P&Gは「パンパース」や「ファブリーズ」などを販売しており、日本でもよく知られた日用品メーカーです。
正式名称はプロクター・アンド・ギャンブルで、アメリカに本社があります。
本記事では「P&Gはどんな会社なの?」と思っている方に向けて、会社概要・経営状況・成長戦略を徹底解説します。
P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)とはどんな会社?
出典:P&Gジャパン
P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)は、アメリカに本社をおく日用品メーカーです。日本ではP&Gジャパンを展開し、「アリエール」「レノア」「ボールド」など、生活を支える商品を多数販売しています。
この章ではP&Gの会社概要・経営理念・事業内容について紹介します。
会社概要
P&Gの会社概要は以下のとおりです。
会社名 | P&G(プロクター・アンド・ギャンブル) |
本社 | アメリカ |
設立 | 1837年 |
従業員数 | 107,000人(2023年6月30日時点) |
事業拠点 | 80カ国以上 |
売上高 | 820億ドル(2023年) |
P&Gは、ローソク業を営んでいたウィリアム・プロクターと石けん業者のジェームス・ギャンブルが共同出資し、1837年に設立した企業です。P&Gの社名は2人の創業者の名前が由来になっています。
石けんや家庭用洗剤による成功で大きく成長し、現在では世界180カ国で48億人以上に向けて製品を提供しているグローバル企業です。
経営理念・価値観
P&Gの経営理念は、良き企業市民として「正しいことを行う」です。この経営理念をもとにP&Gでは高い倫理基準を設け、活動の基盤を築いてきました。
またP&Gでは共有する価値観として、以下の5つの要素を重要視しています。
- 誠実さ
- リーダーシップ
- 当事者意識
- 勝利への情熱
- 信頼
経営理念・共有する価値観をもとに現在も活動しており、その例が「環境サステナビリティ」です。環境サステナビリティとは、「気候変動」「廃棄物」「水」「自然」を4つの柱とする持続可能な社会を実現するための取り組みです。具体的に気候変動対策として、P&Gは2040年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指しています。
事業内容
P&Gは製品のジャンルにより、5つの事業・10のカテゴリがあります。各事業・カテゴリの主要ブランドは以下のとおりです。
事業 | カテゴリ | 主要ブランド |
---|---|---|
Fabric & Home Care (ホームファブリック用品) | ファブリックケア | ・ダウニー ・Tide(タイド) |
ホームケア | ・ファブリーズ ・ミスタークリーン | |
Baby, Feminine & Family Care (ケア用品) | ベビー用品 | ・パンパース |
衛生用品 | ・ウィスパー | |
家族向けケア用品 | ・チャーミン | |
Beauty (ビューティー) | スキンケア・パーソナルケア | ・SK-II(エスケーツー) ・OLY(オレイ) |
ヘアケア | ・パンテーン | |
Health Care (ヘルスケア) | パーソナルヘルスケア | ・ペプトビスモル(胃薬) |
オーラルケア | ・オーラルB | |
Grooming (グルーミング) | グルーミング | ・ブラウン ・ヴィーナス |
このように、P&Gはさまざまなニーズに対応できる日用品を開発・販売しています。
P&Gの経営状況
P&Gの経営状況を売上高・営業利益の推移から考察します。売上高・営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:P&G「FINANCIAL HIGHLIGHTS」
2023年の売上高は820億ドル(約11.4兆円)に達し、年々右肩上がりに増加しました。また、売上高の増加に合わせて営業利益も高い水準を維持しています。
P&Gの地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。
参考:P&G「FINANCIAL HIGHLIGHTS」
P&Gの主要な市場は北アメリカ・ヨーロッパ・アジア(中国を含む)です。また、インド・中東・アフリカやラテンアメリカなどでも一定の成果を上げているのは、世界中に日用品を販売しているP&Gの特徴といえます。
