
Enel(エネル)は、イタリアに本社を置く多国籍電力・ガス会社です。2021年のイタリアの総発電量に占める同社の割合は17.5%で、トップシェアを誇ります。また、配電事業のシェアは85%でこちらもイタリア国内で最大規模です。本記事では、Enelの会社概要や経営状況、事業内容についてわかりやすく解説します。
Enelとはどんな会社?

出典:Enel
Enelの名前の由来は、「Ente Nazionale per l’energia ELettrica(イタリア国営電力会社)」です。その名のとおり、以前は国営企業でしたが、1999年に民営化されました。現在では発電・配電を中心に幅広い事業を世界28カ国で展開しています。ここでは、Enelの会社概要や歴史、経営理念を紹介します。
会社概要
Enelの会社概要は以下のとおりです。
| 企業名 | Enel S.p.A. |
| 本社 | イタリア |
| 設立 | 1962年 |
| 売上高 | 804億ユーロ(2025年度) |
| 進出国 | 28カ国 |
| 従業員数 | 61,634人(2025年末時点) |
Enelの2025年の発電量は186.1TWh、販売電力量は249.9TWhで、世界有数の規模を誇っています。
歴史
Enelは1962年、イタリア政府による電力産業の国有化政策のもと、国営電力会社として設立されました。1960年代から1970年代にかけて、イタリア国内の電力網の整備と発電能力を拡大。高圧送電線の建設や地方への電化を進めることで、国内の電力供給体制を強化し、経済成長を支える重要なインフラ企業としての役割を担いました。
1990年代になると、ヨーロッパでは電力市場の自由化が進展。Enelは1990年代後半に発電や送電、配電などの事業を分社化し、1999年に民営化されました。
2000年代以降は海外事業の拡大を進め、欧州や中南米などで電力事業を展開するグローバル企業へと成長しました。現在では再生可能エネルギーへの投資や電力インフラのデジタル化を進め、世界有数の電力会社に成長しています。
経営理念
Enelの経営理念は、パーパス・ビジョン・バリューの3つで構成されています。
■パーパス
持続可能なエネルギーで未来を築く
■ビジョン
人々のニーズを満たし、より良い世界を築くために電化を推進する
■バリュー
- 信頼:責任感、誠実さ、合法性、独立性を重視し、ステークホルダーや顧客との信頼関係を築く
- 革新:好奇心旺盛な姿勢でエネルギーの新たな活用方法を探求する
- 積極性:起業家精神を持って行動し、エネルギー転換をリードする主要プレイヤーとして未来を築く
- 柔軟性:変化を機会と捉え、急速に変わる環境における課題に備える
- 尊敬:多様性や個人の特性を尊重し、安全・健康・環境・人権を守る
Enelの経営状況
Enelの経営状況として、直近5年間の売上高とEBITDAの推移を紹介します。

売上高は年度ごとに変動が見られるものの、近年はやや減少傾向にあります。一方で、EBITDAは増加傾向にあることから、収益力が向上していると言えます。※EBITDAとは、「利払い前・税引き前・減価償却前利益」のことです。企業の収益力を示す指標としてよく活用されます。
Enelの事業内容
Enelについて理解を深めるためには、事業構造の把握が重要です。ここでは、同社の成長を支える5つの主要事業について解説します。
発電事業

出典:Enel「Power Generation」
Enelにとって発電事業は電力供給を支える中核事業です。1960年代初頭のイタリアでは水力発電が電力の大半を担っていましたが、同社はその後、積極的な開発を進めてきました。その結果、現在では世界28カ国に1,300以上の発電所を展開し、多様な電源を組み合わせた体制を構築しています。例えば、次のような発電技術です。
- 水力発電
- 風力発電
- 太陽光発電
- 地熱エネルギー発電
- バッテリーエネルギー貯蔵システム
- 火力発電
なかでも再生可能エネルギーが中核を担っており、同社は2040年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標を掲げ、発電事業の脱炭素化を推進しています。
配電事業

出典:Enel「Distributed energy in new Grids」
Enelの配電事業は、電力を家庭や企業へ届けるインフラを担う中核事業です。世界6カ国で配電ネットワークを運営し、約6,900万人のエンドユーザーに電力を供給しています。その総延長は約180万kmにおよびます。
同事業の特徴は、スマートグリッドを推進している点です。スマートグリッドとは、デジタル技術を活用した電力の需給を効率的に管理できる電力網です。再生可能エネルギーや分散型発電が普及した現在、電力が発電側と消費側の双方向で行き来する仕組みを構築することで、柔軟かつ強靭な電力網の実現を目指しています。
統合型サービス・ソリューション事業

出典:Enel「Integrated energy solutions」
Enelの統合型サービス・ソリューション事業は、電力・ガス・光ファイバーに加えて、革新的なソリューションを提供しています。具体的には家庭・企業・公共機関向けの省エネソリューション、電気自動車やエネルギー管理の関連サービスなどです。こうした取り組みにより、エネルギーの効率化や脱炭素化を支援するとともに、顧客の持続可能なエネルギー利用を促進しています。
エネルギー取引事業

出典:Enel「Mitigating commodity trading risks at global scale」
Enelのエネルギー取引事業は、電力やガスなどを世界市場で売買し、グループ全体のエネルギーを最適に管理する役割を担っています。電力・ガス・排出権・石油などの卸売市場や金融市場で取引を行い、発電した電力の販売や資源の調達を行っています。
ビジネスイノベーション事業

出典:Enel「3SUN Gigafactory」
Enelのビジネスイノベーション事業は、エネルギー分野の変革を見据えた新技術・新領域への投資を担う成長事業です。例えば、太陽光パネルを製造する「3SUNギガファクトリー」では、高効率な次世代パネルの開発・生産を行っており、欧州の再生可能エネルギーの普及に貢献しています。また、バッテリーエネルギー貯蔵システムでは、電力の安定供給や再生可能エネルギーの導入拡大を支える蓄電技術を展開しています。
Enelの成長戦略
Enelは成長戦略として、2026年2月に「2026~2028年戦略計画」を発表しました。本計画では、次の3項目を戦略的優先事項と位置付けています。
- 電力網・再生可能エネルギー・顧客事業への重点投資による成長の加速
- 資源配分の最適化による資本効率の向上
- 財務規律の維持とリスク管理による収益性の強化
また、3年間で総額530億ユーロの投資を計画している点も注目すべきポイントです。内訳は、再生可能エネルギー分野に約200億ユーロ、イタリア・イベリア半島・ラテンアメリカの配電網に約260億ユーロを投じる予定です。
こうした戦略により、成長性の高い分野や地域に経営資源を集中させ、収益力の向上を図っている点が同社の特徴と言えます。
まとめ
Enelは、世界有数の電力会社としてグローバルに事業を展開しています。近年は収益力の向上が進んでおり、今後は再生可能エネルギーや電力網への投資を加速させる方針です。脱炭素化とデジタル化を軸に、さらなる成長が期待されています。イタリア経済において大きな影響力を持つ企業であることから、イタリア市場への進出を検討する際には、基礎知識として押さえておきたい企業と言えるでしょう。