DHLとはどんな会社?会社概要や業績、成長戦略を紹介

DHLはドイツに本社を置く世界的な物流企業です。220以上の国や地域で国際宅配便や貨物輸送、Eコマースソリューションなどを提供しています。本記事ではDHLの会社概要や経営状況、成長戦略について紹介します。

DHLはどんな会社

出典:DHL

DHLは世界有数の物流企業です。その証拠に、Reinforz Insightの「2023年最新版:世界の国際貨物フォワーダー会社ランキング時価総額TOP85」では、世界1位を獲得しています。この章では同社の会社概要や歴史、経営理念を紹介します。

会社概要

DHLの会社概要は以下のとおりです。

会社名Deutsche Post AG
本社ドイツ
設立1969年
進出地域220以上
従業員数約594,000人
売上高818億ユーロ(2023年度)

歴史

エイドリアン・ダルシー(Adrian Dalsey)氏、ラリー・ヒルブロン(Larry Hillblom)氏、ロバート・リン(Robert Lynn)氏は、1969年にアメリカのカリフォルニア州でDHLを設立しました。同社は1971年以降、以下のように海外進出を推進します。

  • 1971年:環太平洋地域
  • 1972年:日本・香港・シンガポール・オーストラリア
  • 1974年:ヨーロッパ
  • 1977年:ラテンアメリカ
  • 1978年:中東・アフリカ

そして、1998年からドイツ国内で郵便事業を担っていたドイツポストがDHLの株式取得を開始し、2002年に完全子会社化しました。さらに2016年には、イギリス最大の郵便企業のUK Mailを買収しました。そのドイツポストは2023年にDHLグループに改名し、現在のDHLとなっています。

経営理念

同社は経営理念として、「人々を結び付け、生活を向上させる」を目的に掲げています。さらに、目的を達成するために重視している価値観が「尊敬と結果」です。「尊敬と結果」の具体的な内容は以下のとおりです。

尊敬

  • 従業員の健康と安全を最優先にすること
  • 多様性と信頼を重要視すること
  • お互いに思いやり、感謝し、否定的な行動に対処すること
  • 公正に評価すること
  • 同僚・顧客・パートナーに、毎日インスピレーションを与えること

結果

  • 期待に明確に伝え、集中力と意欲を持って目標を達成すること
  • 自分の行動と決断に責任を持つこと
  • 法律を順守すること
  • 機敏に行動し、チャンスを掴むこと
  • お互いに成功するために助け合うこと

DHLの経営状況

DHLの経営状況として、直近6年間の売上高とEBITの推移を紹介します。※EBITとは、利払前税引前利益を指します。

出典:DHL「IR Download Center

2023年度の売上高は818億ユーロ(12兆2,700億円)で、2022年度の944億ユーロ(14兆1,600億円)と比較して126億ユーロ(1兆8,900億円)減少しました。また、2023年度のEBITは63億ユーロ(9,450億円)で、2022年度の84億ユーロ(1兆2,600億円)と比較して21億ユーロ(3,150億円)減少しました。売上高が減少した要因として、荷物量・貨物量の減少と為替レートによるマイナスの影響が挙げられます。※1ユーロ=150円換算

また、地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。

出典:DHL「IR Download Center

ドイツ国内の売上高が25.6%であることから、同社の海外売上比率は74.4%です。

DHLの事業別の売上高の推移

DHLの経営状況について、事業別売上高に焦点を当てて解説します。事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。

出典:DHL「IR Download Center

ここではさらに、5事業の内容に加えて、売上高とEBITの推移を紹介します。

エクスプレス

エクスプレス事業は、ヨーロッパ・南北アメリカ・アジア太平洋地域などにおける個人向け・法人向けの宅配事業です。同事業の売上高とEBITの推移は以下のとおりです。

出典:DHL「IR Download Center

2023年度の売上高は248億ユーロ(3兆7,200億円)で、2022年度の276億ユーロ(4兆1,400億円)と比較して28億ユーロ(4,200億円)減少しました。また、2023年度のEBITは32億ユーロ(4,800億円)で、2022年度の40億ユーロ(6,000億円)と比較して8億ユーロ(1,200億円)減少しました。売上高が減少した要因として、世界経済の不確実性の高まりによる個人向け・法人向けの荷物量の減少が挙げられます。

