スポーツバイク部品で世界1位!株式会社シマノの海外進出の戦略とは

スポーツバイクとは走行性能に優れた自転車のことです。軽量で快適に走れることから日本のみならず、世界中で人気があります。

株式会社シマノは、そのようなスポーツバイク業界で活躍している自転車の部品メーカーです。

本記事では海外進出を検討している経営者に向けて、株式会社シマノがスポーツバイクの部品でどのようにして海外進出に成功したのかを解説します。

スポーツバイクの市場規模

株式会社シマノについて解説する前に、スポーツバイクの市場規模を紹介します。

Global Informationの「スポーツ自転車市場」の調査によると、2023年のスポーツバイクの世界市場規模は169億4,000万ドル(約2兆5,410億円)でした。2024年には183億4,000万ドル(約2兆7,510億円)、2030年には298億3,000万ドル(約4兆4,745億円)に達する見込みです。※1ドル=150円換算

予想される年平均成長率は8.42%で、急成長が期待されている分野といえます。

国内・海外のスポーツバイク業界の現状

次に、スポーツバイク産業の現状を把握するために、国内と世界の動向を紹介します。

世界では、健康志向の高まりや環境に配慮した移動手段としてスポーツバイクの需要が高まっています。とくに需要の多い地域は、北米・欧州・アジアです。そのなかでもアジアのスポーツバイク市場は年々拡大しています。

一方、国内においてはスポーツバイクを選ぶ人が増えています。一般財団法人 自転車産業振興協会の「2021年度 ⾃転⾞保有並びに使⽤実態に関する調査報告書」によると、自転車の種類別割合の推移は以下のとおりです。

出典:一般財団法人 自転車産業振興協会「2021年度 ⾃転⾞保有並びに使⽤実態に関する調査報告書

※グラフ中のスポーツ車はスポーツバイクのこと

スポーツバイクの日本における割合は、2012年の4.6%から2021年に9.0%まで拡大しています。このように聞くと、スポーツバイク業界の将来は明るいように思うかもしれません。しかし、日本の自転車保有台数が減少の一途をたどっており、今後もその傾向は続くとみられています。

出典:一般財団法人 自転車産業振興協会「2021年度 ⾃転⾞保有並びに使⽤実態に関する調査報告書

つまり、国内は自転車業界の規模が縮小しており、スポーツバイク業界においてもいずれ頭打ちとなるでしょう。そこで自転車業界においては、事業を成長させるには海外進出が必要な状態といえます。

自転車メーカーの世界ランキング

自転車産業においてどのような企業が活躍しているのかを把握するために、世界の自転車メーカーの売上高ランキングを紹介します。

順位企業名売上高国・地域
1位株式会社シマノ3,646億円(2023年)日本
2位Giant Group769億台湾ドル(2023年) ※約3,462億円(1台湾ドル=4.5円換算)台湾
3位Pon Bicycle Holding B.V.24億ユーロ(2022年) ※3,360億円(1ユーロ=140円換算)オランダ
4位パナソニック サイクルテック株式会社446億円(2023年)日本
5位Brompton Bicycle1億690万ポンド(2022年) ※171億円(1ポンド=160円換算)イギリス

株式会社シマノは自転車の部品メーカーであるものの、自転車業界全体でみても世界1位の企業です。

株式会社シマノとは

出典:株式会社シマノ

自転車メーカーとして世界トップシェアを獲得している株式会社シマノは、変速機やブレーキに定評があります。変速機は世界シェアの8割を獲得するほど、スポーツバイクに不可欠な部品です。この章では株式会社シマノの会社概要や売上高の推移、海外進出の歴史・戦略を紹介します。

会社概要

株式会社シマノの会社概要は以下のとおりです。

会社名株式会社シマノ(英文社名:SHIMANO INC.)
本社大阪府
創業1921年2月
設立1940年
従業員数1,651人(連結:9,703人)
世界の海外拠点数約50拠点
売上高4,743億円(2023年)
海外売上比率89.7%

株式会社シマノの事業内容は、自転車部品と釣具の製造や販売です。海外売上比率が89.7%と高いのが特徴で、世界進出により大きな利益を生み出しています。

自転車部品と釣具の売上高の割合は以下のとおりです。

参考:株式会社シマノ「決算短信

株式会社シマノは釣具メーカーとしても知られていますが、自転車部品のほうが圧倒的に売上が多いことがわかります。

自転車部品事業の売上高・営業利益の推移

株式会社シマノの自転車部品事業の現状を売上高の推移から考察します。過去5年間の売上高の推移は以下のとおりです。

参考:株式会社シマノ「決算短信

2021年と2022年は、新型コロナウイルス流行の影響で巻き起こった「自転車ブーム」を背景に、売上を大きく伸ばしました。ブームが落ち着いた2023年においても、ブーム前の2019年や2020年と比較すると、20%以上も伸びています。

さらに株式会社シマノは、海外売上比率が高い企業です。自転車部品事業においても、海外売上比率が高く、地域別の構成割合は以下のとおりです。

参考:株式会社シマノ「決算説明資料

自転車部品事業の売上高は地域別にみると、欧州が半分を占めており、日本がわずか2.9%でした。このグラフをみても、株式会社シマノは海外進出に成功した企業とわかります。

海外進出の歴史

株式会社シマノの海外進出の歴史についてまとめます。

  • 1922年:自転車部品のフリーホイールの生産に着手
  • 1957年:自転車部品の内装変速機の生産を開始
  • 1961年:アメリカの「インターナショナル・トイ・アンド・サイクルショー」に内装変速機を初出展
  • 1965年:アメリカに現地法人を設立
  • 1972年:西ドイツに現地法人を設立
  • 1983年:カナダに現地法人を設立

その後も各国に現地法人を設立し、販売拠点を着実に増やしていくことで、現在の知名度と世界シェアを獲得するに至ります。

海外進出の戦略

株式会社シマノの海外進出は、1961年にアメリカのイベントに内装変速機を出展し、1965年にアメリカに現地法人を設立したのが始まりです。

特徴的な戦略は「キャラバン隊」です。キャラバン隊はアメリカの小売店から情報を収集するために編成されたチームで、約3年にわたってアメリカの販売店を調査しました。

キャラバン隊の地道な情報収集によりニーズをいち早くキャッチするのに成功し、株式会社シマノはマウンテンバイクの流行を予想します。マウンテンバイク用の製品を他メーカーよりも先に投入したことで、世界的な自転車部品メーカーに躍進したのです。

世界進出するなら円安の今がチャンス!

世界進出をするなら今が絶好のチャンスです。なぜなら、1ドル=156円(2024年5月15日時点)という記録的な円安のためです。

株式会社シマノのように、海外進出により「事業を拡大させたい」や「事業を安定させたい」と考えている経営者は多いでしょう。そのような経営者は輸出企業に有利に働く円安を生かし、世界進出を目指してみてはいかがでしょうか。

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