ゴルフは2021年時点で260の国でプレーされており、世界的なスポーツの1つです。
日本でも人気のスポーツで、ゴルフ用品を取り扱う国内メーカーも多数あります。そのメーカーのなかで、世界進出に成功した企業が住友ゴム工業株式会社です。
本記事では世界進出を検討している方の参考となるように、住友ゴム工業株式会社の海外進出の歴史や戦略をわかりやすく紹介します。
参考:R&A「Golf Around the World」
ゴルフ用品の市場規模
Mordor Intelligenceの「ゴルフ用品の市場規模と市場規模株式分析」によると、2023年のゴルフ用品市場規模は111億ドル(約1兆6,650億円)でした。それが5年後の2028年には、136.5億ドル(約2兆475億円)に拡大する見込みです。※1ドル=150円換算
世界市場は成長を続けている一方で、日本の市場規模は減少しています。GfK Japanの「2023年 主要ゴルフ用品市場動向」によると、2023年の日本のゴルフ用品市場は前年比で4.7%減少したとのことです。
つまり、国内のゴルフ用品メーカーにとっては、成長を続けるために世界進出が必要な状況といえます。
国内・海外のゴルフ人口
R&A とスポーツマーケティング・サーベイズの「Record Numbers Now Playing Golf Worldwide」によると、2021年の世界のゴルフ人口は6,660万人でした。2016年の6,100万人から550万人も増加しており、2012年の6,160万人を超えて過去最高を記録しています。
ゴルフが世界で人気の理由は、年齢や性別を問わずに楽しめるスポーツであることや、オリンピックに採用されたことなどが挙げられます。
一方、日本の2022年のゴルフ人口は、笹川スポーツ財団の「スポーツライフ・データ」によると856万人でした。2000年と比較して476万人の減少で、約20年で3割以上が減少していることになります。
このことからも、国内のゴルフ用品メーカーには海外進出が重要な成長戦略になっていることが伺えます。
ゴルフ用品メーカーの世界ランキング
ゴルフ用品メーカーの世界ランキングのトップ5は以下のとおりです。
順位 | 企業名 | 売上高 | 国 |
1位 | Topgolf Callaway Brands Corp | 42億ドル(2023年) ※6,426億円 | アメリカ |
2位 | Acushnet Holdings Corp. | 23億ドル(2023年) ※3,573億円 | アメリカ |
3位 | 住友ゴム工業株式会社 | 1,266億円(2023年) ※スポーツ事業の売上高 | 日本 |
4位 | ミズノ株式会社 | 334億円(2023年) | 日本 |
5位 | 株式会社デサント | 315億円(2024年) | 日本 |
1位のTopgolf Callaway Brands Corpは、「Callaway(キャロウェイ)」や「ODYSSEY(オデッセイ)」などの有名ブランドを展開する企業です。ゴルフ用品メーカーのなかでは、圧倒的な売上を誇っています。
2位のAcushnet Holdings Corp.は、「Titleist(タイトリスト)」のブランドを展開する企業です。ゴルフクラブやパター、シューズなどの幅広いゴルフ用品を取り扱っています。
3位の住友ゴム工業株式会社は、「XXIO(ゼクシオ)」や「SRIXON(スリクソン)」のブランドを展開する企業です。「ゼクシオ」は、日本において絶大な人気を誇っています。
住友ゴム工業株式会社とは
出典:ダンロップ スポーツ
住友ゴム工業株式会社のスポーツ事業は、ゴルフ用品やテニス用品の製造・販売を行っており、世界3位の売上高を誇っています。
スポーツ事業は2017年まで子会社のダンロップスポーツ株式会社が担っていました。しかし、現在は住友ゴム工業株式会社に吸収合併され、「ダンロップ」はゴルフ用品のブランド名として定着しています。
この章では住友ゴム工業の会社概要や売上高の推移、海外進出の歴史・戦略を紹介します。
