もしトラに備えよう!トランプが米国大統領になる日本への影響を解説 

2024年3月4日、米連邦最高裁はトランプ氏の大統領選挙への立候補を認める判決を下しました。 

懸念材料の1つが払拭されたことから、11月5日に実施される米国大統領選挙において、トランプ氏の勝利の可能性が出てきました。 

トランプ氏は過激な言動や政策で知られていることから、「もしトラ(もしもトランプ氏が大統領に返り咲いたら)」というキーワードが注目されています。 

本記事では「もしトラ」に備えるために、現実になった際のリスクや日本への影響を解説します。 

米国大統領選挙の現状 

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米国大統領選挙は、2大政党の民主党と共和党に指名された候補者で争われるのが通例です。その民主党と共和党では、約1年をかけて候補者を選出します。 

各党の候補者選びの現状を簡単にまとめます。 

民主党は現大統領のバイデン氏以外に有力な候補者がいないことから、バイデン氏が選出される見込みです。 

共和党はトランプ氏以外に、ヘイリー氏などが立候補していました。しかし、すでに圧倒的な支持率を背景に、トランプ氏の指名獲得が確実となっています。 

トランプ氏が立候補できるかどうかの最大の懸念事項は、2021年の連邦議会襲撃を扇動したことによる立候補の資格の有無でした。2024年3月4日に米連邦最高裁がトランプ氏の大統領選挙への立候補資格を最終的に認めたため、トランプ氏とバイデン氏の決選となるのが濃厚な情勢です。 

また現地の報道によると支持率は拮抗しているものの、トランプ氏がやや優勢と伝えられています。このような情勢から、「もしトラ」が注目されているのです。 

トランプ氏の大統領時代の主な取り組み 

なぜトランプ氏が大統領に返り咲くことにリスクがあるのかといえば、前政権時代のような過激な政策が復活するとみられているためです。 

トランプ氏の大統領時代の取り組みは、「アメリカを再び偉大な国に」をスローガンに、米国第一主義のもとさまざまな保護主義的な政策を実施しました。 

例えば、以下のような取り組みが挙げられます。 

  • メキシコとの国境に壁を建設 
  • 中国への輸入品に高い関税をかけ米中関係が悪化 
  • フェイクニュースを巡りメディアと関係が悪化 
  • イスラム圏などの一部の国から入国を禁止 
  • 在外駐留米軍の削減 

日本においても日米安保条約について不満を示し、日本の負担を増やすように発言したこともありました。 

さらに2020年の前回大統領選挙において、「不正があった」と主張し、アメリカの分断を招いています。現在でも不正により、バイデン大統領がトランプ氏から勝利を盗んだと信じている共和党員も多くいるとのことです。 

「もしトラ」で考えられるリスク 

過激なトランプ節は現在も健在で、「もしトラ」が現実になると以下の7つのリスクが考えられます。 

  • 輸入品への10%の関税 
  • 米中対立の激化 
  • ウクライナへの支援の縮小 
  • アメリカがNATOから離脱 
  • 台湾政策の路線変更 
  • 日米安全保障条約への影響 
  • 環境対策・脱炭素の後退 

「もしトラ」に備えるために、各リスクについて押さえておきましょう。 

輸入品への10%の関税 

トランプ氏は大統領に返り咲いた場合、「すべての貿易相手国に対して、輸入品に10%の関税を課す」と公約しています。 

実現するかどうかは不透明ですが、公約に掲げていることから「もしトラ」が現実になると前政権時代のように米国第一主義の政策が復活する可能性が高いでしょう。 

貿易相手国には、もちろん日本も含まれるため、日本の産業にも大きな痛手となるはずです。 

実際に10%の関税を課した場合、アメリカが関税による報復を受ける可能性もゼロではありません。そのため、この政策は世界経済に大きな混乱を引き起こす可能性があります。 

またアメリカ国内の影響として、物価高騰が考えられますが、トランプ氏は減税により対応できると主張しています。このことから日本の企業においても、関税が上昇するリスクの回避方法を今から検討する必要があるでしょう。 

米中対立の激化 

トランプ氏は大統領に返り咲くと、中国の輸入品に60%超の関税を課す可能性があると発言しています。 

実施されれば前回のように、米中対立が悪化して貿易戦争に発展するリスクがあります。中国に生産拠点をおく企業においては、生産拠点の移動や多角化などの対応に迫られるでしょう。 

