ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)とはどんな会社?

ユナイテッド・パーセル・サービス(以降は、「UPS」と言います。)は、アメリカに本社を置く世界最大の貨物輸送会社です。1日約2,230万個の荷物を航空機や車両で世界中に配送しています。本記事ではUPSの会社概要や経営状況、成長戦略について紹介します。

UPSとはどんな会社

出典:UPS「当社について

UPSは100年以上の歴史を持つ、アメリカの貨物輸送会社です。200カ国以上にサービスを展開しており、国際便にも強みを持っています。この章ではUPSの会社概要や歴史、経営理念を解説します。

会社概要

UPSの会社概要は以下のとおりです。

会社名United Parcel Service, Inc.
本社アメリカ
設立1907年
進出地域200カ国以上
1日当たりの荷物の個数約2,230万個
従業員数50万人以上
売上高910億ドル(2023年度)

歴史

1907年に、ジム・ケイシー氏とクロード・ライアン氏がアメリカのシアトルで、アメリカン・メッセンジャー・カンパニーを設立したのがUPSの歴史の始まりです。そして、1919年にはカリフォルニアやオークランドに事業を拡大し、現在の社名に変更しました。

1953年には、アメリカの東海岸と西海岸の都市間航空輸送サービスを開始しました。1975年には、アメリカ全土に配達サービスを提供する企業に成長します。そして、同年にカナダへの国際輸送サービスを開始し、1985年にはアメリカとヨーロッパ間の大陸間航空輸送サービスを開始しました。

1989年には、中東・アフリカ・環太平洋地域にサービスを拡大し、現在では200カ国以上で事業を展開しています。

経営理念

UPSは、以下の7つの項目を経営指針に掲げています。

  • 卓越性

全ての行動で期待を上回ることを目指し、個人として、ビジネスパートナーとして常に向上に努めることです。

  • イノベーション

新しいアイデアを採用して顧客の成功を加速させることです。

  • 誠実さ

毎日、あらゆる方法で、誠実かつ透明性を持って約束したことを実行することです。

  • 安全と健康

自身及び互いの心身を大切にすることです。具体的には人材への投資や、社員に仕事を安全に行うためのツールや教育を提供します。

  • サービス

お客様第一の姿勢で、あらゆる規模の企業向けに最高のサービスを提供することです。

  • サステナビリティ

環境への影響を軽減するソリューションを使用し、地域と力を合わせて健康的で公平な明日を作ることです。

  • チームワーク

互いに協力し、心を一つにして共に働くことです。

UPSの経営状況

UPSの経営状況として、直近6年間の売上高と営業利益の推移を紹介します。

参考:UPS「Annual filings

2023年度の売上高は910億ドル(13兆6,500億円)で、2022年度の1,003億ドル(15兆450億円)と比較して93億ドル(1兆3,950億円)減少しました。また、2023年度の営業利益は91億ドル(1兆3,650億円)で、2022年度の131億ドル(1兆9,650億円)と比較して40億ドル(6,000億円)減少しました。売上高と営業利益が減少した要因として、インフレや消費者行動の変化などによる荷物量の減少が挙げられます。※1ドル=150円換算

また、地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:UPS「Investors

UPSの海外売上比率は21%で、米国国内の売上高が大きな割合を占めています。

UPSの事業別売上高の推移

UPSの経営状況について、事業別売上高に焦点を当てて解説します。事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:UPS「Investors

ここではさらに、3事業の内容や売上高と営業利益の推移を紹介します。

米国国内パッケージ

米国国内パッケージ事業は、アメリカの小口貨物配送サービスを提供している事業です。航空輸送・陸上輸送のどちらにも対応しており、1日約1,600万個の荷物を配送しています。同事業の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。

参考:UPS「Annual filings

2023年度の売上高は600億ドル(9兆円)で、2022年度の642億ドル(9兆6,300億円)と比較して42億ドル(6,300億円)減少しました。また、2023年度の営業利益は51億ドル(7,650億円)で、2022年度の70億ドル(1兆500億円)と比較して19億ドル(2,850億円)減少しました。売上高と営業利益が減少した要因として、インフレや個人消費行動の変化などにより、個人向け・法人向けの荷物量の減少が挙げられます。

