
Wilmar International Limited(ウィルマーインターナショナル、以下「ウィルマー社」)は、シンガポールに本社を構えるアジア有数の農業関連企業です。パーム油プランテーションの運営、油糧種子の搾油・精製・販売、製粉などを手掛け、垂直統合型のビジネスモデルを展開している点が特徴です。
本記事では、ウィルマー社の会社概要や事業内容、業績をわかりやすく解説します。併せて、海外進出のヒントとなる成長戦略についても紹介します。※2026年4月時点の情報をもとに執筆しています。
ウィルマー社とはどんな会社

出典:Wilmar International Limited
ウィルマー社は、農作物の調達から加工、取引、さらにはブランド製品の販売・流通に至るまでを一貫して手がけることで、コスト削減や安定的な供給体制を実現しています。こうしたビジネスモデルを背景に、2025年にはフォーチュン誌の「フォーチュン・グローバル500」で200位にランクインしました。
また、ウィルマー社はマレーシアの財閥であるクオック・グループの一角を担う企業でもあります。ここからは同社の会社概要や歴史、中核的価値観を紹介します。
会社概要
ウィルマー社の会社概要は次のとおりです。
| 企業名 | Wilmar International Limited |
| 本社 | シンガポール |
| 設立 | 1991年 |
| 生産拠点 | 36カ国に1,000拠点以上 |
| 進出先 | 50カ国・地域 |
| 従業員数 | 約10万人 |
| 売上高 | 704億ドル(2025年度) |
歴史
ウィルマー社は1991年、クオック・クンホン氏とマルトゥア・シトルス氏によって設立されました。クオック・クンホン氏は、クオック・グループの創業者ロバート・クオック氏の甥にあたり、同グループでの経験をもとに独立してウィルマー社を立ち上げました。
創業当初は、シンガポールにおけるパーム油の貿易事業からスタートしましたが、インドネシアにおけるプランテーション開発を皮切りに、原料生産などの上流分野へと進出。さらに、1993年には中国で大型の油脂・穀物加工拠点を建設し、事業基盤を拡大しました。
2007年にはクオック・グループの農業関連事業と統合。これにより、同社はアジア最大級の農業関連企業へと成長しました。現在では、中国・インド・インドネシアを中心に、50カ国・地域で事業を展開しています。
なお、2026年3月31日時点の株主構成は、クオック・グループが34.16%で筆頭株主、次いでクオック・クンホン氏が14.39%となっています。
中核的価値観
ウィルマー社は、企業活動の指針として6つの中核的価値観(コアバリュー)を掲げています。
- 誠実さ:誠実・信頼性・厳格な倫理基準の遵守を重視
- 卓越性:あらゆる業務において高い成果を追求
- 情熱:グローバルな事業成長に対する強い意欲
- 革新:業務プロセスを継続的に改善するための新たな発想と取り組みを重視
- チームワーク:企業目標達成のために協力して取り組む
- 安全性:従業員の健康と安全が最優先
これらは、同社の意思決定や業務のあり方の重要な基準となっています。
ウィルマー社の経営状況
ウィルマー社の直近5年間の売上高と純利益の推移は以下のとおりです。

参考:Wilmar International Limited「ANNUAL REPORT 2025」
ウィルマー社の2025年度の売上高は704億ドル(10兆5,600億円)で、純利益は14億ドル(2,100億円)でした。どちらも前年度から拡大しています。※1ドル=150円換算
2025年度のウィルマー社の業績は、主に小麦粉・米・砂糖の販売量の増加、パーム油の価格上昇に支えられました。特に食品事業では需要の増加を背景に販売数量が伸び、収益を押し上げました。
また、売上高における地域別の構成割合は以下のとおりです。

参考:Wilmar International Limited「ANNUAL REPORT 2025」
中国が49.3%で約半分を占めており、次いで東南アジアが23.9%で、両地域を合わせると全体の72.2%に達します。このことから、ウィルマー社はアジア市場への依存度が高い構造と言えます。
ウィルマー社の主要事業
ウィルマー社の主要事業は、飼料・工業製品事業、食品事業、プランテーション・製糖事業の3つです。それぞれの売上高に占める割合は以下のとおりです。

参考:Wilmar International Limited「ANNUAL REPORT 2025」
各事業の事業内容と特徴について解説します。
飼料・工業製品事業
飼料・工業製品事業は、動物飼料や非食用パーム油、オレオケミカル、バイオディーゼルの加工・販売・流通を担う中核事業です。ウィルマー社は、中国、インド、東南アジア、アフリカ諸国など世界各地に圧搾工場を展開し、グローバルな生産体制を構築しています。その結果、同社は世界最大級のパームバイオディーゼル及びオレオケミカルの生産企業となっています。
オレオケミカルとは、動植物由来の天然油脂を原料とする化学製品の総称です。洗剤や化粧品、工業用原料など幅広い分野に使用されています。特に同社はアジアにおける脂肪酸生産量の約3分の1を占めており、オレオケミカル分野において世界をリードしています。
食品事業
食品事業は、食用油や砂糖、小麦粉、米などの加工・製造・販売を担う事業です。家庭向けのパッケージ品から業務用のバルク品まで幅広い製品を展開しています。
同社は世界最大級の家庭用食用油メーカーです。加えて、小麦粉や米においてもアジアやアフリカを中心に主導的な地位を獲得しています。さらに砂糖分野では、オーストラリアやニュージーランド、インド、サウジアラビアなどで高いシェアを有しています。
世界約50億人に届けられる販売網を構築しているのも同事業の特徴です。
プランテーション・製糖事業
プランテーション・製糖事業は、パーム油やサトウキビの栽培・製糖、複合肥料の生産を担う事業です。
パーム油プランテーションの総面積は2025年末時点で23.4万ヘクタールです。インドネシア・マレーシア・アフリカを中心に展開しています。同事業の特徴は、再植林を進めることで農園の平均樹齢を約14年に維持し、中長期的な生産性の安定化を図っている点です。
製糖事業では、オーストラリアやインド、ミャンマー、中国に製糖工場を運営しています。同社はオーストラリア最大の製糖生産業者で、オーストラリアの製糖生産量の半分以上を占めています。
ウィルマー社の成長戦略
ウィルマー社の成長戦略は、主に次の2点が挙げられます。
① 垂直統合型による競争優位性の確保
同社は、農園での原料生産から加工・製造、ブランド化、販売・流通までを一貫して手がける垂直統合型のビジネスモデルが特徴です。この仕組みにより、価格競争力と供給の安定性を同時に確保しています。さらに、複数事業を組み合わせることで、収益の安定性を高めています。
② 成長が見込まれる新興国市場への重点投資
中国・インド・東南アジア・アフリカといった、人口が多く今後の経済成長が見込まれる地域を重点市場としている点が同社の成長戦略の特徴です。これらの地域では食料需要の拡大が続くと見込まれ、同社は現地での生産・加工・販売体制を強化しています。実際に同社は、アジアやアフリカを中心に販売ネットワークを広げており、世界約50億人の消費者に届けられる販売網を構築しています。
ウィルマー社の成長戦略から見る海外展開のヒント
ウィルマー社は、農園・加工・販売まで一貫して担う垂直統合型のビジネスモデルを強みに、アジア有数の農業関連企業へと成長しています。また、中国・インド・東南アジア・アフリカといった成長市場に注力し、人口増加に伴う食料需要の拡大を取り込んでいる点も特徴です。
海外進出を検討する企業にとっては、同社のサプライチェーンのあり方や新興国市場への展開方法はヒントとなるでしょう。
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