
小売・流通業界は、メーカーが生み出した製品を消費者へ届ける生活インフラです。経済産業省の調査によると、国内の2024年の小売業販売額は167兆円で4年連続の増加を達成しました。このように国内市場は拡大を続けていますが、将来的には人口減少を背景に市場の縮小が懸念されています。そこで、日本企業が持続的な成長を続ける上で重要性が高まっているのは海外展開です。
本記事では、2026年4月時点の情報をもとに、世界の小売・流通業界ランキングを通じて市場の全体像を整理し、日本の大手企業の海外戦略をわかりやすく解説します。
小売・流通業界の世界市場規模
小売・流通業界の世界市場は、今後も堅調な拡大が見込まれています。背景にあるのは、スマートフォンの普及による購買行動の変化と、物流インフラの高度化による利便性の向上です。これにより電子商取引が世界規模で浸透し、市場全体の成長を後押ししています。
株式会社グローバルインフォメーションの調査によると、2025年の世界市場規模は30兆6,230億ドルでした。それが2026年には32兆9,077億ドル、2030年には44兆9,155億ドルへと拡大する見込みです。
こうした背景から、世界の小売・流通業界はビジネスチャンスが多い分野と言えます。日本企業が持続的な成長を実現するためには、海外市場を取り込む戦略がますます重要になっています。
参考:株式会社グローバルインフォメーション「小売の世界市場レポート 2026年」
小売・流通業界の世界ランキング【トップ10】
小売・流通業界の世界市場の構造を把握するため、ここでは2023年度の売上高をもとにした世界ランキング上位10社を紹介します。
| 順位 | 企業名 | 売上高(2023年度) | 国・地域 |
| 1位 | Walmart Inc.(ウォルマート) | 6,481億ドル | アメリカ |
| 2位 | Amazon.com, Inc.(アマゾン) | 2,519億ドル | アメリカ |
| 3位 | Costco Wholesale Corporation(コストコ) | 2,423億ドル | アメリカ |
| 4位 | Schwarz Group(シュワルツグループ) | 1,770億ドル | ドイツ |
| 5位 | The Home Depot, Inc.(ホーム・デポ) | 1,527億ドル | アメリカ |
| 6位 | The Kroger Co.(クローガー) | 1,489億ドル | アメリカ |
| 7位 | Aldi Einkauf GmbH & Co. oHG and Aldi International Services GmbH & Co. oHG(アルディ) | 1,236億ドル | ドイツ |
| 8位 | JD.com, Inc.(京東商城) | 1,229億ドル | 中国 |
| 9位 | Walgreens Boots Alliance, Inc.(ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス) | 1,212億ドル | アメリカ |
| 10位 | CVS Health Corporation(CVSヘルス) | 1,168億ドル | アメリカ |
引用:デロイト トーマツ「世界の小売業ランキング2025」
上位10社のうち7社をアメリカ企業が占めています。これはGDPランキング1位というアメリカの巨大市場や高い購買力が背景にあります。また、中国やドイツもGDPランキングの上位国です。ドイツ企業は、アメリカや中国と比べてGDP規模が小さいにもかかわらず上位に食い込んでいることから、世界的な競争力の高さが伺えます。
ランキングから見る世界大手企業の特徴
ランキング上位企業には、いくつかの共通した特徴が見られます。
まず「事業規模の大きさ」です。Walmart Inc.やCostco Wholesale Corporationは、世界規模の店舗展開と調達力を生かし、低価格と安定供給を実現しています。規模の経済を背景とした価格競争力が強みです。
次に「電子商取引の拡大」です。Amazon.com, Inc.やJD.com, Inc.は、電子商取引と高度な物流網を強みに急成長してきました。データ活用による顧客体験の向上も競争優位性を支えています。
さらに特徴的なのは、「特定分野での強みを生かした事業拡大」です。The Home Depot, Inc.は住宅関連に特化しながら事業を拡張し、CVS Health CorporationやWalgreens Boots Alliance, Inc.は医薬品販売を起点に事業を拡大しています。
日本の大手企業の海外戦略
デロイト トーマツの「世界の小売業ランキング2025」によると、上位250社にランクインした日本企業は20社と過去最低を記録しました。この結果から、小売・流通業界の日本企業は世界市場において苦戦している現状が伺えます。そこで、上位250位にランクインした20社の中から、成果を上げている企業の海外戦略をわかりやすく解説します。
参考:デロイト トーマツ「「世界の小売業ランキング2025」発表 ~日本企業20社がランクイン」
株式会社 ファーストリテイリング

出典:株式会社 ファーストリテイリング「会社情報」
株式会社 ファーストリテイリングは、「ユニクロ」や「GU」などのブランドを展開するアパレル企業で、衣料品の企画・製造・販売までを一貫して行うSPA(製造小売業)のビジネスモデルが特徴です。
主要事業は国内ユニクロ・海外ユニクロ・ジーユー・グローバルブランドに分かれ、特に海外ユニクロ事業が収益の中核です。
2026年8月期上期の売上収益は2兆552億円と過去最高を更新しました。内訳を見ると、国内ユニクロが5,817億円(前年同期比14.8%増)であるのに対し、海外ユニクロは1兆2,413億円(同22.4%増)と大きく伸長しており、全体の約60%を占めています。
同社の海外戦略の特徴は、積極的な出店と地域密着型の展開です。2025年8月期時点で海外店舗数は1,725店舗に達し、特に中国では902店舗と圧倒的な規模を誇ります。さらに、各地域のニーズに合わせた商品開発やマーケティング、旗艦店を軸としたブランド戦略により世界市場での成長を実現しています。
参考:株式会社 ファーストリテイリング「決算サマリー」
株式会社セブン&アイ・ホールディングス

出典:7-Eleven「about」
セブン&アイ・ホールディングスは、コンビニエンスチェーンの「セブン‐イレブン」を展開する企業です。
収益の柱は国内外のコンビニエンスストア事業であり、フランチャイズモデルを活用することで、安定した収益基盤を確立しています。同社の海外戦略の特徴は、M&Aによる事業拡大です。例えば、次のとおりです。
- 2017年:Sunocoの一部事業を取得
- 2020年:Speedwayの買収
- 2023年:7-Eleven Australiaの買収
- 2024年:Sunoco-Stripesの取得
結果、2024年3月末時点で20カ国・84,762店舗(うち日本は21,544店舗)を展開するまでに成長しています。特にアメリカやオーストラリアでは、ガソリンスタンド併設型店舗を展開することで、収益力の強化につなげています。
株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス

出典:株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス
株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスは、ディスカウントストア「ドン・キホーテ」を展開する企業です。食品や日用品、家電、衣料品まで幅広い商品を扱い、独自の売場づくりと低価格戦略を武器に成長してきました。
同社は現在、アメリカや東南アジアを中心に123店舗を展開しています。シンガポールや香港、タイなどでは「DON DON DONKI」ブランドを展開し、現地の嗜好に合わせた商品構成や適切な価格設定により支持を得ています。このように、日本発の低価格戦略を軸にしながら、現地ニーズに柔軟に対応することが同社の海外戦略の特徴です。
まとめ
小売・流通業界の世界市場は今後拡大が予想される中、アメリカ企業が市場を牽引しています。一方、日本企業は世界市場で苦戦しているものの、成果を上げている企業も存在します。今後、持続的な成長を実現するためには、自社の強みを生かしながら海外市場を取り込む戦略が重要です。
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