
ゲンティン・グループは、華人実業家のタン・スリ・リム・ゴー・トン氏が1965年に創設したマレーシアのコングロマリットです。ホテルやリゾートに加えて、テーマパークやカジノなどのレジャー施設を運営しています。本記事ではビジネスパーソンに向けて、ゲンティン・グループの概要や歴史、主要事業について解説します。
ゲンティン・グループとは

出典:ゲンティン・グループ
ゲンティン・グループの中核事業はレジャーとホスピタリティで、世界各地に18,000室以上のホテルやリゾートを展開しています。その他にもプランテーション(アブラヤシ)、電力、石油、ガス、不動産開発などの事業を手掛けています。同グループの概要は以下のとおりです。
グループ名 | Genting Group |
本社 | マレーシア |
設立 | 1965年 |
進出地域 | 9カ国 |
従業員 | 54,000人(2023年度) |
売上高 | 271億マレーシア・リンギット(2023年度) |
歴史
1965年、華人実業家のタン・スリ・リム・ゴー・トン氏がマレーシアの誰もが楽しめる山頂リゾートの建設を目指し、創業したのがゲンティン・グループの始まりです。そして、1971年に最初のホテルを開業しました。1980年代にはプランテーション事業に進出し、リゾート開発を拡大。1990年代には、ホテルやテーマパークの建設を進め、1992年に屋内テーマパーク、1994年に屋外テーマパークを開業しました。
2010年にシンガポール初の統合型リゾート「リゾート・ワールド・セントーサ」を開業。その後は、ニューヨークやバハマ、イギリスなどに事業を拡大し、現在の9カ国に事業を展開するコングロマリットに成長しました。
理念
ゲンティン・グループの理念として、ミッション・ビジョン・バリューを紹介します。
ミッション
- 変化する顧客のニーズに対応し、高品質のサービスを提供する。
- 競争力を高めるために、イノベーションの創出と新技術の導入に尽力する。
- 従業員の成果を正当に評価し、適切な研修とキャリアアップの機会を提供する。
- 株主に対して、公正な利益還元を実現する。
- 責任ある企業市民として、企業統治の強化とともに透明性の向上に努める。
ビジョン
株主価値の向上とともに、中核事業の持続的な成長を長期にわたり維持することに取り組む大手多国籍企業。
バリュー
ゲンティン・グループは、ビジョン・ミッションの実現のために以下の5つの価値観を重視しています。
勤勉
「長期的思考」と「業務上の問題を解決するために迅速な行動を取る」という考え方を組み合わせる。
思いやり
他者の生活をより良くするために惜しみなく行動する。
忠誠心
家族に対する忠誠心と同じくらい、会社や人々に対して忠誠心を持つ。
正直
顧客、パートナー、従業員に対して、誠実で公正、道徳的な態度で接する。
調和
協力して働き、お互いをサポートする。
ゲンティン・グループの経営状況
ゲンティン・グループの経営状況として、同グループの持株会社「ゲンティン・ブルハド」の直近6年間の売上高と当期利益の推移を紹介します。

参考:ゲンティン・ブルハド「ANNUAL REPORTS」
2023年度の売上高は271億マレーシア・リンギット(8,943億円)で、2022年度の224億マレーシア・リンギット(7,392億円)と比較して、47億マレーシア・リンギット(1,551億円)増加しました。また、2023年度の当期利益は23億マレーシア・リンギット(759億円)で、2022年度の0億マレーシア・リンギットから増加しました。売上高と当期利益が増加した要因は、新型コロナウイルス感染症に対する国境管理の緩和によって、レジャー&ホスピタリティ事業が回復したことが挙げられます。※1マレーシア・リンギット=33円換算
同社の地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:ゲンティン・ブルハド「ANNUAL REPORTS」
グラフから、同社の主要地域はシンガポール、マレーシア、アメリカ、バハマと言えます。
ゲンティン・グループの主要事業
ゲンティン・ブルハドの事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:ゲンティン・ブルハド「ANNUAL REPORTS」
グラフより、ゲンティン・グループの主要事業は、「レジャー&ホスピタリティ」「プランテーション」「電力・石油・ガス」の3事業です。各事業の内容について解説します。
レジャー&ホスピタリティ
レジャー&ホスピタリティ事業は、リゾート開発やカジノなどをシンガポールやマレーシア、イギリス、アメリカ、バハマなどに展開している事業です。関連会社に「ゲンティン・マレーシア」、「ゲンティン・シンガポール・リミテッド」があります。
ゲンティン・マレーシア
ゲンティン・マレーシアは、マレーシア、アメリカ、イギリス、バハマでホテルやテーマパークを運営する関連会社です。中でも代表的なレジャー施設は、創業者が山頂リゾートとして開発した「ゲンティン・ハイランド」の中にある「ゲンティン・スカイワールド」です。「ゲンティン・スカイワールド」は、東京ドーム2個分以上(26エーカー)のテーマパークで、様々な乗り物やアトラクションを楽しめます。
ゲンティン・シンガポール・リミテッド
ゲンティン・シンガポール・リミテッドは、オーストラリア、バハマ、マレーシア、フィリピン、シンガポール、イギリスで統合型リゾート開発とカジノ事業を展開している関連会社です。代表的なレジャー施設には、シンガポールのテーマパーク「リゾート・ワールド・セントーサ」があります。また、子会社の「ゲンティン・カジノ」は、イギリスの30カ所以上でカジノを運営しています。
プランテーション
プランテーション事業は、アブラヤシの栽培とパーム油の製油を担う事業です。プランテーション事業を開始した1980年の農地は13,700ヘクタールでしたが、現在はマレーシア・インドネシアの243,300ヘクタールに拡大しています。同事業の特徴は、業界平均を上回る収穫量により、低コスト化を実現している点です。また、マレーシアに7カ所、インドネシアに6カ所の合計13カ所に製油所を所有しており、1時間あたり725トンのパーム油を生産できます。
電力・石油・ガス
電力事業はインドネシア、中国、インドに石炭火力発電所と風力発電所を所有し、発電設備容量は3,548メガワットです。石油事業は、中国の油田で年間140万バレルの石油を生産し、ガス事業はインドネシアのガス油田で天然ガスを生産しています。また、2023年には中国の福建省で太陽光発電所の建設を開始しており、2025年初頭の稼働が予定されています。これにより、100メガワットの発電設備容量が加わる見通しです。さらに、太陽光発電により、年間11万トン相当の二酸化炭素排出量が削減される見込みです。
不動産
不動産事業はマレーシア国内で住宅及び商業用不動産の開発に加えて、プレミアム・アウトレット・センターを2店舗運営している事業です。
観光産業で活躍するゲンティン・グループ
ゲンティン・グループは、創業者がリゾート開発を目的に設立した企業で、現在ではマレーシア、シンガポール、アメリカ、バハマ、イギリスなどで事業を展開しています。とくにマレーシアやシンガポールにおける観光産業への影響力が大きいため、同地域に進出を検討している経営者様は、ゲンティン・グループの動向に注目しましょう。