
アディダスは、ドイツに本社を置く世界有数のスポーツウェアメーカーです。フットウェアやアパレル、アクセサリーを展開しており、同社の象徴である3本線の「スリーストライプ」は世界中で親しまれています。本記事ではアディダスの会社概要や経営状況、成長戦略について解説します。
アディダスとはどんな会社

出典:アディダス「History」
アディダスは、ドイツに本社を置くヨーロッパで最大手のスポーツウェアメーカーです。Reinforz Insightの「2023年最新版:世界のスポーツ用品会社ランキング時価総額TOP75」によると、2023年時点においてスポーツウェアメーカーの中で3位の時価総額を誇っています。この章では、同社の会社概要や歴史、企業理念を紹介します。
会社概要
アディダスの会社概要は以下のとおりです。
会社名 | Adidas AG |
本社 | ドイツ |
設立 | 1949年 |
従業員数 | 59,030人(2023年度) |
売上高 | 214億ユーロ(2023年度) |
歴史
アディダスの創業者アドルフ・ダスラー氏は、兄ルドルフ氏とともに、1920年に「ダスラー兄弟商会」を設立しました。この会社は、アスリートに最高の用具を提供することを使命とし、高品質なスポーツシューズの開発に力を注いでいました。
しかし、1948年に兄弟の対立が原因でダスラー兄弟商会は解散。アドルフ氏は「アディダス」を設立し、ルドルフ氏は「プーマ」を設立して、別々の道を歩むことになりました。
そして、アディダスは1949年にスリーストライプを使用し始めましたが、当時、同じ3本線を使用するメーカーが他にもありました。そこで、アディダスはスリーストライプをブランドのトレードマークにするために、そのメーカーから権利を買い取ったのです。
同社は、1954年に軽量サッカースパイクにねじ込み式スタッドを取り入れ、大きな注目を集めました。さらに、1965年にはテニスシューズを開発し、これが後の定番商品「スタンスミス」になります。1967年には、初のトラックスーツを発表し、アパレル市場への進出を果たしました。
これらの高い機能性とデザイン性を兼ね備えた製品は、多くのアスリートに愛用されるようになり、アディダスはスポーツ用品業界での地位の確立に成功したのです。
企業理念
アディダスの企業理念は、「Through sport, we have the power to change lives.(スポーツを通じて、私たちには人生を変える力がある。)」です。そして、この企業理念を実現するために、以下の価値観を重視しています。
勇気:挑戦する勇気を持ち、チャンスを見つけたら行動する。
責任感:積極的に行動し、責任を持って最後までやり遂げる。
革新:好奇心を持ち、新しい方法を試してより良い結果を追求する。
チームプレイ:仲間と協力し、共通の目標に向かって進む。
誠実さ:ルールに従って行動する。
尊重:全ての人を大切にする。
アディダスの経営状況
アディダスの経営状況として、直近6年間の売上高・営業利益の推移を紹介します。

参考:アディダス「Financial Publications」
2023年度の売上高は214億ユーロ(3兆2,100億円)で、2022年度の225億ユーロ(3兆3,750億円)と比較して、11億ユーロ(1,650億円)減少しました。また、2023年度の営業利益は3億ユーロ(450億円)で、2022年度の7億ユーロ(1,050億円)と比較して、4億ユーロ(600億円)減少しました。売上高や営業利益が減少した要因は、地政学的緊張の影響や業界全体での在庫水準の上昇が挙げられます。ただし、同社ではそれらの影響が考えられる中、予想を上回る業績だとしています。※1ユーロ=150円換算
また、2022年度の業績は、売上高が増加したのに営業利益が減少しました。その要因は、粗利の減少と営業費用の増加が挙げられます。そして、その流れが2023年度も続きました。そこで、2024年度はレトロスニーカーを強化することで成長を目指しています。
同社の地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:アディダス「Financial Publications」
グラフから、アディダスは世界中で売上を確保していることがわかります。
アディダスの製品別売上高の推移
アディダスの経営状況について、製品別売上高に焦点を当てて解説します。同社の製品別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:アディダス「Financial Publications」
フットウェアとアパレルの製品で売上高の93%を占めており、これらが同社の主要製品と言えます。この章では製品別の売上高の推移を紹介します。
フットウェア
フットウェア製品の売上高の推移は以下のとおりです。

参考:アディダス「Financial Publications」
2023年度の売上高は121億ユーロ(1兆8,150億円)で、2022年度の123億ユーロ(1兆8,450億円)と比較して、2億ユーロ(300億円)減少しました。フットウェア製品の売上高が減少した要因は、イージー(YEEZY)ブランド撤退の影響が挙げられます。
※「イージー」はアメリカの人気歌手カニエ・ウエスト氏と同社が手掛けたブランドで、2015年に開始以来、大成功を収めていました。しかし、同氏の問題行動によって「アディダスの不買運動」が起こり、同社はイージー事業の撤退を決定。これにより、北アメリカでの売上が2022年度と比較して18.5%減少するなど、大きな痛手となりました。
アパレル
アパレル製品の売上高の推移は以下のとおりです。

参考:アディダス「Financial Publications」
2023年度の売上高は78億ユーロ(1兆1,700億円)で、2022年度の87億ユーロ(1兆3,050億円)と比較して、9億ユーロ(1,350億円)減少しました。アパレル製品の売上高が減少した要因は、同市場全体の在庫水準の上昇が挙げられます。ただし、このような背景の中でも、アウトドアとバスケットボールのアパレル製品は2桁成長を達成しました。
アクセサリー・ギア
アクセサリー・ギアは、アクセサリーやトレーニングギア、小物、雑貨などの製品のことです。アクセサリー・ギア製品の売上高の推移は以下のとおりです。

参考:アディダス「Financial Publications」
2023年度の売上高は15億ユーロ(2,250億円)で、2022年度と同じ水準を維持しました。なお、フットボール関連のアクセサリー・ギアが特に好調で、2桁成長を達成しています。
アディダスの成長戦略
アディダスは2025年までの成長戦略として「Own the Game」を掲げています。
同戦略の主な目的はアディダスブランドの信頼性を強化すること、独自の消費者体験を創造すること、さらにサステナビリティの領域における活動を拡大することです。この戦略に則って、2025年までに10品目のうち9品目は持続可能な素材で製造する予定です。
他にも以下のような具体的な目標値を設定しています。
- eコマースの売上高は2倍の80億ユーロから90億ユーロに
- 10億ユーロ以上の投資によるデジタルトランスフォーメーションの実現
- 2021年から2025年、平均で、年間8%から10%の売上高成長率
- 平均12%から14%の水準の営業利益率を達成
- 2021年から2025年において、純利益は平均で、年間16%から18%の成長
- 株主に総額80億ユーロから90億ユーロのキャッシュリターンを提供
引用:アディダス「アディダス、2025年までの成長戦略「Own the Game」を発表」
アディダスの成功の秘訣は戦略的なマーケティング
アディダスはドイツに本社を置くスポーツウェアメーカーです。同社がヨーロッパ最大のスポーツウェアメーカーに成長した要因の一つに、マーケティングが挙げられます。例えば、創業当初から「スリーストライプ」をトレードマークにして、他のブランドとの差別化を図ってきました。さらに、一流アスリートとのスポンサー契約によるブランドイメージの向上も功を奏しています。事業拡大や海外進出を検討している経営者様は、同社のマーケティング手法を参考にしてみてはいかがでしょうか。