SAFで注目のネステとはどんな会社?会社概要や経営状況を解説 

Neste(ネステ)は、持続可能な航空燃料のSAFや再生可能なディーゼル燃料などを開発・販売している企業です。持続可能な社会の実現に役立つソリューションを提供することで成長しています。 

しかし、「どのような分野で成長しているのか知りたい」や「事業内容や経営状況を知りたい」といった方もいるでしょう。 

そこで、本記事ではネステの会社概要・経営状況・成長戦略についてわかりやすく紹介します。 

Neste(ネステ)とはどんな会社? 

出典:Neste 

ネステはフィンランドに本社を置くエネルギー関連企業です。この章ではネステの会社概要や企業理念、主力製品のSAFについて紹介します。 

会社概要 

ネステの会社概要は以下のとおりです。 

会社名 Neste Oyj 
設立 1948年 
本社 フィンランド 
従業員数 6,018人 
進出地域 16カ国 
売上高 229億ユーロ(2023年) 

ネステは1948年にフィンランドの国営石油会社として設立されました。現在では、持続可能な航空燃料のSAFや再生可能なディーゼル燃料、プラスチック向け再生可能原料のバイオマスナフサを開発・提供しています。 

2023年、ネステはこれらの再生可能エネルギーソリューションにより、1,100万トンの温室効果ガス排出量削減に貢献しました。2024年には、再生可能製品の年間生産能力を550万トンに引き上げる予定です。 

企業理念 

ネステの目的は、「Creating a healthier planet for our children.(子どもたちのためにより健康な地球を作る)」です。この目的の達成のために、ネステは持続可能性に対して高い目標を掲げています。 

具体的な目標は、以下の4つの項目で構成される「サステナビリティビジョン」です。 

  • Climate(気候) 

2040年までのカーボンニュートラルなバリューチェーンの実現に向けた変革を主導する 

  • Biodiversity(生物多様性) 

2040年までに自然にポジティブなバリューチェーンを達成する 

  • Human rights(人権) 

誰もが尊厳を持って働けるバリューチェーンを2030年までに構築する 

  • Supply chain(サプライチェーン) 

安全で健康的な職場や公正な労働慣行など、サプライチェーン全体にわたる持続可能性への取り組みを強化する 

これらの取り組みにより、ネステは2024年の「世界で最も持続可能性の高い100社(Global 100)」の19位にランクインしています。 

SAF(サフ)とは 

ネステの主力製品は、持続可能な航空燃料のSAFや再生可能なディーゼル燃料です。 

SAF(サフ)とは、廃食油やバイオマス燃料、都市ごみ、廃プラスチックなどから作られる代替航空燃料のことです。 

ネステのSAFの原料には、100%再生可能な廃棄物や原材料残渣が用いられています。そのため、化石燃料を原料とする航空燃料と比較すると最大80%の温室効果ガス排出量を削減できます。 

SAFのメリットは既存の航空エンジンと互換性があり、化石燃料を原料とする航空燃料と代替できることです。使用するのに設備への追加投資の必要性がないことから、世界中で普及が推進されています。日本政府においても、2030年までに本邦エアラインの燃料使用量の10%をSAFに置き換える目標を掲げています。 

SAFについて詳しく知りたい方は、「SAFとは?持続可能な航空燃料のメリット・取り組み事例を紹介」の記事をご確認ください。 

Neste(ネステ)の経営状況 

ネステの経営状況を売上高・営業利益の推移から考察します。売上高・営業利益の推移は以下のとおりです。 

参考:Neste「Annual Report 2023」 

ネステの2023年の売上高は229億ユーロ(約3.4兆円)で、前年と比較すると約10%の減少となりました。しかし、グラフから高い水準を維持していることがわかります。 

2023年の大きな動きは、シンガポールにおける再生可能エネルギーの生産能力の増強を目的とした、16億ユーロの巨大プロジェクトが完了したことです。このプロジェクトにより、シンガポールの拠点では年間最大100万トンのSAFを生産できるようになりました。 

