カーボンフットプリントとは?明治/ハースト婦人画報社の事例を紹介

2024年にEUでは、電気自動車などのバッテリーに対し、カーボンフットプリントの申告が義務化されます。しかし、「カーボンフットプリントって何?」と思う方もいるでしょう。

カーボンフットプリントとは、簡単に説明すると、商品が製造され廃棄されるまでに排出したCO2排出量を表示する仕組みです。脱炭素社会の実現に向けて、日本でも注目されています。

本記事ではカーボンフットプリントの概要や重要視されている理由、日本・海外の取り組み事例を紹介します。

カーボンフットプリントとは

カーボンフットプリント(Carbon Footprint of Products)とは、商品の製造から廃棄・リサイクルされるまでの、ライフサイクル全体におけるCO2排出量を表示する仕組みです。略してCFPと呼ぶこともあります。

例えば、一般的な製品のライフサイクルは以下のとおりです。

  • 原材料の調達
  • 生産
  • 流通
  • 販売
  • 使用
  • 維持管理
  • 廃棄・リサイクル

各ステップにおいて排出されるCO2をそれぞれ算出し、全てを合算すると、1つの製品が廃棄されるまでのCO2排出量が求められます。

カーボンフットプリントの目的

カーボンフットプリントの導入には、主に3つの目的があります。

  • 製品のCO2排出量の可視化

製品のラベルに150gや300gといったように、CO2排出量が一目でわかる

  • CO2排出削減の取り組みを推進

サプライチェーンが一体となり、CO2排出削減に向けた取り組みが期待されている

  • 一般消費者の意識の変容

カーボンフットプリントが表示されることで、よりCO2排出量の少ない商品が選ばれやすくなる

つまり、CO2排出量を削減するための取り組みとして期待されているのがカーボンフットプリントです。

カーボンフットプリントが重要視されている理由

カーボンフットプリントは、EUやアメリカなど世界中の企業が取り組み始めています。日本においても、経済産業省や環境省が中心となり、2008年から推進・普及が図られています。

このように、カーボンフットプリントが重要視されている理由は以下のとおりです。

  • 気候変動の問題意識の高まり

昨今の世界的な課題は、持続可能な社会の実現です。そのなかでも、温暖化による気候変動は大きな問題の1つとして認識されています。

なぜなら温暖化により、異常気象のリスクが高まっているためです。例えば、日本では周辺の海水温度が高まることで、台風の勢力が強くなりやすくなるといわれています。

今後の温暖化を抑えるためには、CO2排出量の削減が求められています。その一環として、カーボンフットプリントが注目されているのです。

  • 2050年までにカーボンニュートラルの実現

日本は、2050年までにカーボンニュートラルを実現すると宣言しています。宣言の実現には、国や地方自治体の取り組みだけでは不可能で、官民一体となった取り組みが必要です。

カーボンフットプリントはサプライチェーンが一体となったCO2排出削減を促せるため、カーボンニュートラルの実現に役立つと考えられています。

  • 国際的に環境問題への取り組みが必須

SDGsに代表されるように、国際的に環境問題への取り組みが企業に求められています。また株主などは投資判断の1つとして、環境問題への取り組みを重視しているため、企業価値を高めるためにも必要といえるでしょう。

加えて、カーボンフットプリントに対応しなければ、将来、製品を販売できなくなる恐れもあります。例えば、EUでは2024年の義務化以降、カーボンフットプリントを申告しなければ、EU域内においてバッテリーを販売できなくなる可能性があります。

このように、企業にとって環境問題への取り組みは、必須といえる時代が近づいているのです。

日本企業のカーボンフットプリントの取り組み事例2選

日本においても注目を集めているカーボンフットプリントですが、他の企業がどのようにして対応しているのか気になるポイントでしょう。そこで、この章では日本企業のカーボンフットプリントの取り組み事例を紹介します。

