韓国財閥のSKグループとは?会社概要や業績、成長戦略を解説

2024年7月、韓国財閥のSKグループは、エネルギー部門のSKオンとSKイノベーションの2社を合併させることを発表しました。2社が合併することで、アジア最大のエネルギー企業が誕生する見込みです。さらに、AIや半導体への巨額な資金を投資することも発表しており、今後の動向が注目されています。

そこで、本記事ではSKグループの会社概要や業績、成長戦略を紹介します。

※SKオンは、電気自動車用バッテリーを開発しているグループ企業です。

※SKイノベーションは、バッテリーや石油の探査・生産事業を行っているエネルギー・化学部門のグループ企業です。

参考:Forbes JAPAN「韓国SKが資源子会社を統合、「アジア最大のエネルギー企業」誕生へ

SKグループとはどんな会社

出典:SKグループ

SKグループは韓国財閥の1つで、エネルギーや先端材料、自動車、半導体などの分野で175社以上の企業を運営しているコングロマリットです。この章では同社の会社概要や歴史、経営理念を紹介します。

会社概要

SKグループの会社概要は以下のとおりです。

会社名SK Inc.
本社韓国
設立1991年
従業員数38,107人(2023年末時点)
関連会社175社以上
売上高1,363億ドル(2023年)

歴史

SKグループのルーツは、日本資本で設立し満州に織物を輸出していた企業の「鮮満綢緞(ソンマンチュウタン)」と、日本の「京都織物」の合併企業である「鮮京(ソンキョン)織物株式会社」です。元々、この会社は日本人が経営していましたが、第2次世界大戦後に日本人経営者が撤退して放棄されました。

その後、SKグループの創業者である崔鍾建(チェ・ジョンゴン)氏が、朝鮮戦争で破壊された鮮京織物株式会社の建物を修復し、1953年に再建しました。

1976年には、総合商社としての活動を始め、インドネシアへのポリエステル原綿の輸出を開始します。1980年には国営企業の大韓石油公社を買収して石油事業に進出し、1994年には国営企業の移動通信公社を買収して通信事業にも参入しました。

さらに、2012年には半導体製造会社であるハイニックス半導体を買収、2015年には産業用ガスメーカーのOCIマテリアルズを買収して事業を拡大させていきます。

このように、同社は買収を繰り返して事業を拡大することで、韓国財閥の中で2番目に大きな資産額を持つまでに成長しています。

経営理念

SKグループの経営理念は、「人々と地域社会の幸福と繁栄を促進すること」です。そのためにも、SKグループ独自の考え方である「VWBE文化」による「SUPEXカンパニー」の実現を目指しています。

VWBEは「voluntary and willing brain engagement(自発的かつ意欲的な脳への関与)」の略で、自らの幸福を追求し、自発的かつ意欲的に脳を駆使することで、仕事における困難を乗り越えて幸福体験を積み重ねる文化としています。

また、VWBE文化を確立すると実現できるとされているのが「SUPEXカンパニー」です。SUPEXは「Super Excellent Level」の略で、人間の能力で到達できる最高レベルを意味します。そのため、SUPEXカンパニーとは、最高レベルの競争力と永続的な存続条件を確保し、経済的価値、社会的価値、そしてメンバーの幸福を持続的に創出する企業と定義されています。

主要グループ企業

SKグループの主要企業は以下のとおりです。

  • SK Inc.

SK Inc.はSKグループの持株会社で、グリーン・先端材料・デジタル・バイオ医薬品の4つの分野に投資しています。

  • SKC

SKCは素材の専門企業で、自動車や半導体、環境分野の高付加価値素材を中心に開発しています。

  • SKブロードバンド

SKブロードバンドは韓国の通信会社です。2020年にはケーブルテレビ事業者と合併し、メディアプラットフォーム企業として事業を展開しています。

  • SKハイニックス

SKハイニックスは、世界2位のメモリチップメーカーです。韓国と中国に4つの製造拠点を持ち、10カ国に販売子会社を抱えています。さらに、イタリア・アメリカ・台湾・ベラルーシに研究開発センターがあります。

  • SKバイオファーマシューティカルズ

SKバイオファーマシューティカルズは、バイオ医薬品の研究・開発をしている企業です。

SKグループの経営状況

SKグループの経営状況として、直近3年間の売上高と営業利益の推移を紹介します。

参考:SKグループ「SK PROFILE 2024

2023年の売上高は1,363億ドル(20兆4,450億円)で、2022年の1,509億ドル(22兆6,350億円)から146億ドル(2兆1,900億円)減少しました。さらに、2023年の営業利益は23億ドル(3,450億円)の赤字で、2022年の132億ドル(1兆9,800億円)から155億ドル(2兆3,250億円)も減少しました。※1ドル=150円換算

営業利益が赤字に転落した要因は、半導体や製油などグループの利益を支えていた主要事業の不振と、半導体や車載電池への莫大な投資が要因と考えられています。

参考:NETIB-NEWS「正念場に差しかかった財界2位のSKグループ(後)

また、同社の地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:SKグループ「SK PROFILE 2024

地域別売上高の構成割合から、様々な地域で事業を展開していることがわかります。

SKグループの事業別売上高の構成割合

どの事業が売上に貢献しているのかを確認するために、SKグループの事業別売上高の構成割合を紹介します。

参考:SKグループ「SK PROFILE 2024

4つの事業について、売上高の多い順に事業内容を紹介します。

グリーン

2023年のグリーン事業の売上高は、797億ドル(11兆9,550億円)でした。グリーン事業では、再生可能エネルギーや電気自動車の充電インフラ、資源リサイクル、二酸化炭素の回収などを推進しています。これらの取り組みにより、世界のネットゼロ達成を目指しています。※ネットゼロとは、温室効果ガスの排出量から吸収量を引いて正味ゼロにすることです。

先端材料

2023年の先端材料事業の売上高は、291億ドル(4兆3,650億円)でした。先端材料事業は、半導体の開発を中心とした事業です。AIやロボット、自動運転車向けの高性能な半導体の開発に注力しています。

デジタル

2023年のデジタル事業の売上高は、245億ドル(3兆6,750億円)でした。デジタル事業は、DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現に役立つ5Gや有線・無線通信インフラ、ICT技術、AIなどを開発している事業です。DXとは、デジタル技術により生活やビジネスを変容することです。

バイオ

2023年のバイオ事業の売上高は、31億ドル(4,650億円)でした。バイオ事業では、ワクチンや新薬の開発、医薬品開発、医薬品の受託製造を行っています。

SKグループの成長戦略

SKグループは成長戦略として、赤字部門の改善と投資先の見直しによる事業再生を目指しています。具体的には、冒頭に紹介したSKオンとSKイノベーションとの合併により、アジア最大のエネルギー企業を誕生させることで、赤字部門のSKオンの事業を改善する見込みです。投資先の見直しでは、2026年までに80兆ウォン(約9兆円)を調達し、AIや半導体に注力するとしています。

SKグループの事業再編の動向に注目しよう

SKグループは、韓国財閥の中でも第2位の資産を誇るコングロマリットです。175以上の関連企業により、世界中に事業を展開しています。しかし、2023年は営業利益が赤字となり、苦戦を強いられました。そこでSKグループは赤字部門を改善し、AIと半導体に注力する予定です。また、バッテリー部門の2社が合併しアジア最大のエネルギー企業が誕生する見込みのため、今後の動向にも注目しましょう。

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