Saudi Aramco(サウジアラムコ)とはどんな会社?概要や経営状況を解説 

ロシアがウクライナへ侵攻して以降、原油価格の高騰が続いています。その影響でさまざまな製品・サービスが値上がりしました。 

このような現代において、注目されている企業がSaudi Aramco(サウジアラムコ)です。 

本記事では、「Saudi Aramcoってどんな会社?」と疑問に思う方に向けて、会社概要・経営状況・成長戦略を紹介します。 

Saudi Aramco(サウジアラムコ)とはどんな会社? 

出典:Saudi Aramco 

Saudi Aramcoはサウジアラビアの国営の石油会社です。ここでは会社概要や経営理念、事業内容について紹介します。 

会社概要 

Saudi Aramcoの会社概要は以下のとおりです。 

会社名 Saudi Aramco(サウジアラムコ) 
本社 サウジアラビア 
設立 1933年 
従業員数 73,000人以上 
売上高 4,950億ドル(2023年) 
炭化水素埋蔵量(石油換算) 2,512億バレル 

Saudi Aramcoは、1933年に設立したカリフォルニア・アラビアン・スタンダード・オイル・カンパニーを起源とする企業です。1935年に石油の採掘を始め、1938年に商用原油生産を開始しました。そして、1962年には累積原油生産量が50億バレルに達しています。 

もともとはアメリカの企業でしたが、1970年以降にサウジアラビアの政府は出資比率を高めます。1980年には政府の出資比率が100%となり、1988年にSaudi Aramcoが正式に設立されました。 

現在では、炭化水素生産量が1日あたり1,360万バレルを誇っています。炭化水素とは、炭素と水素でできた化合物の総称です。炭化水素には石油や天然ガスなどが含まれます。 

世界の石油需要は、1日あたり1億211万バレルであることから、約13%をSaudi Aramcoが担える計算になります。 

参照:JETRO「OPEC、世界の石油需要は2025年に前年比日量185万バレル増の日量1億621万バレルと予測」 

経営理念 

Saudi Aramcoの経営理念は「Where Energy is opportunity(エネルギーは機会である)」です。世界有数の石油企業に成長できた理由に、「次のフロンティアを改革し、次の問題を解決しようとする意欲」をあげています。 

現在は、多様性を認め合いそれぞれの社員が能力を発揮できる「ダイバーシティ&インクルージョン」の実現、CO2の回収・利用や循環型炭素経済などの世界的な課題にも積極的に取り組んでいます。 

事業内容 

Saudi Aramcoの事業内容は、主に石油生産・ガス生産・化学品があります。 

・石油生産 

1938年に商用原油生産を開始して以来、世界のエネルギー源として原油を安定供給してきました。炭化水素埋蔵量は2,512億バレルで埋蔵量・生産量ともに世界トップクラスです。今後も世界のエネルギー源として、中核を担うことが予想されます。 

・ガス生産 

1970年代から天然ガスの利用を促進してきました。サウジアラビアの天然ガス市場は世界第7位で、その需要を担っているのはSaudi Aramcoです。なぜならサウジアラビアで天然ガスを供給する唯一の企業のためです。 

・化学品 

1998年からは化学品事業へ参入しています。基礎化学品の生産から高機能合成ゴムといったさまざまな製品を展開しています。近年では、コンクリートを用いたCO2排出削減方法の確立に成功しました。具体的にコンクリートの養生プロセスにおいてCO2を利用することで、コンクリート内に20%のCO2を取り込むことに成功したのです。 

このように、Saudi Aramcoは持続可能な社会の実現に向けて、さまざまな取り組みを事業として行っているのも特徴です。 

Saudi Aramcoの経営状況 

Saudi Aramcoの経営状況を売上高・営業利益の推移から考察します。売上高・営業利益の推移は以下のとおりです。 

参考:Saudi Aramco「Reports & Presentations」 

2022年は原油高騰もあり、売上高が5,000億ドルを突破しました。しかし、2023年は、原油価格がやや落ち着いたことから、売上高が減少し4,409億ドル(約61兆円)でした。減少しているとはいえ、莫大な売上があります。なお2023年の純利益は2,315億ドル(32兆円)でした。※1ドル=140円換算 

Saudi Aramcoの地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。 

参考:Saudi Aramco「Reports & Presentations」 

Saudi Aramcoの海外事業は、主にアメリカ・ヨーロッパ・アジアの世界三大エネルギー市場に展開しています。しかし、巨額の売上高に対して、海外売上比率は38.8%とあまり高くありません。 

Saudi Aramcoの事業別売上高の推移 

Saudi Aramcoの事業は以下の3つがあります。 

  • Upstream(アップストリーム事業) 
  • Downstream(ダウンストリーム事業) 
  • Corporate(コーポレート事業) 

2023年の事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。 

参考:Saudi Aramco「Reports & Presentations」 

グラフよりSaudi Aramcoの主要事業は、アップストリーム事業とダウンストリーム事業であることがわかります。この章では各事業の状況を掘り下げるために、売上高の推移を紹介します。 

Upstream(アップストリーム事業) 

アップストリーム事業は、原油・天然ガス・NGLの採掘や開発、生産を担う事業です。アップストリーム事業の売上高の推移は以下のとおりです。 

参考:Saudi Aramco「Reports & Presentations」 

2023年のアップストリーム事業の売上高は、7,846億サウジアラビア・リヤル(約30兆円)でした。またアップストリーム事業で生成された原油・天然ガス・NGLは、パイプラインを通じて、ダウンストリーム事業の複数の施設に運ばれています。※1サウジアラビア・リヤル=38円で換算 

Downstream(ダウンストリーム事業) 

ダウンストリーム事業は石油の精製や石油化学製品・潤滑油の製造、流通、貿易などを担う事業です。ダウンストリーム事業の売上高の推移は以下のとおりです。 

参考:Saudi Aramco「Reports & Presentations」 

2023年のダウンストリーム事業の売上高は8,667億サウジアラビア・リヤル(約33兆円)でした。近年、ダウンストリーム事業とアップストリーム事業の売上高の割合は半々程度を推移しています。 

Corporate(コーポレート事業) 

コーポレート事業は、人事・財務・法務・広報などを担当する事業です。コーポレート事業の売上高の推移は以下のとおりです。 

参考:Saudi Aramco「Reports & Presentations」 

コーポレート事業は全体の売上高に占める割合が0.1%ですが、Saudi Aramcoの企業活動を支えるための不可欠なサービスと位置付けられており、1つの事業として重要視されています。 

Saudi Aramcoの成長戦略 

Saudi Aramcoは今後の成長戦略として、以下の2つを掲げています。 

・今後10年間、アップストリーム事業へ大規模な投資を行うこと。 

・ダウンストリーム事業では非原油事業の拡大と、アップストリーム事業との統合を推進すること。 

これらの積極的な投資により、石油分野の優位性を高め、環境に優しい生産方法の技術開発を進める予定です。 

原油価格に影響!Saudi Aramcoの動向にも注目しよう 

Saudi Aramcoは、アップストリーム事業・ダウンストリーム事業により世界最大の売上高を誇る石油企業です。炭化水素生産量が1日あたり1,360万バレルと、膨大な生産能力があることから原油価格にも影響するため、今後の動向にも注目してみましょう。 

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