ウォルマートとは?世界最大の小売企業の現状や事業戦略を解説

出典:Walmart

日本でディスカウントストアと聞けばドン・キホーテを思い浮かべる方が多いでしょう。

しかし、世界に目をやるとディスカウントストアとして有名なのはウォルマートです。ウォルマートは6,000億ドル以上を売上ており、世界最大の小売企業としても知られています。

本記事では海外進出を検討している企業に向けて、ウォルマートの概要や事業内容、成功している理由などについて解説します。

ウォルマートとは?世界最大の小売企業

出典:Walmart

ウォルマートとは、アメリカに本社をおく世界最大の小売企業です。19カ国に10,500店舗以上を出店しており、近年ではEC事業にも力を注いでいます。この章ではウォルマートの会社概要や企業理念、事業内容について解説します。

会社概要

ウォルマートの会社概要は以下のとおりです。

会社名ウォルマート(Walmart Inc.)
本社アメリカ
売上高6,113億ドル(2023年3月期)
店舗数10,509店舗 内訳 ウォルマートU.S. 4,616店舗 ウォルマート・インターナショナル 5,294店舗 サムズクラブ 599店舗
海外進出19カ国
従業員数 (2023年度末時点)世界:210万人 アメリカ:160万人

参考:Walmart「Location Facts

ウォルマートはアメリカに本社をおく、世界最大の小売企業です。2022年度の売上高は6,113億ドル(88兆6,385億円)でした。2023年のAmazonの売上高が5,747億ドル(83兆3,025億円)であることからも、その規模の大きさがわかるでしょう。

ウォルマートは創業者のサム・ウォルトンがベン・フランクリンに雑貨店を開いたのが始まりです。現在のディスカウント路線は、1962年にディスカウト・シティ1号店の開店が始まりです。またウォルマートは一族経営企業としても知られています。ウォルトン一族の総資産は、25兆円を超えるといわれ、大富豪一族としても注目を集めています。

企業理念

ウォルマートをこれほど大きな小売企業に押し上げたのは、企業理念の「EDLP(エブリデイ・ロー・プライス)」です。EDLPは常時低価格販売とも呼ばれ、幅広い品揃えを毎日低価格で提供する販売戦略でもあります。

日本では特売日などのように決まった曜日や日にセールを行うのが一般的ですが、ウォルマートは毎日低価格で提供することで、消費者の購入体験を高めているのです。

このような企業理念は、「We Save People Money So They Can Live Better(私たちは低価格で価値ある購入体験を提供し、消費者のより良い生活の実現に寄与します)」という合言葉にもつながっています。

またウォルマートの創業者サム・ウォルトンは従業員をビジネス上の仲間やパートナーと認識し、従業員の参画が経営に望ましい結果をもたらすと信じていました。

そのため消費者に加えて、従業員の満足度を重視する風土があり、労使一体となった経営が特徴といえます。

事業内容

ウォルマートの事業内容は、主に以下の3つのセグメントに分かれています。

・ウォルマートU.S.

ウォルマートU.S.はアメリカの50の州とプエルトリコに店舗を出店・運営している事業です。大型店舗のスーパーセンター、ディスカウントストア、小型店舗のネイバーフッドマーケットを出店地域に合わせて展開しています。これらに加えて、ECサイトの運営にも注力しています。

  • ウォルマート・インターナショナル

ウォルマート・インターナショナルは、米国外の事業を統括する事業です。アフリカやカナダ、中米、チリ、中国、インド、メキシコなど19カ国で5,000店舗以上を運営しています。

  • サムズクラブ

サムズクラブは会員制スーパーマーケット(ホールセールクラブ)です。創業者のサム・ウォルトンにちなんで名づけられ、ホールセールクラブの代表格に成長しています。

ウォルマートの経営状況

ウォルマートの2023年度の売上高は6,113億ドルで、前年比6.7%の増加でした。営業利益は204億ドルで前年比-21.3%となっています。ウォルマートの売上高の推移は以下のとおりです。

