FANUCは何の会社?会社概要・事業内容・経営状況を解説

FANUC(ファナック)は、産業用ロボットや工作機械用制御装置で世界1位のシェアを誇る企業です。世界に270以上の拠点をもち、100カ国以上で製品・サービスを展開しています。 

本記事では「FANUCとはどんな会社なの?」と思っている方に向けて、会社概要・経営状況・成長戦略をわかりやすく解説します。 

FANUC(ファナック)とは 

出典:FANUC 

FANUCとは、工場の設備に特化した産業用ロボット企業です。この章では、会社概要・経営理念・事業内容を紹介します。 

会社概要 

FANUCの会社概要は以下のとおりです。 

会社名 ファナック株式会社 
設立 1972年 
本社 山梨県 
従業員数 9,432人(2023年) 
拠点数 270拠点以上 
売上高 8,520億円(2023年) 

FANUCの歴史の始まりは、1955年の富士通信機器製造株式会社(現在の富士通株式会社)において、コントロールのプロジェクトチームが発足されたことです。 

その後、1956年に日本で民間初のNC(数値制御装置)の開発に成功しました。1972年には富士通株式会社から分離・独立し、2016年にはCNC(コンピュータ数値制御装置)を360万台出荷、2017年にはロボットを累計150万台出荷しました。 

また、NCの開発・販売だけではなく、24時間体制の保守サービスを行っています。 

基本理念・経営方針 

FANUCの基本理念は、「厳密」と「透明」の考え方が柱です。 

厳密:企業の永続性、健全性は厳密から生まれる 

透明:組織の腐敗、企業の衰退は不透明から始まる 

これらの基本理念に加えて、3つのキーワードを重視しているのがFANUCの特徴です。 

  • one FANUC 

one FANUCを合言葉に、FA・ロボット・ロボマシンが一体となったソリューションを提供しています。 

  • 壊れない、壊れる前に知らせる、壊れてもすぐ直せる 

工場のダウンタイム(製造が停止している時間)を最小にして稼働率を高めるために、商品開発で重要視しているキーワードです。 

  • サービスファースト 

世界中で保守サービスを提供することや、顧客が利用し続ける限り保守をする「生涯保守」を掲げています。 

FANUCは3つのキーワードを重視し、世界中の工場の稼働率を高めることを目指しています。 

主力製品 

FANACには、FA・ロボット・ロボマシンの3つの事業があり、それぞれの主力製品は以下のとおりです。 

  • FA 

FAの主力製品は、CNCや数値と位置を制御するサーボ、溶接や切断のためのレーザ発振器です。工場の自動化を実現するための基本的な商品を扱っています。 

  • ロボット 

産業用ロボットを開発している事業です。CNCとサーボの基本技術を応用し、ロボットのアームを制御することで、さまざまな作業の自動化を実現しています。 

  • ロボマシン 

ロボマシンの主力製品は、小型切削加工機や電動射出成型機、ワイヤ放電加工機です。 

FANUCの経営状況 

FANUCの経営状況を売上高・営業利益の推移から考察します。売上高・営業利益の推移は以下のとおりです。 

参考:FANUC「統合報告書」 

FANUCの売上高は2020年に一度大きく減少したものの、その後は回復を続け、2023年に過去最高を更新しました。過去最高を更新した大きな要因は、自動車関連をはじめ、製造業の全般で設備投資が活発に行われたためです。 

また2023年は半導体の部品不足、原材料価格の高騰、急激な為替変動などの影響がありました。そのようななか、売上高の記録を更新したことから、FANUCの経営は安定しているといえます。なお、2023年の営業利益は1,914億円で前年と同水準を維持しました。 

地域別の売上高の推移は以下のとおりです。 

参考:FANUC「統合報告書」 

FANUCの海外売上比率は85.3%で、米州・欧州・アジアの主要3地域への展開に成功しています。とくに中国の割合が大きく、2023年の中国における売上高は2,456億円でした。 

