Iberdrola(イベルドローラ)の会社概要や経営状況を解説 

地球温暖化や環境汚染などを抑制するために、世界中で温室効果ガスの排出量削減の取り組みが進められています。 

そのような時代背景のなか、風力発電の分野を牽引している企業がIberdrola(イベルドローラ)です。 

本記事では、再生可能エネルギーの分野で活躍するイベルドローラの会社概要・経営状況・成長戦略を紹介します。 

Iberdrola(イベルドローラ)とはどんな会社? 

出典:Iberdrola 

イベルドローラはスペインに本社をおく風力大手企業です。この章では、会社概要・経営理念・事業内容を紹介します。 

会社概要 

イベルドローラの会社概要は以下のとおりです。 

会社名 Iberdrola, S.A. 
設立 1992年 
本社 スペイン 
従業員数 42,276名(2023年末時点) 
進出地域 30カ国 
売上高 493億ユーロ(2023年) 

イベルドローラの始まりは、1840年のThe Hartford City Light Companyの設立です。180年以上の歴史を持ち、20年以上にわたって再生可能エネルギーの推進に取り組んでいます。2023年のイベルドローラの保有する総発電容量は62,871MWで、世界の1億人以上に電力を供給しています。 

経営理念 

イベルドローラの経営理念は、「To continue building together each day a healthier, more accessible energy model, based on electricity.(電力をベースに、より利便性の高いエネルギーモデルを構築し続けること)」です。 

また、経営理念の実現のために以下の3つの要素を重視しています。 

  • Sustainable energy(持続可能なエネルギー) 

透明性や人々の安全を確保し、持続可能な価値を創造することに努めること。 

  • Integrating force(統合力) 

社員の才能を集結し、すべての人や達成すべき目的のために働くこと。 

  • Driving force(原動力) 

常に継続的な改善を追求し、人々の生活を快適にする大小の変化を革新的なアイデアにより推進すること。 

事業内容 

イベルドローラの主な事業分野は以下の6つです。 

  • 洋上風力発電 
  • グリーン水素 
  • 陸上風力発電 
  • スマートグリッド 
  • 太陽光発電 
  • 水力発電 

※グリーン水素とは、再生可能エネルギーを活用して生成する水素のこと。 

※スマートグリッドとは、次世代の電力網のことで、需給側・供給側の双方から電力量をコントロールできる仕組みのこと。 

イベルドローラは20年前から風力発電の取り組みを開始しました。他の企業よりも早く取り組んだことで、高い技術力や豊富な経験を持つことがイベルドローラの風力発電の強みといえます。 

また、イベルドローラは風力発電の次の革新的なソリューションとして、風力エネルギーのデジタル化にも取り組んでいます。風力エネルギーのデジタル化とは、AIや過去のビッグデータの分析などから信頼性の高い気象予測を可能にする取り組みです。 

デジタル化を実現することで、生産性の向上や競争力のあるエネルギー源に成長すると期待されています。 

Iberdrola(イベルドローラ)の経営状況 

イベルドローラの経営状況を売上高・営業利益の推移から考察します。売上高・営業利益の推移は以下のとおりです。 

参考:Iberdrola「Annual reports」 

イベルドローラの2023年の売上高は493億ユーロ(約7.3兆円)で、前年と比較すると約8%の減少となりました。しかし、全体でみると売上高は増加傾向にあります。営業利益においては右肩上がりに成長しており、2023年は90億ユーロ(約1.3兆円)で、前年比12%の増加となりました。 

再生可能エネルギーに注目が集まるなかで、大きく成長している企業といえます。 

また、地域別の売上高の推移は以下のとおりです。 

参考:Iberdrola「Annual reports」 

上記のグラフから、イベルドローラは欧米を中心に進出しているとわかります。 

Iberdrola(イベルドローラ)の設備容量の推移 

イベルドローラの成長を支えている分野を把握するために、この章では各分野の設備容量に注目してみます。 

まずは2023年のイベルドローラの総設備容量は62,883MVで、構成割合は以下のとおりです。 

参考:Iberdrola「Annual reports」 

Renewables(再生可能エネルギー)の設備容量は42,187MWで、全体の67%を占めています。さらに各分野の設備容量の推移を紹介します。 

Renewables(再生可能エネルギー) 