参考:Walmart「Financials

グラフからわかるように、売上高は右肩上がりに拡大していますが、営業利益は200億ドル~280億ドルを推移しています。

また、地域別の売上高は以下のとおりです。

参考:Walmart「Financials

ウォルマートは83.3%(5,049億ドル)をアメリカで売上ており、次いでメキシコ・中米の6.7%(405億円)、カナダの3.7%(223億円)、中国2.4%(147億円)と続きます。

ウォルマートの主力事業

ウォルマートが年々売上高を拡大している要因について、各主力事業の売上高・営業利益の推移から考察します。また2022年の各事業の売上高・営業利益は以下の表のとおりでした。

売上高営業利益
ウォルマートU.S.4206億ドル206億ドル
ウォルマート・インターナショナル1010億ドル30億ドル
サムズクラブ843億ドル20億ドル

参考:Walmart「Financials

ウォルマートU.S.

ウォルマートU.S.事業は、全体の売上高の68.8%を占める事業です。ウォルマートの主要事業のなかでも最も重要な事業で、2022年度の営業利益は206億ドル(2兆9,870億円)でした。ウォルマート U.S.事業の売上高・営業利益の推移は以下のとおりです。

参考:Walmart「Financials

近年、売上が拡大している要因にEC事業の成功が挙げられます。

ウォルマート U.S.のEC事業の売上高は公表されていません。しかし、前年比で2022年度が17%、2021年度が18%の増加でした。2年連続で2桁の売上拡大を達成したとのことです。

ウォルマートはディスカウントストアで実店舗に強みを持つ企業ですが、EC事業にも注力することで売上が拡大しているといえるでしょう。

ウォルマート・インターナショナル

ウォルマート・インターナショナルは、全体の売上高の16.5%を占める事業です。2022年度の営業利益は30億ドル(4,350億円)でした。ウォルマート・インターナショナル事業の売上高・営業利益の推移は以下のとおりです。

参考:Walmart「Financials

2022年度は30億ドルの営業利益を計上しているものの、前年比で21.1%も減少しています。売上高も1,000~1,400億ドルで横ばいの状態で、近年は苦戦が続いている事業といえるでしょう。

サムズクラブ

サムズクラブは全体の売上高の13.8%を占める事業です。2022年の営業利益は20億ドルでした。サムズクラブ事業の売上高・営業利益の推移は以下のとおりです。

参考:Walmart「Financials

サムズクラブは、ウォルマートの主要事業のなかで最も小さい事業ですが、2年連続で10%以上の売上アップを達成し、近年急速に売上を拡大しています。またサムズクラブは会員制のスーパーマーケットのため、利用者の増加に伴い会員収入の増加も売上を押し上げています。

ウォルマートの各事業の事業戦略

ウォルマートの推進力となっている事業はウォルマートU.S.です。

ウォルマートU.S.は従来のディスカウントストアに加えて、EC事業に成功したのが大きなポイントです。またウォルマートU.S.は新たな取り組みとしてリテールメディア事業にも乗り出しています。

リテールメディアとは、オウンドメディアやECサイト上の広告枠、小売店のディスプレイ(デジタルサイネージ)に広告を表示して収入を得る手法のことです。ウォルマートのリテールメディア事業は27億ドルを売上ており、今後の安定した収入源としても期待されています。

世界最大の小売企業のウォルマートが日本撤退

ウォルマートは、EDLPの常時低価格販売戦略により大きな成功を収めた企業です。しかし、ウォルマート式のスーパーマーケットは日本進出に失敗し、すでに撤退しています。

日本では日常的に安いのではなく、定期的にセールなどを開催する手法が好まれたことが要因と考えられています。つまり、日本の文化の違いに対応できなかったことが失敗した理由といえるでしょう。

いいかえれば、アメリカに進出するのであれば、すでに成功を収めているウォルマートを参考にすることで成功の可能性を高められるはずです。

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