アメリカのバイデン氏は、2024年のアメリカ大統領選挙から撤退することを表明し、民主党の大統領候補者の後継者にカマラ・ハリス氏を指名しました。
カマラ・ハリス氏は、アメリカ初の女性副大統領です。
現地の報道によると、共和党のトランプ氏よりも優勢とみられており、注目度が高まっています。
そこで、本記事ではカマラ・ハリス氏の経歴、政策についてわかりやすく解説します。
カマラ・ハリス氏の経歴
まずは、カマラ・ハリス氏が政治家になる前の経歴について簡単に紹介します。
生い立ち
カマラ・ハリス氏は、カリフォルニア州西部のオークランド生まれの59歳です。ジャマイカ出身の父親とインド出身の母親から生まれました。両親は7歳のときに離婚しており、以降は母親に育てられました。そして、10代でカナダのモントリオールに移住しています。
学歴
カマラ・ハリス氏が進学した大学は、ワシントンD.C.のハワード大学です。ハワード大学は全米最高峰の歴史的黒人大学です。同氏はハワード大学において政治学と経済学を専攻しました。※歴史的黒人大学とは、アフリカ系アメリカ人学生の教育を目的とした高等教育機関の総称です。ただし、ハワード大学は白人系やアジア系の学生も入学できます。
同氏はハワード大学を卒業後、カリフォルニア州の法科大学院に進学し、1989年に法務博士号を取得しました。
検察官としてのキャリア
カマラ・ハリス氏は、1990年にカリフォルニア州の司法試験に合格し、地方検事補としてキャリアをスタートさせます。
2004年からサンフランシスコ地方検事に就任し、2011年からはカリフォルニア州の司法長官を務めました。いずれも黒人女性として初めてのことでした。
同氏は検察官のキャリアの中で、薬物犯罪で逮捕された若者の構成プログラムの構築などに取り組んでいます。
なお、カマラ・ハリス氏は2014年に弁護士のダグ・エムホフ氏と結婚し、義理の息子と娘がいます。
政治家としてのキャリア
カマラ・ハリス氏は2016年の上院議員の当選によって、政治家としてのキャリアをスタートさせました。ここでは、上院議員時代・副大統領時代の同氏のキャリアを紹介します。
上院議員時代
上院議員時代は、公聴会の質問の仕方などで好評を得ることで、期待の若手として注目されるようになります。
上院議員としては、現金保釈金制度改革、飢餓対策、家賃救済、妊産婦健康促進に関する法律を支持しています。また、自ら主導した超党派の反リンチ法案は、2018年に上院で可決されています。他にも歴史的黒人大学の保全を目指す法律や、低所得地域へ必要資金を投入する取り組みに関する法律の成立に重要な役割を果たしました。
副大統領時代
カマラ・ハリス氏がアメリカ初の女性副大統領になった経緯は、2020年の前回のアメリカ大統領選挙で、大統領候補者に立候補したことが始まりです。当初は、大統領候補者に指名されることを目指していましたが、支持が伸び悩み資金も底を突いたことから撤退しました。
撤退後、バイデン氏が大統領候補者に指名されるとバイデン支持を表明します。その後、バイデン氏から副大統領候補に指名されたことで、2020年のアメリカ大統領選挙でバイデン氏とともに戦うことになりました。なお、2020年11月3日に行われた前回のアメリカ大統領選挙は、バイデン氏が勝利して現在に至っています。
カマラ・ハリス氏の副大統領時代の主な活動は、2022年の米連邦最高裁が人工妊娠中絶禁止を容認する判断を下したのに対して、全米各地で人工妊娠中絶の権利擁護を訴えてきたことです。
カマラ・ハリス氏の政策
カマラ・ハリス氏が大統領候補に指名されたことで、注目されているのが同氏の政策です。ここでは、注目度の高い人工妊娠中絶問題・移民問題・対中政策について紹介します。
人工妊娠中絶問題
2024年のアメリカ大統領選挙における大きな争点は、人工妊娠中絶問題です。
事の発端は、2022年に米連邦最高裁が「ロー対ウェイド裁判」を覆したことです。「ロー対ウェイド裁判」は、1973年に連邦最高裁が「人工妊娠中絶は憲法で認められた女性の権利」という判断を下したものです。以後、約50年にわたり認められていた権利ですが、2022年の米連邦最高裁の判決により、禁止するかどうかは各州の判断に委ねられることになりました。
アメリカでは、人工妊娠中絶擁護派をプロ・チョイスと呼び、人工妊娠中絶反対派をプロ・ライフと呼びます。プロ・チョイスは女性の選択に委ねるべきと考える一方で、プロ・ライフは胎児の権利を重視する考え方です。
カマラ・ハリス氏は人工妊娠中絶問題に対しては、女性の権利を擁護する姿勢をとっています。一方、トランプ氏はプロ・ライフとして知られているため、アメリカ大統領の選挙結果によっては政策が大きく変わる可能性があります。
移民問題
2024年のアメリカ大統領選挙における争点の1つは、移民問題です。
トランプ氏は大統領時代にメキシコ国境に壁を建設するなど、不法移民対策を強力に進めてきました。一方、バイデン氏は壁の建設を中止し、寛容な政策をとっています。
その結果、2023年には不法移民の数は240万人を超えました。この数は名古屋市の人口よりも多く、1年で都市1つ分以上の人口が流入していることになります。
アメリカではこれほどの不法移民が流入することで、経済的な負担の増加や治安悪化の懸念が高まっている状態です。しかし、カマラ・ハリス氏はバイデン政権下で移民・国境政策を担当しているものの、十分な対策をしていないとして非難を浴びています。
対中政策
世界経済への影響があるとして注目されているのは、カマラ・ハリス氏の対中政策の考え方です。
トランプ氏とバイデン氏はどちらも強硬な対中姿勢を示しているだけに、対中関係が修復されるのか、あるいは今の冷え込んだ状態が続くのかに注目が集まっています。しかし、カマラ・ハリス氏は対中政策について公表しておらず、今のところバイデン氏の政策を引き継ぐものとみられています。
ただし、カマラ・ハリス氏が副大統領候補に指名したティム・ウォルツ氏は、中国で教師経験があるなど、中国との関係が深い人物です。そのため、対中政策の方向性が変更される可能性もあるでしょう。
11月5日のアメリカ大統領選挙に注目しよう
カマラ・ハリス氏は、アメリカ初の女性副大統領です。そして、バイデン氏が2024年のアメリカ大統領選挙から撤退し、民主党の大統領候補者に指名されたことで注目を集めています。
黒人であり、移民の2世であり、女性でもあるカマラ・ハリス氏は、多様性の象徴として支持が広がっています。もし、2024年のアメリカ大統領選挙で当選すれば、同国で初の女性大統領の誕生です。
ただし、カマラ・ハリス氏が大統領候補者に指名されてからまだ間もないことから、政策に不明な部分が多く日本にどのような影響があるかは不明です。そのため、今後、発表するとみられる政策内容についてはチェックしていく必要があります。
また、2024年11月5日のアメリカ大統領選挙において、トランプ氏とカマラ・ハリス氏のどちらが勝利するかは、世界経済にも大きな影響があります。選挙結果にも注目してみましょう。