チョークポイントとは何か?中東情勢に学ぶ物流リスクと海外事業戦略

中東情勢が悪化する中、ホルムズ海峡やバブ・エル・マンデブ海峡に注目が集まっています。これらは「チョークポイント」と呼ばれ、ここでの混乱は経済活動に大きな影響を及ぼします。そのため、海外で事業を展開する企業にとって見過ごせないリスク要因の一つです。

本記事では、海外進出前に押さえておくべき基礎知識として、チョークポイントの意味や中東情勢との関係性、海外事業への影響をわかりやすく解説します。

チョークポイントとは?

チョークポイントとは、船の航路が一点に集中する海上ルート上の要所のことです。世界の主要航路に点在しており、航行が制限されれば、世界経済に大きな打撃を与えかねません。石油・天然ガスなどのエネルギー資源をはじめ、工業製品や食料といった多くの重要物資が海上輸送に依存しているためです。

こうした背景から、チョークポイントの混乱は代表的な地政学リスクの一つとされています。海外進出を検討する際には、利用する海上ルート上にどのようなチョークポイントがあるのか、そのリスクを事前に把握しておくことが大切です。

世界の主要なチョークポイント一覧

世界の主要なチョークポイントの役割と混乱時の影響を以下の表にまとめました。

チョークポイント役割混乱時の影響
ホルムズ海峡原油・LNG輸送の重要ルートエネルギー価格の高騰、原油・LNGの供給不安の拡大
バブ・エル・マンデブ海峡紅海とインド洋を結ぶ要所で、スエズ運河の入り口欧州航路の停滞、輸送コストの増加
スエズ運河アジアと欧州を結ぶ最短ルート喜望峰経由への迂回による日数・コストの増加
マラッカ海峡アジアと中東・欧州を結ぶ要所物流の遅延・コストの増加
パナマ運河太平洋と大西洋を結ぶ要所米州向け物流の遅延・コストの増加
ボスポラス海峡黒海と地中海を結ぶ穀物・資源の輸送ルート食料・資源供給の不安定化
ジブラルタル海峡地中海と大西洋を結ぶ要所欧州とアフリカ航路の混乱
喜望峰スエズ運河の迂回ルート航行リスクの増大
ホーン岬パナマ運河の迂回ルート航行リスクの増大

このように、チョークポイントは世界各地に点在しています。

中東情勢とチョークポイントの関係性

中東情勢の悪化は、世界経済に大きな影響を及ぼします。その背景として、中東情勢とチョークポイントの関係性を2つの視点から解説します。

中東に集中するチョークポイント

中東周辺には、次の3つのチョークポイントが集中しています。

  • ホルムズ海峡
  • バブ・エル・マンデブ海峡
  • スエズ運河

これらはいずれも、アジア・中東・欧州・アフリカを結ぶ海上ルート上の要所で、世界の物流を支える重要な通過点です。

例えば、バブ・エル・マンデブ海峡やスエズ運河が何らかの理由で通航できなくなると、船舶はアフリカ南端の喜望峰を経由する迂回ルートを選ばざるを得ません。しかし、このルートは航海距離が大幅に伸びるため、輸送日数の増加やコスト上昇を招きます。

さらに、ホルムズ海峡のように実質的な代替ルートが存在しないチョークポイントもあります。そのため、中東情勢が悪化するとチョークポイントの混乱により、世界経済に大きな影響を及ぼすのです。

中東は世界の主要な資源地域

中東は、原油やLNG(液化天然ガス)といったエネルギー資源の世界的な供給拠点です。多くの国が中東からの輸入に依存していますが、これらの資源は中東全域で採掘されているわけではありません。

主な油田・ガス田は、ホルムズ海峡の奥に位置するペルシャ湾沿岸に集中しています。つまり、ホルムズ海峡を通過できなくなると、この地域で生産された資源を世界へ輸送できません。

特に日本は、原油の90%以上をホルムズ海峡経由で輸入しており、その影響は極めて大きいと言えます。このように、チョークポイントであるホルムズ海峡の混乱は、日本のみならず世界全体のエネルギー供給不安を引き起こすリスクがあります。

中東地域のチョークポイントが混乱した事例

中東地域のチョークポイントは、これまでにも世界経済に大きな混乱をもたらしたことがあります。直近の代表例は次のとおりです。

  • 2021年:スエズ運河封鎖事故
  • 2023年:紅海周辺における船舶への攻撃

これらの事例では、アフリカ南端の喜望峰を迂回する動きが広がりました。その結果、航海距離や輸送時間が大幅に増加し、海上運賃の上昇を招きました。

また、直近ではイラン紛争によるホルムズ海峡の封鎖により、世界的なエネルギー供給不安を引き起こしています。

なお、チョークポイントによる混乱は中東地域に限ったものではなく、世界各地で発生するリスクがあります。

チョークポイントは海外事業の構造的ボトルネック

海外事業において、チョークポイントは構造的なボトルネックです。ここでは、その理由を3つの視点から解説します。

通過するチョークポイントの数とリスクの関係性

チョークポイントに起因するリスクは、通過する数が増えるほど大きくなります。各チョークポイントはそれぞれ独立したリスク要因で、事故や紛争、規制強化などの影響を受ける可能性があるためです。そのため、複数のチョークポイントを経由するルートでは、不確実性が一段と高まります。

日本企業の主要な海上ルート

日本企業の海上輸送は、地理的な制約から取引先の地域によって特定の海上ルートに依存する構造です。その結果、取引先の場所によって、通過するチョークポイントの数やリスクが異なります。

例えば、日米間の海上ルートは通過するチョークポイントが比較的少なく、リスクの低いルートです。一方で、欧州との取引では、マラッカ海峡やバブ・エル・マンデブ海峡、スエズ運河などの複数のチョークポイントを通過する必要があり、リスクは相対的に高くなります。

これは海外事業においても同様です。進出先や取引先の地域によって通過するチョークポイントの数とリスクは変わります。

チョークポイントがボトルネックになる理由

海外事業においてチョークポイントがボトルネックとなる理由は、進出後にその影響を避けることが困難な点にあります。進出先や取引先の地理的条件によって海上ルートは事実上固定されるためです。

また、チョークポイントの混乱は一度生じると、航行停止や大幅な遅延といった深刻な影響を引き起こします。仮に迂回ルートを利用できたとしても、航行距離の増加によるコスト上昇や、サプライチェーン全体の遅延といった影響は避けられません。

つまり、海外事業において通過せざるを得ないチョークポイントは構造的なボトルネックです。

海外事業の成功確率を高める事業リスク評価

海外事業の成功確率を高めるためには、リスクの低い国・市場を見極めることが重要です。その判断の基盤となるのは、政治・経済動向、カントリーリスク、さらには個別の事業関連リスクといった複合的な事業リスクの評価です。

中でも、チョークポイントに代表される地政学的リスクは、一度顕在化すると事業運営に大きな影響を及ぼします。事後対応が難しいことから、進出前の段階で十分に把握・評価しておくことが成功の鍵です。

まとめ

不確実性が高まる現在の国際環境において、海外進出の成否を左右するのは、リスクをどれだけ正確に把握できるかにあります。中でもチョークポイントは、海外事業における構造的なボトルネックとなり得る重要なリスク要因であり、進出前の段階で必ず評価しておくべき項目です。海外進出先の検討にあたっては、こうした地政学的リスクも含めて総合的に判断することが求められます。 Proveでは、政治・経済・事業関連などの事業リスクの抽出・評価や各種調査を通じて、お客様の海外展開を支援しています。海外進出先の選定やリスク評価にお悩みのご担当者様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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