ファーガソン(Ferguson plc)の会社概要・業績・成長戦略を解説 

ファーガソン(Ferguson plc)は、住宅・配管・商業施設・空調設備・水道設備などの機器の卸売企業です。 

同社はオーストラリアで設立した企業ですが、現在はアメリカとカナダで事業を展開しています。設立当初の早い段階から海外進出を重視し、他企業を買収することでアメリカへの進出を果たしました。 

本記事では海外進出している経営者様に向けて、ファーガソンの会社概要や業績、成長戦略について解説します。 

ファーガソンとはどんな会社? 

出典:ファーガソン 

ファーガソンとはアメリカに本社を置く卸売企業です。約36,000社の製品を取り扱っており、アメリカとカナダの顧客に販売しています。この章では、ファーガソンの会社概要や歴史、企業理念を紹介します。 

会社概要 

ファーガソンの会社概要は以下のとおりです。 

​​会​社名 Ferguson plc 
本社 アメリカ 
設立 1887年 
従業員数 約35,000人(2023年) 
進出地域 アメリカ・カナダ 
拠点数 合計:1,762拠点(2023年) アメリカ:1,549拠点 カナダ:213拠点 
従業員数 合計:約35,000人(2023年) アメリカ:約32,000人 カナダ:約3000人 
売上高 297億ドル(2023年) 
仕入先 約36,000社(2023年) 
取扱製品 住宅・配管・商業施設・空調設備・水道設備などの関連機器 

歴史 

ファーガソンの歴史の始まりは、1887年に発明家のフレデリック・ウーズレーが、オーストラリアで羊毛刈機の製造・販売を目的としたウーズレー羊毛刈取機械会社を設立したことです。 

1889年になるとイギリスに移転し、1896年には自動車の製造を開始しました。その後、自動車部門を売却し、農業機械と電気柵を中心に製造していました。 

1960年以降は、企業の買収により新規事業への参入や海外進出を実現します。買収した企業例は以下のとおりです。 

1960年:ニューウェイ・ヒーティングを買収 

1965年:グランビル・コントロールズ&ヨークシャー・ヒーティング・サプライズを買収し、配管・暖房配水器具メーカーとして成長 

1982年:ファーガソン・エンタープライゼスを買収し、アメリカに進出 

2012年:住宅と商業用配管業者のデイビス&ウォーショーを買収 

2021年になると、北米地域に注力するためにヨーロッパの事業を売却しました。 

企業理念 

ファーガソンの企業理念は、目的・将来像・価値観で構成されています。この章では、企業理念の各要素について解説します。 

目的(Purpose) 

お客様の複雑なプロジェクトをシンプルにして成功させ、持続可能なものにする支援をします。 

将来像(Vision) 

究極のプロジェクト・サクセス・カンパニーになります。 

※プロジェクト・サクセス・カンパニーは、プロジェクトの成功を支援する企業を意味します。 

価値観(Values 

ファーガソンが重要視する価値観は以下の5つです。 

  • 誠実さ(Integrity) 

公正かつ誠実に行動すること。 

  • チームワーク(Teamwork) 

個性的で情熱的な人々が変化をもたらす力を提供すること。 

  • 安全性(Safety) 

安全第一で業務に取り組むこと。 

  • サービス(Service) 

人間関係を築き、複雑な問題を解決すること。 

  • インパクト(Impact) 

結果を出し、より良い世界の構築に貢献すること。 

ファーガソンの経営状況 

ファーガソンの経営状況として、直近6年間の売上高と営業利益の推移を紹介します。 

参考:ファーガソン「Events, Results and Reports」 

2023年の売上高は297億ドル(4兆4,550億円)で、2022年の285億ドル(4兆2,750億円)から12億ドル(1,800億円)増加しました。一方、2023年の営業利益は26億ドル(3,900億円)で、2022年の28億ドル(4,200億円)から2億ドル(300億円)減少しました。※1ドル=150円換算 

売上高は全体的に増加傾向にあり、2023年と2018年の売上高を比較すると約1.4倍に増加しています。また、2023年に営業利益が減少した理由は、支店閉鎖による減損損失を計上したためです。 

ファーガソンの事業別売上高の推移 

ファーガソンの事業は、アメリカ事業とカナダ事業があります。この章では、ファーガソンの業績を深掘りするために、事業別の売上高に焦点を当てます。事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。 

参考:ファーガソン「Events, Results and Reports」 

アメリカ事業の売上高は全体の95.1%です。このことから、ファーガソンは売上のほとんどをアメリカ国内の販売に頼っていると言えます。 

さらに、各事業の売上高と営業利益の推移を紹介します。 

アメリカ事業 

アメリカ事業は、アメリカ国内に1,549の支店と10の配送センターを運営しており、全50州でサービスを展開しています。アメリカ事業の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。 

参考:ファーガソン「Events, Results and Reports」 

2023年の売上高は282億ドル(4兆2,300億円)で、2022年の270億ドル(4兆500億円)から12億ドル(1,800億円)増加しました。また、2023年の営業利益は28億9,000万ドル(4,335億円)で、2022年と同水準を維持しました。売上高が増加した要因として、製品の販売価格の上昇が挙げられます。 

また、全体的に売上高と営業利益が増加傾向にあることから、同事業がファーガソンの成長を支えていると言えます。 

カナダ事業 

カナダ事業は、カナダに213の支店と1つの配送センターを運営しています。カナダ事業の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。 

参考:ファーガソン「Events, Results and Reports」 

2023年の売上高は14億4,000万ドル(2,160億円)で、2022年の14億9,000万ドル(2,235億円)から5,000万ドル(75億円)減少しました。2023年の営業利益は7,600万ドル(114億円)で、2022年の1億1,200万ドル(168億円)から3,600億ドル(54億円)減少しました。2023年に売上高と営業利益が減少した要因として、販売量の減少と為替による影響が挙げられます。 

また、全体的に売上高と営業利益が減少傾向であることから、同事業は苦戦していると言えます。 

ファーガソンの成長戦略 

ファーガソンの成長戦略として特徴的なのは、積極的な買収です。2024年は配管・空調設備・水道設備・防火設備などの分野を強化するために、10社を買収しました。また、過去5年間において、50件を超える買収をしています。 

ファーガソンは買収により海外進出を実現 

ファーガソンはオーストラリアで設立された企業で、1889年にイギリスに移転しました。その後、1982年に企業の買収によりアメリカへの進出を果たし今では、アメリカに本社を置き、ヨーロッパ事業を売却してアメリカとカナダの事業に注力しています。 

このようにファーガソンは、企業の買収により事業を拡大し、主要地域も変更してきた歴史があります。海外進出を検討している経営者様は、展開方法の1つとしてファーガソンの手法を参考にしてみてはいかがでしょうか。 

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