
電力・石油・ガス業界は、社会と経済の基盤を支えるエネルギーの中核産業です。生活や経済活動に不可欠なインフラとして機能すると同時に、世界経済とも密接に結びついています。
一方、日本では省エネ製品の普及や人口減少などを背景に、国内のエネルギー需要が縮小しています。このような環境下で企業が持続的に成長していくためには、海外市場への進出が一つの選択肢です。
本記事では、2026年4月時点の情報をもとに、世界のエネルギー企業ランキングと、日本の大手企業の海外戦略についてわかりやすく解説します。
日本国内のエネルギー業界の動向
日本のエネルギー需要は、2005年をピークに減少傾向が続いています。その背景には、1970年代の石油ショックを契機とした省エネの推進に加え、近年の人口減少や産業構造の変化が挙げられます。実際に、経済産業省の資料によると、2023年度の国内エネルギー需要は1973年度と同水準まで低下しました。なお、1973年は高度経済成長の最中に第4次中東戦争による石油ショックが発生し、日本のエネルギー政策が大きく転換した年でもあります。

出典:経済産業省「エネルギー需給の概要」
世界のエネルギー市場規模
日本国内は減少傾向にあるエネルギー市場ですが、世界では中国やインドの経済成長に伴いエネルギー消費量は増加傾向にあります。中でもアジア大洋州地域の伸びが堅調です。一方で、先進国では伸び率が鈍化しつつあります。

出典:経済産業省「エネルギー需給の概要」
また、国際エネルギー機関が公表した「World Energy Outlook 2024」によると、世界のエネルギー市場は今後も拡大する見込みです。特に電力需要は、データセンターの拡大や電動化の進展、気温上昇に伴う冷房需要の増加などを背景に、今後も着実に増加すると予測されています。世界の電力需要は2035年に向けて年率約3.3~4.5%で成長する見通しが示されています。
参考:一般社団法人日本原子力産業協会「国際エネルギー機関(IEA)「2024年版世界エネルギー見通し(WEO 2024)」原子力拡大の加速化を予測」
エネルギー業界の世界企業ランキング【トップ10】
電力・石油・ガス業界の世界市場の構造を把握するため、ここではエネルギー業界の時価総額ベースの世界企業ランキング上位10社を紹介します。
| 順位 | 企業名 | 時価総額(2024年) | 国・地域 |
| 1位 | Saudi Aramco(サウジアラムコ) | 1兆7,760億ドル | サウジアラビア |
| 2位 | ExxonMobil(エクソンモービル) | 5,154億ドル | アメリカ |
| 3位 | Chevron Corporation(シェブロン) | 2,631億ドル | アメリカ |
| 4位 | Shell plc(シェル) | 2,144億ドル | イギリス |
| 5位 | PetroChina(ペトロチャイナ) | 1,964億ドル | 中国 |
| 6位 | NextEra Energy(ネクステラ・エナジー) | 1,691億ドル | アメリカ |
| 7位 | TotalEnergies(トタルエナジーズ) | 1,579億ドル | フランス |
| 8位 | ConocoPhillips Company(コノコフィリップス) | 1,284億ドル | アメリカ |
| 9位 | CNOOC(中国海洋石油集団) | 1,202億ドル | 中国 |
| 10位 | China Shenhua Energy(神華能源) | 1,033億ドル | 中国 |
引用:Business Energy UK「Business Electricity & Gas Rates」
サウジアラムコが圧倒的な規模を誇っており、2位のエクソンモービルと比較しても約3倍以上の時価総額となっています。国・地域別に見ると、中東やアメリカ、中国などの資源を保有する国の国営企業や、グローバルに事業を展開する大手エネルギー企業が上位を占めています。一方で、トップ10に日本企業はランクインしておらず、世界上位企業との規模の差が浮き彫りとなっています。
ランキングから見る世界大手企業の特徴
世界ランキングから、エネルギー業界における世界大手企業の特徴として、以下の共通点があります。
まず挙げられるのは、資源を保有している企業の強さです。資源を保有する企業は、石油・ガスの採掘や生産といった上流分野から、精製・販売までを一貫して手がけることで高い収益力を確保しています。
次に、上位企業の多くは再生可能エネルギーへの投資を拡大している点です。従来の石油・ガス中心のビジネスモデルから脱却し、脱炭素社会に対応したポートフォリオの構築を進めています。
日本のエネルギー企業の海外戦略
日本企業は世界トップ10にはランクインしていないものの、大手各社は積極的に海外展開を進めています。ここでは、日本を代表するエネルギー企業の海外戦略について解説します。
株式会社JERA

出典:株式会社JERA
株式会社JERAは、東京電力と中部電力の燃料事業・火力発電事業を統合して誕生した、日本を代表する発電会社です。国内全体の約3割の発電を担うなど、日本のエネルギー業界の中核的な存在です。
同社の特徴は、燃料の調達から発電・販売までを一貫して手がけている点にあります。特にLNG(液化天然ガス)分野では世界有数の取扱量を誇り、15カ国からLNGを調達するなど、グローバルな調達ネットワークを構築しています。
また、海外展開も積極的に推進している点も特徴です。現在は10カ国以上の約30件のプロジェクトに参画しています。また、2025年にはインドの発電事業者トレント・パワー社へのLNG供給を発表し、自社で使用しない燃料を販売することで収益力の強化を図る狙いです。
株式会社INPEX

出典:株式会社INPEX「イクシスLNGプロジェクト及び周辺鉱区」
株式会社INPEXは、日本最大の石油・天然ガス開発企業です。埋蔵量は64.5億バレル、生産量は日量約63.1万バレルと、いずれも国内トップクラスの規模を誇り、日本を代表する資源開発企業としての地位を確立しています。
同社の強みは、石油・天然ガスを自ら探し、採掘している点です。資源を保有し、探鉱から生産までを一貫して手がけることで、安定供給と高い収益性を実現しています。
また、事業の約9割を海外事業が占めており、海外展開を軸に成長してきた点も特徴です。積極的な海外投資と資源開発により、日本企業の中でも数少ない「資源を持つ企業」として存在感を高めています。
ENEOS株式会社

出典:ENEOS 株式会社
ENEOS株式会社は、日本最大級の石油精製・販売会社です。国内の燃料油販売シェアは約50%と圧倒的な規模を誇ります。ガソリンや潤滑油などの石油製品を中心に、幅広いエネルギー事業を展開している点が特徴です。同社は1888年創業という長い歴史を背景に、安定した供給体制を築いてきました。近年は、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギー分野において、海外事業を拡大しています。
まとめ
エネルギー業界は世界的に成長が続く一方、日本国内では需要縮小という課題に直面しています。加えて、日本は資源国ではありません。こうした制約の中でも、日本の大手企業はLNGの調達、海外での資源開発、再生可能エネルギー事業などで海外展開を進めています。それぞれの強みを生かすことで、世界市場での存在感を高めている点が特徴です。
これらの取り組みは、国内市場が成熟している他の産業にとってもヒントとなります。この機会に成長戦略の一つとして、海外進出を検討してみてはいかがでしょうか。
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