
ASEAN地域をはじめとする成長市場では、経済発展とサプライチェーンのグローバル化を背景に、物流需要のさらなる拡大が見込まれています。
こうした市場環境は、日本の物流関連企業にとって有望なビジネスチャンスと言えます。日本の物流システムは、精密なスケジュール管理と高品質なサービスが強みで、海外市場においても競争力を有しているためです。
本記事では、2026年4月時点の情報をもとに、交通・運輸・物流企業の世界ランキングと日本企業の海外進出の現状と戦略について解説します。
交通・運輸・物流業界の世界市場規模と成長性
交通・運輸・物流業界は、経済を支える基幹インフラであり、大きな市場規模を有しています。
Business Research Insightsの調査によると、同市場は2026年に6兆5,290億ドルと試算されており、2035年には10兆4,440億ドルへ拡大する見通しです。年平均成長率は4.8%とされ、今後も安定した成長が続くと予測されています。
この成長を支える主な要因は、グローバル化と電子商取引の拡大です。企業活動の国際分業が進展する中で、調達・製造・販売にまたがるサプライチェーンは複雑化しており、それを支える物流の重要性は一層高まっています。加えて、EC市場の拡大により、ラストマイル配送や迅速な輸送サービスへの需要も急増しています。
地域別では、北米や欧州は引き続き巨大な市場です。一方で、今後は中国やインド、ASEAN諸国などのアジア太平洋地域が成長を牽引すると予想されています。
参考:Business Research Insights「輸送および物流の市場規模」
交通・運輸・物流企業の世界ランキング【トップ10】
交通・運輸・物流業界の世界市場の構造を把握するため、ここではTechSci Researchの調査結果をもとに、売上高ベースの世界ランキング上位10社を紹介します。
| 順位 | 企業名 | 売上高(2024年) | 国・地域 |
| 1位 | DHL Group | 919億ドル | ドイツ |
| 2位 | United Parcel Service Inc.(ユナイテッド・パーセル・サービス) | 911億ドル | アメリカ |
| 3位 | FedEx Corporation(フェデックス) | 879億ドル | アメリカ |
| 4位 | Maersk AS(マースク) | 511億ドル | デンマーク |
| 5位 | S.F. Holding Co., Ltd | 398億ドル | 中国 |
| 6位 | Kuehne+Nagel(キューネ・アンド・ナーゲル) | 278億ドル | スイス |
| 7位 | DB Schenker(DBシェンカー) | 242億ドル | ドイツ |
| 8位 | CEVA Logistics SA(シーバロジスティクス) | 183億ドル | フランス |
| 9位 | C.H. Robinson Worldwide Inc.(CHロビンソン・ワールドワイド) | 177億ドル | アメリカ |
| 10位 | 日本郵船株式会社 | 158億ドル | 日本 |
参考:TechSci Research「Top 12 Logistics Companies in the World」
上位10社のうち、アメリカが3社、欧州が5社、中国と日本が1社です。このことから、世界の交通・運輸・物流企業は欧米主導の業界であることがわかります。
ランキングからわかる世界上位企業の特徴
ランキング上位3社に共通するのは、グローバル規模で構築された物流ネットワークを基盤に、国際輸送からラストマイル配送までを提供している点です。いずれの企業もドア・ツー・ドアのスピード配送により、利便性と信頼性を両立したサービスモデルを確立しています。さらに、物流倉庫の自動化やAIによる業務の迅速化などにより、物流の高度化や効率化を実現している点も共通しています。
日本の交通・運輸・物流企業の成長戦略
世界ランキング上位10社の中で日本企業は1社にとどまる一方、海外市場で活躍している日本企業は他にも多く存在します。そこでここでは、海外進出に成功した代表的な日本企業3社の特徴と成長戦略について解説します。
日本郵船株式会社

出典:日本郵船株式会社
日本郵船株式会社は、1885年創業の総合海運会社です。海上輸送を中核に陸上・航空を組み合わせたグローバルな物流サービスを展開しています。コンテナ船やばら積み船、LNG船に加え、120隻規模の車運搬船を保有するなど、多様な船隊による事業ポートフォリオが特徴です。
物流事業では、子会社を通じて世界45カ国・約650拠点のネットワークを構築し、倉庫運営やフォワーディング、サプライチェーン管理までを含む統合物流サービスを提供しています。
海外戦略の特徴は、物流事業領域における積極的な投資およびM&Aによる事業拡大です。例えば、2024年には以下のような取り組みを行っています。
- eコマース向け配送プラットフォーム企業を傘下に持つ英国企業の買収
- 英国の大型物流倉庫への500億円規模の投資
- オランダの自動車部品配送会社の買収
加えて、同社は自動車輸送分野においても海外展開を図っています。三国間輸送や沿岸輸送ネットワークの構築、世界各地での完成車専用ターミナルの整備・運営を通じて、グローバルな自動車の物流インフラを実現しています。
NIPPON EXPRESSホールディングス株式会社

NIPPON EXPRESSホールディングス株式会社は、陸・海・空の輸送を組み合わせ、国際物流から国内配送までを一貫して提供する日本有数の総合物流企業です。世界57の国・地域、約3,000拠点に広がるグローバルネットワークを基盤に、輸送サービスや物流倉庫の運用、物流ソリューションを提供しています。
同社の海外戦略の中核は、「3軸アプローチの推進」にあります。これは、顧客・事業・エリアの3つの視点からグローバル展開を強化する戦略です。
- 顧客軸:グローバル営業体制とアカウントマネジメント(顧客管理)の強化
- 事業軸:航空会社向けのグローバル入札への対応や、長期契約を前提としたコントラクトロジスティクスの営業拡大
- エリア軸:ネットワークの拡大に向けた新規地域の開発や積極的な投資
これらの取り組みにより、新規顧客開発の推進や各地域の経営資源の強化を図り、グローバル事業の拡大を加速しています。
また、M&Aによる事業拡大に積極的に取り組んでいる点も特徴です。オーストリアのcargo-partner社やスイスのTramo社の買収を通じて、欧州を中心としたネットワークとサービス領域を強化し、グローバルでの競争力向上を図っています。
ヤマトホールディングス株式会社

ヤマトホールディングス株式会社は、国内のラストマイル配送で高い競争力を持つ物流企業です。全国を網羅する高密度な配送ネットワークを強みとし、高品質かつ効率的な物流サービスを提供しています。
同社の海外戦略の特徴は、このような日本品質のラストマイルと物流ノウハウの海外展開です。現在はアジア・欧州・米州を中心に、24の国・地域で事業を展開しています。
近年は、インドの大規模物流拠点の開設といった設備投資の強化や、積極的なM&Aによる事業拡大の方針を打ち出しています。
日本企業が海外で勝つための戦略とは
交通・運輸・物流業界は、グローバル化やEC市場の拡大を背景に、今後も安定した成長が見込まれる分野です。こうした環境下において、日本企業が持続的な成長を実現するためには海外展開が重要です。
実際に、日本の大手物流企業は海外事業の拡大を積極的に推進しています。自社の強みを生かしながら、M&Aや戦略的投資を通じて事業基盤を拡充している点が共通しています。これらの事例は、海外進出を検討する企業にとって有益なヒントとなるでしょう。
ただし、海外進出の手法としてM&Aは有効である一方、ターゲット企業の選定や交渉には高度な専門知識と実務経験が求められます。PROVEでは、これまで数多くの海外事業を成功に導いてきた実績をもとに、こうしたプロセス全体を一貫して支援しています。海外進出や海外企業のM&Aをご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。
