ポスコ・ホールディングスは、鉄鋼製品を製造・販売する大手鉄鋼メーカーです。鉄鋼以外にも水素や二次電池材料、エネルギー、インフラなどの事業を展開しています。本記事では、ポスコ・ホールディングスの会社概要や業績を紹介します。
ポスコ・ホールディングスとはどんな会社?
出展:ポスコ・ホールディングス
ポスコ・ホールディングスは、韓国に本社を置く大手鉄鋼メーカーです。同社の鉄鋼製品は、主にアジアで利用されています。ここでは、ポスコ・ホールディングスの会社概要や歴史、事業内容を詳しく解説します。
会社概要
ポスコ・ホールディングスの会社概要は以下のとおりです。
会社名 | POSCO Holdings Inc. |
本社 | 韓国 |
設立 | 1968年 |
従業員数 | 44,501人(2023年12月31日時点) |
売上高 | 77兆1,270億ウォン |
なお、Reinforz Insightの「2023年最新版:世界の鉄鋼会社ランキング時価総額TOP76」によると、同社は2023年の鉄鋼メーカーの中で時価総額が世界1位でした。
歴史
1965年、韓国は日韓基本条約により日本から5億ドルの資金を得ました。その資金をもとに、1968年に設立したのが前身企業の浦項製鉄会社です。その後の流れは以下のとおりです。
1969年:韓国政府は同社の生産能力目標を103万トンに設定
1974年:鉄鋼輸出額1億ドル、売上高1,000億ウォンを突破
1989年:累計粗鋼生産量が1億トンに到達
2000年:日本製鉄と戦略的提携を締結
2002年:社名をポスコ(POSCO)に変更
2009年:メキシコに海外初の自動車用鋼板工場を建設
2019年:累計鉄鋼生産量が10億トンに到達
2022年:持株会社のポスコ・ホールディングスを設立
同社は、グローバル鉄鋼専門分析機関のWorld Steel Dynamicsから、「世界で最も競争力のある鉄鋼会社」に14年連続で1位に選ばれました。
事業内容
ポスコ・ホールディングスは、以下の7つの分野で事業を展開しています。
・鉄鋼(鉄鋼事業)
世界の13カ国で鉄鋼製品を生産しています。全世界の粗鋼生産量は3,864万トンです。
・建設/インフラ(グリーンインフラ事業)
産業発展のためのインフラ整備に携わっています。例えば、ブラジルの製鉄工場やパナマのガス発電所などです。
・二次電池材料(グリーンマテリアル事業)
二次電池材料の原材料や中間材料の調達能力を生かし、充電式電池に必要な正極活物質と負極活物質を生産しています。※正極活物質は正極に使われる物質で、負極活物質は負極に使われる物質です。
・リチウム/ニッケル(グリーンマテリアル事業)
リチウムやニッケルを生産しています。2026年までにリチウムの年間生産能力を96,000トン、ニッケルの年間生産能力を48,000トンに拡大する予定です。
・水素(グリーンマテリアル事業)
グリーン水素の製造やアンモニアへの変換、アンモニア分解などをしています。2050年までの目標は、年間700万トンの水素を生産することです。
・エネルギー(グリーンマテリアル事業)
ガス田の開発や生産、LNG事業などを展開しています。
・食品(その他事業)
トウモロコシや小麦、大豆などの農作物を販売しています。
ポスコ・ホールディングスの経営状況
ポスコ・ホールディングスの経営状況として、直近6年間の売上高と営業利益の推移を紹介します。
参考:ポスコ・ホールディングス「Business Report」
2023年の売上高は77兆1,270億ウォン(8兆4,839億円)で、2022年の84兆7,500億ウォン(9兆3,225億円)から7兆6,230億ウォン(8,385億円)減少しました。2023年の営業利益は3兆5,310億ウォン(3,884億円)で、2022年の4兆8,500億ウォン(5,335億円)から1兆3,190億ウォン(1,450億円)減少しました。※1ウォン=0.11円換算
また、地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。
参考:ポスコ・ホールディングス「Business Report」
韓国・中国・日本を含めると、アジアで全体の売上高の91.1%を占めています。
ポスコ・ホールディングスの事業別売上高の推移
ポスコ・ホールディングスの経営状況を事業別の売上高から深掘りします。事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。
参考:ポスコ・ホールディングス「Business Report」
グラフから同社の主要事業は、鉄鋼事業とグリーンインフラ事業です。ここではさらに各事業の売上高と営業利益の推移を紹介します。※事業再編を行っているため、直近3年分のみです。
鉄鋼事業
鉄鋼事業は鉄鋼製品の製造・販売を担う事業です。鉄鋼事業の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:ポスコ・ホールディングス「Business Report」
2023年の売上高は63兆5,390億ウォン(6兆9,892億円)で、2022年の70兆6,500億ウォン(7兆7,715億円)から7兆1,110億ウォン(7,822億円)減少しました。2023年の営業利益は2兆5,570億ウォン(2,812億円)で、2022年の3兆2,460億ウォン(3,559億円)から6,790億ウォン(746億円)の減少でした。
売上高と営業利益が減少した主な要因として、中国の生産能力の過剰が挙げられます。中国の過剰な生産能力により、世界の鉄鋼製品の価格が低下しているためです。この傾向は続くと予想されています。
グリーンインフラ事業
グリーンインフラ事業は、天然資源の開発や発電、建設、インフラを担う事業です。売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:ポスコ・ホールディングス「Business Report」
2023年の売上高は57兆1,570億ウォン(6兆2,872億円)で、2022年の65兆9,010億ウォン(7兆2,491億円)から8兆7,440億ウォン(9,618億円)減少しました。2023年の営業利益は1兆5,330億ウォン(1,686億円)で、2022年の1兆5,440億ウォン(1,698億円)とほぼ同水準でした。売上高が減少した要因として、韓国国内の競争の激化が挙げられます。
グリーンマテリアル事業
グリーンマテリアル事業は、二次電池材料やリチウム、ニッケル、エネルギーを担う事業です。売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:ポスコ・ホールディングス「Business Report」
2023年の売上高は4兆8,220億ウォン(5,304億円)で、2022年の3兆3,890億ウォン(3,727億円)から1兆4,330億ウォン(1576億円)増加しました。一方、2023年の営業利益は1,610億ウォン(177億円)の赤字で、2022年の1,440億ウォン(158億円)の黒字から一転しました。なお、2023年に営業利益が赤字に陥った要因は、同社が公表していないため不明です。
ポスコ・ホールディングスの新経営ビジョン
ポスコ・ホールディングスの新たな経営ビジョンは、「未来を開く素材、超一流に向けた革新」です。具体的には、以下の3つの戦略を柱に掲げています。
- 未来のテクノロジーに基づいて、卓越したリーダーシップを実現する
- ダイナミックな企業文化を育み、共に成長する
- 持続可能なESG経営体制を強化する
※ESG経営とは、環境・社会・ガバナンスを重視した経営方法です。
鉄鋼業界の動向を注視しよう
ポスコ・ホールディングスは韓国に本社を置く、世界有数の鉄鋼メーカーです。「世界で最も競争力のある鉄鋼会社」に14年連続で1位を獲得するなど、鉄鋼業界に大きな影響力を持っています。
鉄鋼業界では、日本製鉄株式会社がUSスチールを買収する計画を発表するなど、業界再編の動きが活発化しています。鉄鋼業界全体に影響する可能性があるため、ポスコ・ホールディングスの動向も注視しましょう。