Renewablesは再生可能エネルギーを利用した発電方法で、内訳は以下のとおりです。 

参考:Iberdrola「Annual reports」 

イベルドローラは風力発電のグローバルリーダーだけあり、陸上風力発電が再生可能エネルギーを利用した発電方法の約半分を占めています。 

また、再生可能エネルギーの設備容量の推移は以下のとおりです。 

参考:Iberdrola「Annual reports」 

再生可能エネルギーの設備容量は年々増加しており、2023年は79,549MWで前年比6%増でした。イベルドローラはすでに1万基以上の風力発電を設置していますが、今後も再生可能エネルギーによる発電方法を拡大するとみられています。 

Nuclear(原子力発電) 

原子力発電の設備容量の推移は以下のとおりです。 

参考:Iberdrola「Annual reports」 

近年の原子力発電の設備容量は、24,000MW前後を推移している状態です。しかしスペインでは、2024年1月にサンチェス政権が原子力発電を2035年までに、段階的に閉鎖することを閣議決定しています。 

イベルドローラの原子力発電の設備容量があるのはスペインのみであることから、今後、原子力発電の設備容量は段階的に減ると思われます。 

参考:NNA ASIA「スペイン、脱原発を閣議決定」 

Combined cycle(コンバインドサイクル) 

コンバインドサイクルとは、ガスタービンとスチームタービンを組み合わせた発電方法のことです。コンバインドサイクルは、一般的な火力発電と同様に燃料を燃焼させてガスタービンを回し、火力発電では捨てる排熱でスチームタービンを回すことで効率的に発電します。 

コンバインドサイクルの設備容量の推移は以下のとおりです。 

参考:Iberdrola「Annual reports」 

コンバインドサイクルの設備容量は2019年に大幅に増加したものの、その後は横ばいの状態が続いています。 

Cogeneration(コジェネレーション) 

コジェネレーションとは天然ガスや石油などを利用して発電を行い、その際に生じる排熱を工場や家庭の冷暖房や給湯設備に利用する仕組みのことです。排熱を再利用する仕組みのため、熱効率に優れています。 

コジェネレーションの設備容量の推移は以下のとおりです。 

参考:Iberdrola「Annual reports」 

コジェネレーションの設備容量は減少傾向にあり、2023年は6,105MWでした。イベルドローラ全体に占める割合は1.9%と小さく、積極的に推進しているとはいえないでしょう。 

Iberdrola(イベルドローラ)の成長戦略 

イベルドローラの成長戦略は、再生可能エネルギーの拡大にあります。 

2024年3月21日、イベルドローラ会長のイグナシオ・ガラン氏は「エネルギーの電化はとめることができず、今後数年間で指数関数的に拡大する」と指摘しています。そこで、イベルドローラはさらに電化を加速するために、2026年までに410億ユーロ(約6.1兆円)を投入することを発表しました。 

つまり、成長戦略として今後も再生可能エネルギーに莫大な資金を投資する予定です。 

参考:Iberdrola「Iberdrola will invest €41 billion and hire 10,000 people by 2026 to accelerate electrification」 

脱化石燃料に向けて取り組みを加速させるイベルドローラ 

イベルドローラは、洋上風力発電・陸上風力発電において世界トップクラスの設備容量を誇っています。さらにはグリーン水素の開発・生成にも積極的に取り組んでおり、2030年までに年間生産量350,000トンを目標としています。 

このように、持続可能なエネルギーの普及に向けた取り組みを加速させる予定のため、今後の動向にも注目しましょう。 

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