P&Gの事業別売上高の推移
P&Gの事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。
参考:P&G「FINANCIAL HIGHLIGHTS」
この章では5つの事業の状況を掘り下げるために、売上高・純利益の推移を紹介します。
Fabric & Home Care
Fabric & Home Care事業には、ファブリック用品とホームケア用品の2つのカテゴリがあります。具体的な商品は、洗濯用洗剤や食器用洗剤などです。
売上高・純利益の推移は以下のとおりです。
参考:P&G「ANNUAL REPORTS」
2023年の売上高は283億ドルで、5つのうち最も売上の多い事業となります。売上高は、5年で28.4%増加し、今後もP&Gの成長を支える事業の1つです。
Baby, Feminine & Family Care
Baby, Feminine & Family Care事業は、ベビー用品・衛生用品・家族向けケア用品の3つのカテゴリがあります。具体的な商品は、ベビー用おむつやおしりふき、トイレットペーパーなどです。
売上高・純利益の推移は以下のとおりです。
参考:P&G「ANNUAL REPORTS」
グラフより、Baby, Feminine & Family Care事業の売上高は順調に伸びており、純利益も高い水準を維持していることがわかります。
好調を維持している要因は、生活に欠かせない日用品で高いシェア率を獲得しているためです。例えば、ベビー用おしりふきは世界市場シェアの20%以上を誇り、ペーパータオルは北米の市場シェアの40%以上を占めています。
Beauty
Beauty事業は、スキンケア・パーソナルケアとヘアケアの2つのカテゴリがあります。デオドラントやクレンジング、スキンケア用品など幅広い製品を展開しているのが特徴です。
売上高・純利益の推移は以下のとおりです。
参考:P&G「ANNUAL REPORTS」
Beauty事業の売上高は年々拡大しており、2023年には150億ドルを突破しました。純利益も3年連続で30億ドルを超え、好調を維持しています。Beauty事業の特徴は、高い利益率を維持していることです。なお、2023年の純利益率は21.1%でした。
Health Care
Health Care事業は、パーソナルヘルスケアとオーラルケアの2つのカテゴリがあります。具体的な商品は歯ブラシやうがい薬などです。
Health Care事業の売上高・純利益の推移は以下のとおりです。
参考:P&G「ANNUAL REPORTS」
パーソナルヘルスケアとオーラルケアはともに成長を続けており、Health Care事業は過去5年間、売上を伸ばしました。純利益も売上の増加に伴い2022年に20億ドルを突破し、2023年も1億ドル以上増やしています。
Grooming
Grooming事業は、電気シェーバーやカミソリ、脱毛器などのグルーミング用品を開発・販売している事業です。売上高・純利益の推移は以下のとおりです。
参考:P&G「ANNUAL REPORTS」
Grooming事業の売上高は60~65億ドルを推移しており、純利益はこの5年間横ばいの状態が続いています。ただし、同事業の純利益率は22.7%で、5事業のなかで最も高くなっています。
P&Gの成長戦略
P&Gの成長戦略において特徴的な取り組みは、オープンイノベーションの「Connect + Develop」です。
オープンイノベーションとは、自社の技術やアイデアだけではなく、他社や研究機関、政府などのアイデア・技術を取り入れてイノベーションを達成する手法です。
P&Gでは2000年にオープンイノベーションが提唱され、プロダクトの50%で社外の知見を取り入れることを目標としています。結果として、研究開発効率が60%増加し、売上に対する研究開発費用が4.8%から3.4%に縮小しました。
現在でもP&Gは「Current Needs」にて、社外からのソリューションやイノベーションの提案を受け付けています。
P&Gはオープンイノベーションで成功した代表例
P&Gが日用品のグローバル企業として活躍している背景には、オープンイノベーションによる成功が挙げられます。自社開発(クローズドイノベーション)に限界を感じている企業や、新規事業のアイデアに悩んでいる企業にとって、P&Gの経営戦略・成長戦略は参考となるでしょう。