グローバルフォワーディング

グローバルフォワーディング事業は、航空貨物・海上貨物・陸上貨物などにより、国際間の貨物輸送を担う事業です。同事業の売上高とEBITの推移は以下のとおりです。

出典:DHL「IR Download Center

2023年度の売上高は193億ユーロ(2兆8,950億円)で、2022年度の302億ユーロ(4兆5,300億円)と比較して109億ユーロ(1兆6,350億円)減少しました。また、2023年度のEBITは14億ユーロ(2,100億円)で、2022年度の23億ユーロ(3,450億円)から9億ユーロ(1,350億円)減少しました。売上高が減少した要因として、貨物量と配送料金の大幅な減少に加えて、為替のマイナスの影響が挙げられます。

サプライチェーン

サプライチェーン事業は、倉庫・輸送・付加価値サービスなど、カスタマイズされた物流サービスとサプライチェーンソリューションを提供している事業です。同事業の売上高とEBITの推移は以下のとおりです。

出典:DHL「IR Download Center

2023年度の売上高は170億ユーロ(2兆5,500億円)で、2022年度の164億ユーロ(2兆4,600億円)と比較して6億ユーロ(900億円)増加しました。また、2023年度のEBITは9億6,000万ユーロ(1,440億円)で、2022年度の8億9,000万ユーロ(1,335億円)と比較して7,000万ユーロ(105億円)増加しました。売上高が増加した要因として、Eコマースソリューション事業の拡大による新規契約と契約更新の増加が挙げられます。

ドイツ郵便

ドイツ郵便事業は、ドイツ国内において書類や商品の配達、及び世界各地への輸出を担う事業です。同事業の売上高とEBITの推移は以下のとおりです。

出典:DHL「IR Download Center

2023年度の売上高は169億ユーロ(2兆5,350億円)で、2022年度の168億ユーロ(2兆5,200億円)と比較して1億ユーロ(150億円)増加しました。一方、2023年度のEBITは9億ユーロ(1,350億円)で、2022年度の13億ユーロ(1,950億円)と比較して4億ユーロ(600億円)減少しました。売上高が増加した要因として、法人向け配送料金の上昇と荷物量の増加が挙げられます。しかし、インフレによるコストの上昇によりEBITは減少しています。

Eコマースソリューション

Eコマースソリューション事業は、ヨーロッパ・アメリカ・アジア太平洋地域における小包の宅配事業です。同事業の売上高とEBITの推移は以下のとおりです。

出典:DHL「IR Download Center

2023年度の売上高は63億ユーロ(9,450億円)で、2022年度の61億ユーロ(9,150億円)と比較して2億ユーロ(300億円)増加しました。一方、2023年度のEBITは2億9,000万ユーロ(435億円)で、2022年度の3億9,000万ユーロ(585億円)と比較して1億ユーロ(150億円)減少しました。売上高は継続して伸びましたが、コストの上昇やネットワーク拡張のための投資によりEBITは減少しています。

DHLの成長戦略

DHLは成長戦略として、「Strategy 2030」を掲げています。「Strategy 2030」では、2030年の売上高を2023年比で5割増を目指しています。その目標の実現のために、重要視しているのは以下の5つのメガトレンドです。

  • 国際貿易

サプライチェーンがますます複雑化する中、成長が期待できる。

  • Eコマース

Eコマース未開拓地の市場の可能性やデジタルネイティブの人口の増加により、成長を見込む。※デジタルネイティブとは、インターネットやパソコンのある環境で育った世代のことです。

  • 気候変動

気候変動は差し迫った問題のため、脱炭素化により新たな機会が生まれる。

  • デジタル化

自動化やAIの普及により、顧客の需要が高まる。

  • 労働力の進化

労働パターンや規模は、若者世代の仕事に対する認識の変化や新興技術が形成する。

これらのメガトレンドの機会を捉えることで、DHLは持続可能な成長を目指しています。

DHLのメガトレンドを参考にしよう

DHLはドイツを中心に世界的に活躍する物流企業です。そのDHLは次の成長の鍵として、5つのメガトレンドを重視しています。事業拡大や事業展開の仕方に迷った際は、同社の5つのメガトレンドを参考にしてみてはいかがでしょうか。

関連する事例

海外進出および展開はどのように取り組めば良い?
とお悩みの担当者様へ

海外進出および展開を検討する際に、
①どんな情報からまず集めればよいか分からない。
②どんな観点で進出検討国の現場を見ればよいか分からない。
③海外進出後の決定を分ける、「細かな要素」は何かを知りたい。

このような悩みをお持ちの方々に、プロジェクト時には必ず現地視察を行う、弊社PROVE社員が現地訪問した際に、どんな観点で海外現地を視察しているのかをお伝えさせていただきます。