国際パッケージ

国際パッケージ事業は、ヨーロッパ・インド・中東・アフリカ・カナダ・ラテンアメリカ・アジアで、小口貨物配送サービスを提供している事業です。同事業の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。

参考:UPS「Annual filings

2023年度の売上高は178億ドル(2兆6,700億円)で、2022年度の197億ドル(2兆9,550億円)と比較して19億ドル(2,850億円)減少しました。また、2023年度の営業利益は32億ドル(4,800億円)で、2022年度の43億ドル(6,450億円)と比較して11億ドル(1,650億円)減少しました。売上高と営業利益が減少した要因として、ヨーロッパやアジアの荷物量の減少が挙げられます。

サプライチェーンソリューション

サプライチェーンソリューション事業は、200カ国以上で国際貨物輸送や物流管理、返品サービスなどを提供している事業です。同事業の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。

参考:UPS「Annual filings

2023年度の売上高は132億ドル(1兆9,800億円)で、2022年度の164億ドル(2兆4,600億円)と比較して32億ドル(4,800億円)減少しました。また、2023年度の営業利益は8億ドル(1,200億円)で、2022年度の18億ドル(2,700億円)と比較して10億ドル(1,500億円)減少しました。売上高と営業利益が減少した要因として、国際貨物輸送の需要の減少が挙げられます。

UPSの成長戦略

UPSの成長戦略は、「成長的イニシアティブ」と「2026年の財務目標」です。「成長的イニシアティブ」は以下の3つの項目で構成されています。

  • お客様第一

お客様第一では、NPS(ネットプロモータースコア)を測定して、顧客の問題軽減に重点を置いています。NPSとは、顧客ロイヤルティを測るための指標です。

  • 社員主導

社員がUPSを「素晴らしい職場」と推奨する割合の向上を目指しています。

  • イノベーション重視

技術力や生産性でイニシアティブをとることを重視しています。

また、「2026年の財務目標」は以下のとおりです。

1.全体の売上高を約1,080億ドル~1,140億ドルにする。

2.全体の調整後営業利益率を13%以上にする。(2023年度は10%)

2-1.米国国内パッケージ事業については最低でも12%にする。(2023年度は9.0%)

2-2.国際パッケージ事業については18%~19%にする。(2023年度は18.4%)

2-3.サプライチェーンソリューション事業については約12%にする。(2023年度は9.0%)

3.フリーキャッシュフローを170億ドル~180億ドルにする。※フリーキャッシュフローは企業が自由に使える余剰資金のことです。

4.2024年~2026年の資本支出は総売上の約5.5%にする。

UPSの今後の動向に注目しよう

UPSは、アメリカを中心に世界200カ国以上で事業を展開している世界最大の貨物輸送会社です。同社は2024年10月に、アジア・アフリカ・中東の35カ国以上への配達を迅速化し、アジア太平洋全域における配達時間を最大2営業日短縮する取り組みを実施しました。このように、同社は様々な業界に影響を与える可能性があるため、「2026年の財務目標」の達成に向けた動向にも注目しましょう。

参考:UPS「UPSは、アジア太平洋地域からのグローバルな配達時間を短縮すると共に、繁忙期の対応能力を拡大します。

関連する事例

海外進出および展開はどのように取り組めば良い?
とお悩みの担当者様へ

海外進出および展開を検討する際に、
①どんな情報からまず集めればよいか分からない。
②どんな観点で進出検討国の現場を見ればよいか分からない。
③海外進出後の決定を分ける、「細かな要素」は何かを知りたい。

このような悩みをお持ちの方々に、プロジェクト時には必ず現地視察を行う、弊社PROVE社員が現地訪問した際に、どんな観点で海外現地を視察しているのかをお伝えさせていただきます。