Pfizer(ファイザー)は新型コロナウイルスが流行した際に、ワクチンの開発に成功した企業です。
しかし、「ファイザーとはどんな会社なの?」と疑問に思っている方もいるでしょう。
そこで本記事ではPfizerの会社概要や経営状況、成長戦略についてわかりやすく解説します。
Pfizer(ファイザー)とはどんな会社
出典:Pfizer
Pfizerはアメリカに本社をおく製薬メーカーで、コロナウイルスのワクチンの成功により2022年度の売上高が1,000億ドルを突破しました。この章でPfizerの会社概要・企業目的・事業内容を紹介します。
会社概要
Pfizerの会社概要は以下のとおりです。
会社名 | Pfizer Inc. |
設立 | 1849年 |
本社 | アメリカ |
従業員数 | 約88,000人 |
拠点数 | 37拠点 |
進出国 | 約200カ国 |
売上高 | 585億ドル(2023年) |
Pfizerは1849年に、チャールズ・ファイザーとチャールズ・エアハートがニューヨーク州に、チャールズ・ファイザー・アンド・カンパニーを設立したのが始まりです。1940年代には抗生物質のペニシリンを大量生産し、1980年には世界で最も売れている鎮痛・抗炎症薬のピロキシカムの開発に成功しました。
新型コロナウイルスのワクチンにおいては、わずか10カ月で開発に成功し、コロナウイルスの脅威に立ち向かうのに貢献しました。
企業目的
Pfizerでは、2019年に新たな企業目的の「Breakthroughs that change patients’ lives(患者の生活を大きく変えるブレークスルーを生み出す)」掲げています。
新型コロナワクチンの成功は、企業目的を体現したといえるでしょう。
またPfizerは「実効性のある社会貢献プログラムは何か」という視点で、製薬企業としてできる社会貢献を長期にわたり続けています。
事業内容
Pfizerの事業内容は、医療用医薬品の研究・開発・製造・販売です。すでに開発に成功した医薬品の販売だけではなく、現在も新たな治療薬の発見に向けて取り組んでいます。
具体的に以下の6つの分野において、112のプロジェクトが進行中です。
- 内科系疾患
- 炎症性・免疫疾患
- 希少疾病
- がん
- ワクチン
- 感染症
このような新たな取り組みにより、世界中の医療を改善に貢献しているのがPfizerといえます。
Pfizerのコロナワクチンの特徴
Pfizerのコロナワクチンの特徴は、mRNA(メッセンジャーRNA)を利用している点です。
mRNAとは、体内でタンパク質を作る際の設計図のようなものです。
生物はDNAに格納している遺伝子情報を一度mRNAにコピーし、mRNAの情報をもとにタンパク質を生成しています。
この仕組みを利用したのがmRNAワクチンです。
mRNAワクチンは、ウイルスのスパイク(ウイルスが人体の細胞と結合する部分)のmRNAを投与することで、体内でスパイクだけのタンパク質を生成させます。すると、ウイルスのスパイクは異物のため、体の免疫反応が作用しタンパク質を排除しようとします。
この一連の流れにより、ウイルスのスパイクに対する免疫が獲得できる仕組みです。免疫獲得後に感染力のあるウイルスが体内に入っても、スパイクに免疫があるため、細胞への侵入を抑止できます。
mRNAワクチンの最大の特徴は、開発期間が短いことです。通常ワクチンの開発には5年~10年程度必要ですが、mRNAワクチンは1年以内で実用化することもできます。コロナウイルスだけではなく、今後、未知のウイルスが発生した場合にもmRNAワクチンは効果を発揮できると期待されています。
Pfizerファイザーの経営状況
Pfizerの経営状況を売上高・純利益の推移から考察します。売上高・純利益の推移は以下のとおりです。
参考:Pfizer「Annual Reports」
Pfizerは新型コロナウイルスのワクチンのヒットにより、2021年・2022年に急激に売上が拡大しました。しかし、2023年度は新型コロナウイルス関連製品の需要が落ち込み、売上高も585億ドルに急減しています。また、2022年の純利益は314億ドルでしたが、2023年は22億ドルと約93%の減少となりました。
このように、新型コロナウイルスの流行で一気に成長しましたが、収束とともに売上・利益が急減しています。
Pfizerの地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。
参考:Pfizer「Annual Reports」
Pfizerは海外売上比率が約54%で、アメリカ国内での売上が約半分を占めています。
Pfizerの事業別売上高の推移
Pfizerの事業は、「Biopharma」と「Business Innovation」の2つがあります。事業別の売上高の構成割合は以下のとおりです。
参考:Pfizer「Annual Reports」
グラフからみてもわかるように、Biopharmaの事業の売上高が大半を占めています。ここでは、各事業内容と売上高の推移を紹介します。
Biopharma
Biopharmaは、医薬品の開発・研究・製造・販売を行っている事業です。Biopharmaの売上高の推移は以下のとおりです。
参考:Pfizer「Annual Reports」
Biopharma事業は、新型コロナウイルスのワクチンの成功により2022年には約990億ドルに達し、コロナ流行前の2020年と比較すると2倍以上に急成長しました。反対に、2023年はコロナウイルスが収束に向かったことから急激に減少しています。
Business Innovation
Business Innovation(ビジネス・イノベーション)の売上高の推移は、以下のとおりです。
参考:Pfizer「Annual Reports」
Business Innovation は2023年に新たに設立された事業で、2022年以前のPfizer CentreOne事業を引き継いでいます。
なおPfizer CentreOneは、CDMO(医薬品受託製造)を担う事業です。CDMOとは、他社の医薬品メーカーの開発・製造を受託するビジネスモデルです。2023年時点では全体の売上高の2%でしたが、今後の成長が期待されています。
ファイザーの成長戦略
Pfizerは新型コロナウイルスの関連製品の売上が低迷しているなか、次の成長戦略として、がんの治療薬の開発・製造を強化しています。
具体的に2023年3月に、アメリカのシージェンを430億ドルでの買収を発表しました。シージェンは、抗体薬物複合体の技術に強みを持つ企業です。抗体薬物複合体は次世代のがん治療薬として期待されており、Pfizerの持つ技術が加わることで、同分野において存在感が高まると期待されています。
抗体薬物複合体とは、抗体に薬物を付加してがん細胞を狙って攻撃する抗がん剤のことです。人体の抗体の仕組みをがん細胞に薬を運ぶ機能として利用する点に特徴があります。
参考:Bloomberg「ファイザー、抗がん剤メーカーのシージェン買収へ-430億ドル」
ポストコロナは次世代がん治療薬に注力
Pfizerは新型コロナウイルスのワクチンにより、大きな利益を得ることに成功しました。その利益をもとに、次はがん領域の強化を図っています。つまり、mRNAワクチンの次は抗体薬物複合体(ADC)が同社の成長のカギとなります。
今後はシージェンの持つ抗体薬物複合体の技術を活用し、次世代のがん治療薬の開発に成功できるかに注目しましょう。