アリマンタシォン・クシュタールとはどんな会社?会社概要・業績を解説 

2024年8月19日、株式会社セブン&アイ・ホールディングスはカナダのアリマンタシォン・クシュタールから、買収提案を受けたことを公表しました。そして、2024年9月6日に、「当社の本源的価値およびそれら価値を顕在化する機会を『著しく』過小評価している」として、提案に反対する姿勢を示しました。 

株式会社セブン&アイ・ホールディングスは、セブン-イレブンやイトーヨーカドーを運営する大手企業です。日本の大手企業が買収提案を受けたことから、動向に注目が集まっています。 

本記事では、買収提案をしたアリマンタシォン・クシュタールの会社概要・業績、成長戦略について徹底解説します。 

アリマンタシォン・クシュタールとはどんな会社 

出典:アリマンタシォン・クシュタール 

アリマンタシォン・クシュタールは、コンビニエンスストアとガソリンスタンドを展開している企業です。この章では同社の会社概要や歴史、企業理念、ブランド一覧を紹介します。 

会社概要 

アリマンタシォン・クシュタールの会社概要は以下のとおりです。 

​​会​社名 Alimentation Couche-Tard Inc. 
本社 カナダ 
設立 1980年 
店舗数 合計:16,740店舗 アメリカ:7,131店舗 カナダ:2,142店舗 ヨーロッパ・その他:5,272店舗 国際ライセンス店舗:2,195店舗 
従業員数 149,000人 
売上高 692億ドル(2024年) 
進出地域 31カ国 

※2024年の会計年度の期間は、2023年5月1日から2024年4月28日です。 

歴史 

1980年、創業者のアラン・ブシャール氏がカナダのケベック州でコンビニエンスストアの「クシュタール」をオープンしたことが、アリマンタシォン・クシュタールの歴史の始まりです。ちなみに、アリマンタション・クシュタールの意味は、フランス語で「アリマンタション(食品)・クシュタール(夜更かし)」です。ここで、「なぜカナダの企業なのにフランス語なの?」と思う方もいるでしょう。カナダの公用語は英語とフランス語で、ケベック州はフランス語圏のためと考えられます。 

その後、多くの企業を買収することで、事業を拡大してきました。同社が買収した企業の例は以下のとおりです。 

1994年:マックスミルク社からマックスコンビニエンスストアの一部店舗を買収 

2002年:サラ・リー社からデイリーマートを買収 

2003年:ザ・サークルKを買収 

2015年:パントリーを買収 

2017年:ホリデーステーションストアーズを買収 

そして、2024年に株式会社セブン&アイ・ホールディングスに対して、買収提案を行っています。 

企業理念 

アリマンタシォン・クシュタールの企業理念は、ビジョン、ミッション、価値観に基づいています。 

  • ビジョン 

利便性と機動性で世界から選ばれる目的地になること。 

  • ミッション 

お客さまの毎日を少しでも楽にすること。 

そして、同社が重要視している価値観は以下の4つです。 

  • ワンチーム(One Team) 

同僚がより働きやすくなるよう協力し合うこと。 

  • 正しいことをする(Do the Right Thing) 

正直かつ誠実に行動すること。 

  • 所有権を取得する(Take Ownership) 

ビジネスを自分たちのものとして扱うこと。 

  • 勝つためにプレーする(Play to Win) 

攻めの姿勢で挑戦すること。 

ブランド一覧 

アリマンタシォン・クシュタールは、以下の3つのブランドを運営しています。 

  • クシュタール 

同社のコンビニエンスストアの主力ブランドです。本社のあるカナダのケベック州だけでも、545店舗を出店しています。 

  • サークルK 

サークルKは、2003年に買収したコンビニエンスストアのブランドです。現在では、20カ国以上で約2,200店舗を展開するグローバルブランドに成長しています。日本においても、1979年にユニー株式会社がライセンス契約して展開していたことから、馴染みのあるブランドです。 

  • インゴ 

1978年に創業したブランドで、スウェーデンとデンマークで約500店舗のガソリンスタンドを運営しています。 

アリマンタシォン・クシュタールの経営状況 

アリマンタシォン・クシュタールの経営状況として、直近6年間の売上高と営業利益の推移を紹介します。 

参考:アリマンタシォン・クシュタール「Financial Reporting」 

2024年度の売上高は692億ドル(10兆3,800億円)で、2023年度の718億(10兆7,700億円)ドルから26億ドル(3,900億円)減少しました。2024年度の営業利益は38億ドル(5,700億円)で、2023年度の42億ドル(6,300億円)から4億ドル(600億円)減少しました。2024年度の売上高と営業利益は前年より減少していますが、全体で見ると高い水準を維持しています。※1ドル=150円換算 

また、地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。 

参考:アリマンタシォン・クシュタール「Financial Reporting」 

アメリカの売上高が最も多く、全体の63.4%を占めています。 

アリマンタシォン・クシュタールの事業別売上高の推移 

アリマンタシォン・クシュタールの業績を深掘りするために、この章では事業別の売上高に焦点を当てます。事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。 

参考:アリマンタシォン・クシュタール「Financial Reporting」 

道路輸送用燃料事業は、ガソリンスタンドなどで道路輸送用燃料を販売する事業です。商品とサービス事業は、コンビニエンスストアにおける商品の販売です。売上高は、道路輸送用燃料のほうが多くなっています。さらに、事業別の売上高と純利益の推移を紹介します。 

道路輸送用燃料 

道路輸送用燃料事業の売上高と純利益の推移は以下のとおりです。 

参考:アリマンタシォン・クシュタール「Financial Reporting」 

2024年度の売上高は510億ドル(7兆6,500億円)で、2023年度の534億ドル(8兆100億円)から24億ドル(3,600億円)減少しました。2024年度の純利益は58億ドル(8,700億円)で、2023年度の59億ドル(8,850億円)から1億ドル(150億円)減少しました。全体的に見ると、道路輸送用燃料事業の純利益は増加傾向にあります。 

商品とサービス 

商品とサービス事業の売上高と純利益の推移は以下のとおりです。 

参考:アリマンタシォン・クシュタール「Financial Reporting」 

2023年度の売上高は175億ドル(2兆6,250億円)で、2023年度の172億ドル(2兆5,800億円)から3億ドル(450億円)増加しました。2023年度の純利益は61億ドル(9,150億円)で、2023年度の59億ドルから2億ドル(300億円)増加しました。 

同事業の売上高と純利益は増加傾向にあります。また、2024年度の純利益は道路輸送用燃料事業よりも多くなりました。 

アリマンタシォン・クシュタールの成長戦略 

アリマンタシォン・クシュタールは成長戦略として、「10 For the Win Strategy」を掲げています。同戦略の主な目標は以下のとおりです。 

  • 2028年までにサークルKを500店舗増やすこと。 
  • 2028年までにクシュタールのEBITDAを、2023年の58億ドル(8,700億円)から100億ドル(1兆5,000億円)にすること。 

※EBITDAは、営業利益に減価償却費を加えた指標です。 

買収で事業を拡大するアリマンタシォン・クシュタール 

アリマンタシォン・クシュタールはアメリカやカナダなどで、コンビニエンスストアやガソリンスタンドを運営している企業です。同社は数多くの企業を買収することで、事業を拡大してきました。今回話題になっている株式会社セブン&アイ・ホールディングスの買収提案も、その一環で、食品事業の拡大やアジア地域への進出が目的と言われています。 

海外進出を検討している経営者様は、アリマンタシォン・クシュタールの海外進出のやり方を参考にしてみてはいかがでしょうか。 

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