FANUCの事業別売上高の推移 

2023年に過去最高の売上高を達成した背景を事業別に考察します。まず、FANUCの事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。 

参考:FANUC「統合報告書」 

ここでは、全体の86.8%を占めるFA・ロボット・ロボマシンの売上高の推移を紹介します。なお、サービス事業は製品の保守サービスです。2023年のサービス事業の売上高は1,121億円でした。 

FA 

FA事業の強みは、シンプルな機能の工作機械から複雑な加工機まで、顧客のニーズや需要に合わせて対応できることです。CNCとサーボを組み合わせることで、複雑な形状の加工や異なる製品を効率よく生産できるためです。これらの強みを生かしたFANUCのCNCは、世界でトップシェアを獲得しています。 

FAの売上高の推移は以下のとおりです。 

参考:FANUC「統合報告書」 

2023年の売上高は2,501億円で、前年比10%増を達成しました。増加の要因は、工作機械業界の需要の高まりによるCNCシステムの売上の増加です。 

FANUCのFA事業では、顧客からの自動化や省人化の要望に対応するために研究・開発を進めています。また、高い性能を維持したまま、省エネルギー化も目指しており、顧客の消費電力の削減にも貢献しています。 

ROBOT(ロボット) 

ロボット事業は、産業用ロボットを展開している事業です。産業用ロボットにより、工場の自動化・ロボット化だけではなく、生産性の向上に貢献しています。FANUCの産業用ロボットは、自動車・電子部品・物流・食品・医療などの多様な産業で活用されています。 

ロボット事業の売上高の推移は以下のとおりです。 

参考:FANUC「統合報告書」 

2023年の売上高は3,500億円を超え、前年比で約33%の増加を達成しました。背景は、中国における電気自動車・物流・再生可能エネルギー関連の産業を中心に需要が拡大したためです。アメリカにおいても電気自動車関連の需要が好調で、売上の増加を後押ししました。 

これほどFANUCのロボットが選ばれる理由の1つは、使いやすさを追求しているためです。手作業の自動化やわかりやすい操作方法、工作機械との簡単な接続といった特徴があります。また、3K(きつい・汚い・危険)作業をロボットにより自動化することで、働きやすい職場環境の実現にも貢献しています。 

ROBOMACHINE(ロボマシン) 

ロボマシン事業の主力製品の電動射出成型機や小型切削加工機は、世界トップシェアを誇っています。そのロボマシン事業の売上高の推移は以下のとおりです。 

参考:FANUC「統合報告書」 

他の2事業が大きく売上を伸ばしているなか、2023年のロボマシン事業は横ばいでした。主な要因は、パソコンやタブレット、スマートフォンの需要が減少したためです。また、電動射出成型機はIT関連や医療産業向けの需要が増加し、前年と同水準を維持しています。 

FANUCの成長戦略 

FANUCは最新の自社工場で、自動化による長時間の連続無人運転を実現し、ロボットやロボマシンの生産性を高めました。このような自動化は、顧客の生産工場においてもニーズがあります。しかし、生産ラインの自動化は工場内のレイアウトの大きな変更や高いコストが課題です。 

そこで、FANUCはロボットによる自動化とともに、協働ロボットの開発・展開に注力しています。 

協働ロボットとは、人と協働作業する自動化システムです。ロボットによる自動化と比較して、低コストで導入できることや工場内のレイアウトを大きく変更する必要がないのが特徴です。また今まで、人が行っていた作業を協働ロボットに置き換えることもできます。 

つまり、工場の自動化・ロボット化のニーズに合わせて製品を展開しているのがFANUCの成長戦略です。 

省人化ニーズを協働ロボットで満たすFANUC 

先進国では慢性的な人手不足を背景に、省人化のニーズが高まっています。それに合わせてFANUCは協働ロボットを展開することで、工場の自動化やロボット化の実現に貢献しています。 

このように、FANUCはニーズを的確につかむことで成功した企業です。経営戦略や基本理念などの経営手法は他産業においても参考となるでしょう。 

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