SAFの生産能力が向上したことで、さらなる成長が期待されています。 

また、ネステの地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。 

参考:Neste「Annual Report 2023」 

ネステの売上高の構成割合は7割がヨーロッパで、残りの3割をアメリカ大陸が占めています。そのため、アジアへの進出が進んでいないといえるでしょう。 

Neste(ネステ)の事業別売上高の推移 

ネステの成長を支える事業を理解するために、この章ではネステの事業別の売上高を紹介します。 

まずは、事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。 

参考:Neste「Annual Report 2023」 

グラフから3つの主要事業がそれぞれ売上を確保していることがわかります。それでは、各事業の内容、売上高と営業利益の推移を紹介します。 

Renewable Products 

Renewable Productsは再生可能な製品を開発・製造する事業です。主力製品には再生可能な航空燃料のSAFや再生可能なディーゼル燃料、再生可能なプラスチックの原料などがあります。 

売上高・営業利益の推移は以下のとおりです。 

参考:Neste「Annual Report 2023」 

2023年の売上高は82億ユーロ(約1.2兆円)で、2019年と比較すると2.2倍に拡大しています。売上高は上昇傾向が続いている一方で、営業利益は右肩下がりの状態です。2023年の営業利益は5.7億ユーロ(約855億円)で、2019年と比較すると約7割減となっています。 

Oil Products 

Oil Productsは、石油関連製品の事業です。ガソリンやディーゼル燃料、航空燃料などの石油製品をベースにした低炭素ソリューションを開発・販売しています。売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。 

参考:Neste「Annual Report 2023」 

2020年に赤字に転落したものの、その後はV字回復に成功しています。売上高・営業利益ともに好調で、ネステの安定した経営を支えているといっても過言ではありません。 

Marketing & Services 

Marketing & Servicesは石油製品や関連サービスを販売する事業です。電気自動車充電ソリューションや排出量計算サービスなど、温室効果ガス削減のためのデジタルソリューションを提供しています。売上高・営業利益の推移は以下のとおりです。 

参考:Neste「Annual Report 2023」 

売上高は上昇傾向がみられるものの、営業利益は1億ユーロ前後を推移しています。 

Neste(ネステ)の成長戦略 

ネステは持続可能性をキーワードに、再生可能な循環型のソリューションを提供することで成長を続けています。さらに、今後の成長戦略として以下の3つの目標を掲げ、持続可能性に対する取り組みを加速させる予定です。 

  • 2030年までに年間2,000万トンの温室効果ガス排出量の削減を支援する 
  • 2030年までに自社生産における温室効果ガス排出量を50%削減し、2035年までにカーボンニュートラルな生産を実現する 
  • 2040年までに販売製品の使用段階排出強度を2020年比で50%削減する 

※使用段階排出強度は、ネステの製品を使用した際の温室効果ガスの排出量を販売したエネルギーの総量で除して算出する指標のこと。 

このような成長戦略を掲げ、再生可能な燃料の開発に取り組むことで世界の脱化石燃料に貢献しています。 

Neste(ネステ)は2030年代半ばに原油精製を終了する計画 

ネステは、持続可能な社会の実現に向けたソリューションの提供により成長してきた企業です。今後も生産可能燃料の開発・生産を加速させる予定で、場合によっては2030年代半ばに原油精製を終了する計画も検討しているほどです。再生燃料の普及は、さまざまなビジネスに影響を与えると考えられるため、ネステの今後の動向に注目しましょう。 

関連する事例

海外進出および展開はどのように取り組めば良い?
とお悩みの担当者様へ

海外進出および展開を検討する際に、
①どんな情報からまず集めればよいか分からない。
②どんな観点で進出検討国の現場を見ればよいか分からない。
③海外進出後の決定を分ける、「細かな要素」は何かを知りたい。

このような悩みをお持ちの方々に、プロジェクト時には必ず現地視察を行う、弊社PROVE社員が現地訪問した際に、どんな観点で海外現地を視察しているのかをお伝えさせていただきます。