大塚ホールディングス株式会社(以降は、「大塚ホールディングス」と言います。)は、医療や健康食品の分野で世界的に活躍する企業です。
Reinforz Insightの「2023年最新版:世界の健康食品会社ランキング時価総額TOP97」によると、同社は健康食品会社の中で時価総額世界1位を獲得しています。
今回は海外進出の成功事例として、大塚ホールディングスの会社概要や業績、中期経営計画について紹介します。
大塚ホールディングスとはどんな会社
出典:大塚ホールディングス
大塚ホールディングスは大塚グループの持ち株会社です。大塚グループは、医薬品や健康食品を開発・製造・販売している大塚製薬株式会社、ボンカレーでお馴染みの大塚食品株式会社などで構成されています。ここでは、同社の会社概要・歴史・事業内容を紹介します。
会社概要
大塚ホールディングスの会社概要は以下のとおりです。
会社名 | 大塚ホールディングス株式会社 |
本社 | 東京都 |
設立 | 2008年 |
グループ会社 | 国内:34社 海外:134社 |
連結従業員数 | 34,388人(2023年12月末時点) |
拠点 | 研究所:34拠点(海外15拠点) 工場:97拠点(海外55拠点) |
売上収益 | 2兆186億円(2023年度) |
歴史
大塚ホールディングスは2008年に、大塚製薬株式会社、株式会社大塚製薬工場、大鵬薬品工業株式会社、大塚倉庫株式会社、大塚化学株式会社を子会社とする持ち株会社として設立されました。
そして、大塚グループの始まりは、1921年に化学原料メーカーとして設立された大塚製薬工業部(現在の株式会社大塚製薬工場)です。以降、グループ企業が続々とヒット商品を生み出しています。大塚グループのヒット商品の一例は、以下のとおりです。
1953年:オロナイン軟膏
1965年:オロナミンC
1968年:ボンカレー
1973年:ごきぶりホイホイ
1974年:抗がん剤フトラフール
1980年:ポカリスエット
1983年:カロリーメイト
大塚グループは、1970年代半ばにイタリアへ進出してヨーロッパ事業の足がかりを作りました。1973年にはタイで現地資本との合弁会社を設立し、1985年にはアメリカへ進出しました。
その後も海外進出を積極的に行い、現在では海外に134社を持つグループに成長しています。
事業内容
大塚ホールディングスは4つの事業を展開しています。各事業の内容は以下のとおりです。
・医療関連事業
「精神・神経領域」「がん・がんサポーティブケア領域」「循環器・腎領域」の治療薬や医療機器、診断薬、臨床栄養製品を開発・製造しています。※がんサポーティブケアとは、がん患者や家族をサポートするための医療のこと。
・ニュートラシューティカルズ関連事業
機能性飲料・機能性食品、健粧品、一般用医薬品・医薬部外品を製造・開発している事業です。※健粧品とは、化粧品と医薬品を組み合わせた製品のこと。
・消費者関連事業
飲料や食品、酒類を開発・販売しています。主要製品はボンカレー、マンナンヒカリ、ポカリスエット、カロリーメイト、SOYJOYです。
・その他の事業
機能化学品、ファインケミカル、倉庫・運送、包装、電子機器を担う事業です。
大塚ホールディングスの経営状況
大塚ホールディングスの経営状況として、直近6年間の売上収益と営業利益の推移を紹介します。
参考:大塚ホールディングス「決算関連資料」
2023年度の売上収益は2兆186億円で、2022年度の1兆7,380億円と比較すると2,806億円の増加でした。売上収益が右肩上がりに上昇する一方、2023年度の営業利益は1,396億円で、2022年度の1,503億円から減少しました。
営業利益が減少した要因は、AVP-786などの影響で減損損失1,724億円を計上したためです。AVP-786は、アルツハイマー型認知症に伴うアジテーション症状(攻撃的な行動や発言など)の治療薬として開発していた化合物です。しかし、アメリカのフェーズ3の臨床試験で統計学的有意差を証明できませんでした。
また、地域別の売上収益の構成割合は以下のとおりです。
参考:大塚ホールディングス「大塚グループ At a Glance」
大塚ホールディングスは北米市場での売上収益が最も多く、次いで日本市場です。なお、同社の2023年度の海外売上比率は66.8%でした。