住友ゴム工業株式会社の会社概要
住友ゴム工業株式会社の会社概要は以下のとおりです。
会社名 | 住友ゴム工業株式会社 |
創業 | 1909年 |
設立 | 1917年 |
従業員 | 7,705名(連結39,975名) |
事業内容 | タイヤ、アルミホイール、ゴルフ用品、テニス用品、医療用ゴム製品、制振ダンパーなど |
関係会社の状況 | 国内:27社 海外:73社 |
売上高 | 11,774億円(2023年) |
海外売上比率 | 70.5% |
住友ゴム工業株式会社には、タイヤ・スポーツ・産業品他の3つの事業があります。2023年の事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。
参考:住友ゴム工業株式会社「IRライブラリ」
主要事業であるタイヤ事業の売上高は1兆円を超え、全体の85.5%を占めています。次に売上高が多いのはスポーツ事業の1,266億円でした。
また、地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。
参考:住友ゴム工業株式会社「IRライブラリ」
地域別売上高の構成割合から、住友ゴム工業株式会社がグローバルに活躍する企業とわかります。
スポーツ事業の売上高の推移
住友ゴム工業株式会社のスポーツ事業の現状を売上高の推移から考察します。過去5年間の売上高の推移は以下のとおりです。
参考:住友ゴム工業株式会社「IRライブラリ」
スポーツ事業は2020年に7億円の赤字に陥っていますが、2021年以降は急激に売上高・営業利益を回復しています。2023年には1,200億円を突破し、営業利益が125億円でした。
住友ゴム工業株式会社の2023年の営業利益が777億円であることから、スポーツ事業の営業利益は同社の16%を占めています。このことから、住友ゴム工業株式会社の成長にスポーツ事業は貢献しているといえます。
海外進出の歴史
スポーツ事業が拡大している要因の1つは海外進出の成功です。ここでは、スポーツ事業の海外進出の歴史を紹介します。
- 1930年:日本初のゴルフボールを生産開始
- 1964年:ゴルフクラブを生産開始
- 1996年:東南アジアの販売会社を設立
- 1996年:「SRIXON(スリクソン)」の誕生
- 1997年:北米に販売会社を設立
- 2001年:欧州に販売会社を設立
- 2002年:オセアニアに販売会社を設立
- 2009年:中国・香港に販売会社を設立
- 2011年:韓国に販売会社を設立
このように主要な地域に販売会社を設立し、販売拠点を構築しているのがスポーツ事業の海外進出の特徴です。2023年時点で、スポーツ事業の関係会社が国内に1社、海外に12社あります。
海外進出の戦略
住友ゴム工業株式会社のゴルフ用品の主要ブランドは、「ゼクシオ」と「スリクソン」です。「ゼクシオ」は国内向けのブランドで、国内において絶大な人気を誇っています。
一方、「スリクソン」は1996年に東南アジアでゴルフボールを販売する際に誕生し、世界戦略のブランドとして位置づけられています。
スリクソンが世界的に知名度を高めたのは、スリクソンのゴルフボールを使ったプロゴルファーが1999年に世界のプロゴルフツアーで15勝を挙げたことです。その後、ダンロップの契約選手の畑岡奈沙選手や松山英樹選手がアメリカで活躍したことで、一気に世界ブランドに躍進しました。
つまり、世界進出の成功の要因は、トッププレイヤーとスポンサー契約することで自社のブランドイメージを高めたことにあるといえます。
参考:ゴルフサプリ「SRIXON(スリクソン) 今だから言える驚きのストーリー」
ビジネスチャンスを掴むために海外進出を検討しよう
ゴルフは世界206カ国で6,660万人が楽しむスポーツです。住友ゴム工業株式会社のゴルフ用品の取り組みは、世界のゴルフ需要を獲得した良い事例といえます。
ゴルフ用品以外にも、海外には多くのビジネスチャンスがあります。事業を拡大したい経営者は、この機会に海外進出を検討してみてはいかがでしょうか。