株式会社明治:牛乳生産におけるカーボンフットプリントの算定

出典:株式会社明治

株式会社明治は国内で初めて、牛乳の生産におけるカーボンフットプリントの算定を行いました。同社の牛乳のサプライチェーンは上図のとおりで、算定したところ「上流」の工程である原材料購入・搬送で、温室効果ガスの排出量全体の91%を占めていることが判明しています。

株式会社明治の取り組みのポイントは以下の2つです。

  • 国際団体のガイドラインにもとづいた算定方式を採用したこと
  • 酪農家の実データから算出したこと

算定方式は、産業の平均値などの2次データを使用して算出する方法もあります。しかし明治は、酪農家の協力のもとに1次データを収集し、実データをもとに、カーボンフットプリントを算定しています。

株式会社ハースト婦人画報社:イベントでカーボンフットプリントの算定を実施

出典:株式会社ハースト婦人画報社

株式会社ハースト婦人画報社は、環境省が実施する「製品・サービスのカーボンフットプリントに関わるモデル事業」の参加企業です。モデル事業の参加企業は、支援を受けながらカーボンフットプリントの算定や削減計画の検討などを行い、一連のノウハウを獲得できます。

また同社は2023年11月11日に開催する、サステナビリティのイベント「ELLE ACTIVE!for SDGs」にて、イベントに関わるカーボンフットプリントを算出する企画を予定しています。

会場の原材料調達から当日の電力や来場者の交通手段といった、あらゆるCO2排出項目がリストアップされ、カーボンフットプリントの仕組みを体験できる絶好の機会といえるでしょう。

カーボンフットプリントの世界企業での取り組み

カーボンフットプリントの取り組みはヨーロッパや北米、アジアなど、世界的に広がっています。この章では、世界の企業がどのようにカーボンフットプリントに取り組んでいるのかを紹介します。

Patagonia(パタゴニア)

出典:Patagonia

Patagonia(パタゴニア)はアメリカのアウトドアブランドです。クライミングやサーフィン、マウンテンバイクなどのスポーツ用品を取り扱っています。パタゴニアは2025年までにカーボンニュートラルの実現を目指しています。目標実現のための対策は、以下の3つです。

  • 2020年までに再生可能資源による電力のみ使用する
  • カーボンフットプリントを減らすために、再生可能エネルギーに投資する
  • 2025年までにリサイクル、あるいは再生可能な素材だけを使用する

これらの対策を推進することで、将来的にはカーボンポジティブの実現を目指しています。

※カーボンポジティブとは、CO2排出量よりも吸収量が多いこと

スターバックス

出典:スターバックス

アメリカのスターバックスは、いわずと知れた世界最大のコーヒーチェーンです。そのスターバックスでは、2020年に「リソースポジティブ」の実現を宣言しています。リソースポジティブとは、得られた以上に還元量を増やすことを意味します。つまり、CO2であれば、排出量よりも吸収量のほうが上回るカーボンポジティブのことです。

またスターバックスは2030年までに、カーボンニュートラルなグリーンコーヒーの実現を目指しています。加えて、その加工過程で使用する水の量を50%削減することも目標に掲げています。なおグリーンコーヒーとは、コーヒー豆を焙煎する前の生豆のことです。

これらの目標の達成のために、水・廃棄物・CO2のフットプリントを半減させる環境目標を決定しています。カーボンフットプリントをさらに範囲を広げたのがスターバックスといえるでしょう。

まとめ

気候変動への課題に対し、世界中で取り組みが実施されています。その取り組みの1つがカーボンフットプリントです。

日本では、少ないながらカーボンフットプリントの表示をしている商品が販売されています。今後は取り組む企業が増え、消費者が商品を購入する際の選択基準の1つになることが期待されています。

日本企業においても世界水準の取り組みをすることで、国際的な競争力を獲得するのに役立つはずです。また、これからの世界情勢に乗り遅れないように、新たな取り組みを注視していきましょう。

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