1億円)増加しました。
LG Sports
「LG Sports」事業は、連結子会社の「LG Sports」による事業のことです。同社は1983年に設立された韓国初のプロスポーツマネジメント会社で、プロ野球チームとプロバスケットチームを運営しています。「LG Sports」事業の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:LG「IR Archive」
2023年の売上高は820億ウォン(90億円)で、2022年の560億ウォン(61億円)から260億ウォン(29億円)増加しました。2023年の営業利益は20億ウォン(2億円)の赤字で、2022年の110億ウォン(12億円)の赤字から90億ウォン(10億円)増加しました。
LGの5つの成長ドライバー
LGは今後の成長の柱となる領域を「成長ドライバー」として重視しています。この章では5つの成長ドライバーについて紹介します。
- クラウドMSP
クラウドMSPは自動化した運用監視システムのことです。GoogleやMicrosoft、Amazonのクラウドサービスと提携することで、新たなビジネスチャンスの創出を目指しています。
- スマートファクトリー
DX推進に向けて、強力なプラットフォームの構築とデータ分析力を強化します。
- 金融業界向けDX
金融業や保険会社向けDXを推進するためのパートナーとして、中心的役割を果たすことです。
- スマートロジスティクス
スマートロジスティクスとは、AIやIoT技術などを駆使した自動化による効率的な物流のことです。ラストワンマイルの課題解決のために、都市型物流センターを設計しています。※ラストワンマイルとは、最終拠点からエンドユーザーまでの物流サービスのことです。
- AI
AI専門機関として「AIセンター」を設立するなど、AIの市場において事業拡大を目指しています。
LGの成長ドライバーに注目しよう
LGは韓国財閥の1つで、電子機器・化学製品・通信製品の製造・販売など、様々な事業を展開している多国籍企業です。同社は成長戦略として、5つの成長ドライバーを重視しています。さらに2024年3月には、AI・バイオテクノロジー・クリーンテック・バッテリー・自動車部品・次世代ディスプレイの分野に対して、100兆ウォン(11兆円)の投資計画を発表しました。巨額の投資計画なだけに、今後は同分野における動向にも注目してみましょう。
参考:Forbes JAPAN「韓国LGが5年間で11兆円の投資計画 AIやEV、バイオ分野に注力」