大塚ホールディングスの事業別売上収益の推移
大塚ホールディングスの経営状況を事業別の売上収益から深掘りします。まず、事業別の売上収益の構成割合は以下のとおりです。
参考:大塚ホールディングス「大塚グループ At a Glance」
医療関連事業とニュートラシューティカルズ関連事業の2事業で、全体の91.5%を占めています。2事業は医薬品に関連した事業であることから、同社の主要事業は医薬品の製造・開発です。
次に、各事業の売上収益と営業利益の推移を紹介します。
医療関連事業
医療関連事業の売上収益と営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:大塚ホールディングス「決算関連資料」
2023年度の売上収益は1兆3,644億円で、2022年度の1兆1,379億円から2,265億円の増加でした。営業利益も同様に、2023年度は1,407億円で、2022年度の1,231億円から増加しています。好調を維持した要因は、グローバル4製品の売上収益が拡大したためです。
●グローバル4製品
- エビリファイメンテナ(抗精神病薬)
- レキサルティ(統合失調症の治療薬)
- サムスカ/ジンアーク(水利尿剤)
- ロンサーフ(経口ヌクレオシド系抗悪性腫瘍剤)
ニュートラシューティカルズ関連事業
ニュートラシューティカルズ関連事業の売上収益と営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:大塚ホールディングス「決算関連資料」
2023年度の売上収益は4,835億円で、2022年度の4,370億円から465億円の増加でした。増加した要因は、機能性飲料とサプリメントが売上を拡大したためです。ただし、2023年度の営業利益は336億円で、2022年度の563億円から急激に減少しています。
消費者関連事業
消費者関連事業の売上収益と営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:大塚ホールディングス「決算関連資料」
2023年度の売上収益は371億円で、2022年度の359億円から12億円増加しました。そして、2023年度の営業利益は119億円で、2022年度の69億円から急拡大しました。消費者関連事業は全体に占める割合が少ないものの、好調を維持している事業と言えます。
その他の事業
その他の事業の売上収益と営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:大塚ホールディングス「決算関連資料」
2023年度の売上収益は1,764億円で、2022年度の1,692億円から72億円の増加でした。しかし、2023年度の営業利益は39億円で、2022年度の119億円から大幅に減少しました。
大塚ホールディングスの中期経営計画
大塚ホールディングスは、2024年6月に5年間の第4次中期経営計画を策定しています。ここでは同社の成長戦略として、中期経営計画の業績目標と事業戦略を紹介します。
●業績目標
- 売上収益は、新薬及びニュートラシューティカルズ関連事業の成長により、2028年に2兆5,000億円を達成する。
- 主力製品の特許切れの影響を短期にとどめ、再び事業利益成長率2桁を達成する。
●事業戦略
- 開発後期の新薬候補群から上市を実現する。
- 研究開発投資は3,000億円規模の水準を継続する。
- 医療関連事業・ニュートラシューティカルズ関連事業において、新製品・新サービスによる事業拡大を実現する。
- 経営計画実現後に、利益の規模と質を大きく向上させる。
●財務戦略
- 資本コストを意識した経営を実施する。
つまり、主力製品の特許切れに備えて、新薬開発により新たな成長を目指しているのが同社の経営戦略です。
参考:大塚ホールディングス「中期経営計画」
大塚ホールディングスを参考に海外進出しよう
大塚ホールディングスは海外売上比率が66.2%で、世界進出に成功した日本企業の1つです。医薬品を始め、健康食品や機能性飲料など、幅広い商品を取り扱っているのが特徴です。日本市場で伸び悩んでいる企業は、同社を参考に海外進出を検討してみてはいかがでしょうか。