ただし、バイデン政権も中国に対しては強硬な姿勢をとっています。前回のトランプ氏が課した高い水準の関税の維持や、半導体の輸出を禁止するなどです。 

そのため、どちらが勝利しても米中関係が改善するとはいえないものの、トランプ氏のほうがより強硬な姿勢で臨む可能性があります。 

ウクライナへの支援の縮小 

トランプ氏はウクライナへの支援に消極的な立場を示しています。ウクライナよりもアメリカの国境を強化し、中南米からの不法移民の流入を防止するためです。 

2023年の1年間で、アメリカに247万人の不法移民が流入したとみられており、各地で治安悪化などのさまざまな問題を引き起こしています。そのため、アメリカ人からも不法移民の取り締まりの強化を望む声が上がっており、これがトランプ氏の支持率を押し上げている要因の1つと考えられています。 

また、ロシアがウクライナに侵攻してからこれまでに、アメリカはウクライナへ1,100億ドル以上の軍事・経済支援をおこなってきました。最大の支援国であるアメリカの援助が減ることで、ウクライナは戦力を維持できなくなり、ロシアに有利な戦況になる可能性があります。 

そのため、NATO(北大西洋条約機構)は「もしトラ」に備えて、5年間で1,000億ドルの軍事支援を検討しています。 

ただし、トランプ氏は「24時間以内に戦争を終結できる」と話し、早期に打開できる自信を見せているため、どのような対応をするのか分からないのがリスクといえそうです。 

アメリカがNATOから離脱 

トランプ氏は現在のNATOの在り方に強い不満を抱えています。再選するとNATOから離脱すると予測されているほどです。 

NATOでは国防費を2%に引き上げることで合意しています。しかし、加盟国のなかに国防費がGDP比で2%に達していない国があるため、トランプ氏は「国防費の少ない国は守らない」と発言したのです。 

仮にアメリカがNATOから離脱すると、ウクライナやイスラエルの戦況への影響だけではなく、世界中の地理的リスクが顕在化するでしょう。 

台湾政策の路線変更 

「もしトラ」が現実になると、アメリカの台湾政策が変更されるリスクがあります。 

トランプ氏は台湾有事の際に、アメリカが台湾を守るのかどうかについて言及を避けており、台湾の半導体産業がアメリカから産業を奪ったと考えているためです。 

仮にアメリカが台湾との連携を弱めると、台湾有事の発生や中国軍が地域におよぼす影響力の拡大などが考えられます。 

日米安全保障条約への影響 

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日本にとって「もしトラ」のリスクは、日米安全保障条約への影響です。 

トランプ氏は前政権時代に日本を名指しし、在日米軍駐留の負担増を求めたことがありました。安倍元首相との個人的な友好関係により、大きな騒ぎにはならなかったものの、次も日米安全保障条約の見直しを求めてくる懸念があります。 

日米安全保障条約は日本の国防の根幹なだけに、大きなリスクといえるでしょう。 

環境対策・脱炭素の後退 

「もしトラ」のリスクは、環境対策・脱炭素の取り組みの後退です。 

トランプ氏は大統領に返り咲いたら、バイデン政権の脱炭素政策を止め、パリ協定から離脱すると主張しているためです。アメリカの豊富な石油や石炭などを生かし、エネルギー業を復活させたいとの思いからで、これらの政策の転換は光熱費が下がるというメリットもあります。 

日本においては、石油・石炭・天然ガスが安定供給されることで、燃料高騰の問題を解決できるかもしれません。また、バイデン政権の電気自動車への税額控除制度を廃止するとみられており、アメリカの自動車産業においても転換点となるでしょう。 

「もしトラ」から「ほぼトラ」へ!日本への影響に備えよう 

トランプ氏の支持率の高さから「もしトラ」から「ほぼトラ(ほぼトランプ氏が大統領になる)」とまでいわれ始めています。トランプ氏は、政権時代に予想もつかない多くの政策を実行したことから、「もしトラ」が現実になると日本や世界への影響は大きいと考えられています。 

アメリカに進出している企業だけではなく、日本で活動している企業もサプライチェーンを再検討するなどして「もしトラ」に備えましょう。 

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