Samsung Group(サムスングループ)は、サムスン電子やサムスン生命保険、サムスンSDIなどで構成する韓国のコングロマリット(複合会社)です。半導体や保険、金融、不動産などの多くの事業を展開しています。
本記事では「Samsung Groupについて詳しく知りたい」という方に向けて、グループ概要・経営状況・成長戦略を紹介します。
Samsung Group(サムスングループ)とは
Samsung Groupは約60社の系列企業を保有するコングロマリットで、韓国4大財閥の1つです。この章ではグループ概要・経営理念について解説します。
グループ概要
Samsung Groupのはじまりは、1938年の株式会社三星紹介の設立です。砂糖や羊毛の取引で得た資金をもとに、電気や電子、金融などの事業の多角化を進めました。現在では約60社の系列企業を保有するコングロマリットに成長し、亜洲日報によると2022年はグループ全体で売上高が400兆ウォンを突破したとのことです。
なお2022年の韓国のGDPは1兆6,643億ドルで、400兆ウォンは約3,000億ドルのため、韓国のGDPの約18%に相当する規模を誇っています。
経営理念
Samsung Groupの経営理念は、「人材と技術をもとに、最高の製品とサービスを創り出し、人類社会に貢献する。」です。
また革新的価値として以下の5つを掲げています。
- 人材第一:人材を大切にすること
- 最高志向:世界最高になるために最善を尽くすこと
- 変化先導:変わらなければ生き残れないという危機感をもつこと
- 正道経営:正しい行動により名誉と品位を守ること
- 相生追求:社会の一員として共に生きる心構えのこと
これらの経営理念・革新的価値をもとに、事業を展開したことで現在の規模にまで成長したのです。
Samsung Groupの主要事業の経営状況
Samsung Groupの主な関連会社は以下のとおりです。
カテゴリ | 関連企業 |
エレクトロニクス | ・Samsung Electronics ・Samsung Display ・Samsung SDI |
機械・重工業 | ・Samsung Heavy Industries ・Samsung C&T Engineering Construction Group ・Samsung Engineering |
金融 | ・Samsung Life Insurance ・Samsung Fire & Marine Insurance ・Samsung Card |
サービス・その他 | ・Samsung C&T Trading & Investment Group ・The Shilla Hotels & Resorts ・Cheil Worldwide |
このなかから、売上高の多い5つの関連企業の経営状況を紹介します。
Samsung Electronics(サムスン電子)
Samsung Electronics(サムスン電子)は、Samsung Groupの中核企業で、家電や電子機器、電子部品などの開発・製造・販売を行っています。主力製品は、スマートフォンや半導体、薄型テレビなどです。
サムスン電子の売上高・営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:Samsung Electronics「Financial Statements」
2023年の経営状況は、売上高・営業利益ともに前年と比較すると大幅に減少しました。とくに営業利益の減少幅が大きく、84%減の6.6兆ウォン(約7,413億円)でした。
主な理由は半導体事業の不振です。2021年と2022年は半導体特需といわれるほど好調でしたが、2023年は一転して大幅に半導体の需要が縮小しました。
またSamsung Electronicsの2022年の売上高は300兆ウォン(約33.8兆円)で、グループ全体が約400兆ウォン(約45.1兆円)でした。つまり、Samsung Electronicsはグループ全体の75%を占める売上があります。※100円=885.76ウォンで換算
なおSamsung Electronicsの地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。
参考:Samsung Electronics「Financial Statements」
上記のグラフより、アメリカ・ヨーロッパ・アジアの3地域で、バランスよく売上を確保していることがわかります。
Samsung Life Insurance(サムスン生命保険)
Samsung Life Insurance(サムスン生命保険)は、韓国最大の生命保険会社です。主な事業として、生命保険や健康保険サービスを提供しています。韓国において18年連続で顧客満足度1位を獲得しています。
Samsung Life Insuranceの売上高・営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:Samsung Life Insurance「Financial Reports」
Samsung Life Insuranceの売上高は右肩上がりに増えています。2022年は34.5兆ウォンで、前年比15%増を達成しました。しかし、営業利益は減少傾向にあり、2022年は前年比の半分以下にまで縮小しています。
Samsung C&T(サムスン物産)
出典:Samsung C&T
Samsung C&T(サムスン物産)は、Samsung Groupの総合商社・建設ゼネコンです。
商社部門では資源や電子産業、化学、鉄鋼などを取り扱っています。建築部門ではハイテク工場や超高層ビルの施工・管理、住宅販売、インフラ整備などを請け負っています。
Samsung C&Tの売上高・営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:Samsung C&T「Financial Information」
Samsung C&Tの売上高は、2022年と2023年の2年連続で40兆ウォンを突破しました。営業利益も右肩上がりに増えており、2023年には2.87兆ウォンを達成しています。
Samsung ElectronicsやSamsung Life Insuranceとは対照的に、営業利益が増えていることから、今後の成長産業としても期待できます。
Samsung Fire & Marine Insurance(サムスン火災海上保険)
出典:Samsung Fire & Marine Insurance
Samsung Fire & Marine Insurance(サムスン火災海上保険)とは、韓国最大の保険会社です。自動車保険・火災保険・損害保険などの保険商品を主に展開しています。韓国の顧客満足度の損害保険部門において、23年連続で1位を獲得するほど、現地で信頼を得ています。
Samsung Fire & Marine Insuranceの売上高・純利益の推移は、以下のとおりです。
参考:Samsung Fire & Marine Insurance「Annual Report」
Samsung Fire & Marine Insuranceの売上高は、2022年と2023年の2年連続で20兆ウォンを突破しました。純利益も2023年の1.28兆ウォンで増加傾向にあり、着実に利益を増やしています。
Samsung SDI(サムスンSDI)
出典:Samsung SDI
Samsung SDI(サムスンSDI)は韓国の電気メーカーです。ディスプレイや太陽電池、電気自動車用バッテリーなどの開発・販売を行っています。
Samsung SDIの売上高・営業利益の推移は以下のとおりです。
出典:Samsung SDI「Financial Information」
Samsung SDIの2023年の売上高は22兆ウォンで、5年で2倍以上に増加しました。さらに営業利益は1.6兆ウォンで、5年で3倍以上も増えています。
急速に事業規模が大きくなっている背景は、電気自動車用のバッテリーの需要拡大です。今後も成長が期待できる企業といえるでしょう。
Samsung Groupの成長戦略
Samsung Groupの成長戦略は、事業の多角化に特徴があります。
多角化を積極的に行うことで、グループ全体を大きく拡大してきました。実際に約60社の関連企業のなかには、売上高が10兆ウォンを超える企業が何社もあります。
巨大なコングロマリットになった現在も拡大路線を続けており、2022年にはアメリカの医薬品メーカーのバイオジェンを買収し、バイオ医薬品事業の強化を図っています。さらに、2023年にはアメリカのVR事業を手掛けるeMagin(イマジン)の買収を発表しました。
Samsung Groupの4つの分野に注目しよう
Samsung Groupは韓国4大財閥の1つで、韓国経済に大きな影響力があります。そのSamsung Groupは、2021年から3年間で204兆ウォンを下記の4つの分野に投資する予定です。
- バイオ医薬
- AI
- 半導体
- ロボット工学
多角化を積極的に実施して成功を収めているだけに、今後はこれら4つの分野にも注目してみましょう。