2023年10月、シーメンスはマイクロソフトと提携して産業界のAI導入を促進すると発表しました。具体的にはAI搭載型アシスタントにより、製造業における人間と機械のコラボレーションを目指すとのことです。
しかし、「シーメンスってどんな会社なの?」や「何がすごいの?」と疑問に思う方もいるでしょう。
そこで本記事ではシーメンスの会社概要・経営状況・成長戦略について徹底解説します。
参考:シーメンス「シーメンス、マイクロソフトと提携 産業界へAI導入を推進」
シーメンス(Siemens)とはどんな会社なの?
出典:シーメンス
シーメンス(Siemens)は、ドイツに本社を置く電機メーカーです。1847年にヴェルナー・フォン・シーメンスとヨハン・ゲオルク・ハルスケによって創業され、175年以上の歴史を持っています。この章ではシーメンスの会社概要・経営理念・事業内容を紹介します。
会社概要
シーメンスの会社概要は以下のとおりです。
会社名 | シーメンス AG |
本社 | ドイツ |
創業 | 1847年 |
従業員数 | 31万1,000人(ドイツ8.6万人) |
売上高 | 777億ユーロ(2023年) |
シーメンスは1879年に世界初の電気鉄道を公開し、1925年に水力発電による電力供給の実現など、人々の便利な生活を支えてきた電機メーカーです。世界190カ国で産業・インフラ・交通・輸送・医療などの分野でビジネスを展開しています。
日本では1887年に事務所を開設し、現在では複数のグループ企業があります。日本とも関係の深いグローバル企業の1つです。
経営理念
シーメンスの経営理念は、「企業は利益の最大化のみを求めるのでなく、技術や製品、従業員の行動を含めたあらゆる企業活動において、社会に貢献するものでなくてはならない」です。この理念は創業者のヴェルナー・フォン・シーメンスが抱いていた、パイオニア精神・社会貢献への意思を表しており、現在も受け継がれています。
この経営理念により、シーメンスは第二次産業革命・第三次産業革命をけん引してきました。また、現在のリアルとデジタルの融合が進むインダストリー4.0(第四次産業革命)においても活躍しています。
事業内容
シーメンスは電機メーカーとして創業した企業ですが、現在では主に以下の4つの事業があります。
・デジタルインダストリーズ
デジタルインダストリーズ事業では、技術・製品・ソリューション・カスタマーサービスなどにより、企業のDX推進をサポートしています。バリューチェーン全体にわたってデジタル化に貢献できるのが、シーメンスのデジタルインダストリー事業の強みです。
・スマートインフラストラクチャー
スマートインフラストラクチャー事業では、エネルギーとビルを支えるインフラ領域においてデジタル技術を活用し、スマートグリッドやスマートビルの実現に貢献しています。スマートグリッドとは、電力の使用状況をリアルタイムで把握・制御することで、効率的な電力配分を実現するための電力網のことです。スマートビルは、インテリジェントビルとも呼ばれ、照明や空調を自動で最適化する高付加価値オフィスビルのことです。
・モビリティ
モビリティ事業は、世界初の電気鉄道の公開を筆頭に、交通網・輸送網の付加価値を高めています。具体的には、道路交通・鉄道・鉄道運行・配送スケジュールの問題解決に向けたソリューションの開発・提供です。
・Siemens Healthineers(シーメンス・ヘルスケア)
ヘルスケア事業は医療の電子化・デジタル化をけん引しており、医療従事者を支えるソリューションを開発しています。
シーメンス(Siemens)の経営状況
シーメンスの経営状況を売上高・純利益の推移から考察します。売上高・純利益の推移は以下のとおりです。
参考:シーメンス「Annual Reports」
シーメンスの2023年の売上高は777億ユーロ(約11.6兆円)で、3年連続で上昇しました。新型コロナが流行した2020年に売上高が大きく落ち込んだものの、順調に回復しているといえるでしょう。また、純利益は、2019年の56億ユーロから約1.5倍の85億ユーロ(1兆2,750億円)にまで拡大しています。※1ユーロ=150円換算
地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。
参考:シーメンス「Annual Reports」
またシーメンスの売上高の割合を国別でみると、アメリカが184億ユーロ、ドイツが127億ユーロ、中国が93億ユーロとなっています。
シーメンス(Siemens)の事業別売上高の推移
シーメンスは4つの事業があり、2023年の事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。
参考:シーメンス「Annual Reports」
グラフより、各事業がバランスよく全体の売上に貢献しているのがわかります。
この章では各事業の状況をさらに掘り下げるために、売上高の推移を紹介します。
デジタルインダストリーズ
シーメンスのデジタルインダストリーズは、顧客のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させることを目的とした事業です。DXによる自動化やデジタル化を支援することで、顧客の生産性の向上に貢献しています。
デジタルインダストリーズの売上高の推移は以下のとおりです。
参考:シーメンス「Annual Reports」
2020年から3年連続で売上高が上昇しており、好調を維持している事業といえます。世界中の機械のうち、シーメンスの制御により稼働している機械は約3割に達しています。
スマートインフラストラクチャー
スマートインフラストラクチャーは、リアルとデジタルを組み合わせることで、エネルギーの効率の向上を実現するインフラ整備事業です。スマートインフラストラクチャーの売上高の推移は以下のとおりです。
参考:シーメンス「Annual Reports」
2023年はスマートグリッド市場が成長したことで、前年比14.9%増を達成しました。ただし、2024年度は全体的に伸びるものの、成長速度が鈍化すると予想されています。
モビリティ
モビリティの売上高の推移は以下のとおりです。
参考:シーメンス「Annual Reports」
2023年、モビリティ事業ではインド・エジプト・ドイツで大型受注があったため、前年よりも大きく成長しました。2024年も成長が期待されている分野です。
Siemens Healthineers
Siemens Healthineers(ヘルスケア事業)では、主に医療従事者を支える製品やサービスを提供しています。Siemens Healthineersの売上高の推移は以下のとおりです。
参考:シーメンス「Annual Reports」
2023年は前年より売上が減ったものの、好調を維持しています。シーメンスでは、今後も緩やかに成長を続けると見込んでいます。
シーメンス(Siemens)の成長戦略
シーメンスは純利益が増加傾向にあるグローバル企業です。その成長のカギは、シーメンスが取り組むべき課題解決に関係する5つのメガトレンドにあります。
- 気候変動
- グローカリゼーション
- デジタル化
- 人口構成の変化
- 都市化
グローカリゼーションとは、グローバリゼーション(世界的な)とローカリゼーション(地域的な)を組み合わせた造語です。世界的な視点で物事を考え、地域密着の活動をすることを意味します。
これらの5つのメガトレンドによる課題を解決するために、シーメンスは以下の4つの戦略的プライオリティ(優先度)を掲げています。
- 顧客に貢献
- 技術に注力
- 権限移譲
- 成長志向
これら4つの戦略的プライオリティを核として、リアルとデジタルの融合により課題解決を目指しているのがシーメンスなのです。
シーメンスの次の成長産業にも注目してみよう
シーメンスは「TRANSFORMING THE EVERYDAY(技術で日常を変革する)」を合言葉に、社会に貢献する技術革新で成長を続けてきた企業です。また日本とも関係の深い企業で、130年以上前に事務所を開設しています。
シーメンスが次の成長産業として捉えているのは、「電気自動車」「屋内農業」「バッテリ製造」です。今後はこれらの事業の動向についても注目してみましょう。