
コロナ禍で感染リスクが低いとして注目を浴びたことを背景に、世界の釣り具市場は拡大しています。
そのような情勢のなか、釣り具市場で世界トップシェアを誇っているのはグローブライドです。グローブライドは、ダイワのブランドで知られる国内メーカーです。
本記事では、釣り具の世界市場規模やグローブライドがなぜ世界で活躍しているかを紹介します。
釣り具の世界市場規模
2022年の釣り具の世界市場規模は、Staits Researchの「釣り具市場:タイプ別(フック、ライン)、性質別(淡水、海水)、地域別の情報 – 2030年までの予測」によると、131億ドル(約1兆8,995億円)でした。今後、釣り具市場は年平均成長率4.3%で成長すると予測されています。2031年の釣り具市場は191億ドル(2兆7,695億円)に達する見込みです。
国内の釣り人口は520万人

2022年の国内の釣り人口は「レジャー白書」によると、520万人でした。2017年は640万人であったことから、わずか5年で100万人以上が減少していることになります。

出典:TIEMCO「決算説明補足資料」
上記のグラフから各年度の釣り人口の前年比を算出すると以下のとおりです。
年 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
釣り人口 (万人) | 670 | 750 | 690 | 640 | 620 | 670 | 550 | 560 | 520 |
前年比 (%) | – | +11.9 | -8.0 | -7.2 | -3.1 | +8.0 | -17.9 | +1.8 | -7.1 |
2020年のコロナ禍において、国内の釣り人口は前年比17.9%減と大幅に縮小しました。その後も2019年の水準に回復していません。国内の釣り具市場において、釣り人口の減少は深刻な問題といえるでしょう。
釣り具の企業世界ランキング
国内の市場が今後も拡大できるのかが不透明ななか、世界で活躍している国内企業もあります。釣り具メーカーの世界ランキングトップ3は以下のとおりです。
順位 | 企業名 | 売上高 | 国・地域 |
---|---|---|---|
1位 | グローブライド | 1,201億円* (2023年3月期) | 日本 |
2位 | シマノ | 1,110億円* (2022年) | 日本 |
3位 | ピュアフィッシング | 推定600億円 | アメリカ |
国内企業のグローブライドとシマノは、3位のピュアフィッシングと比較しても突出して売り上げています。
グローブライド

出典:グローブライド
グローブライドは、釣り具市場で世界トップシェアを誇る企業です。釣り愛好家には「ダイワ」ブランドで知られています。この章では、グローブライドの概要や売上高の推移、海外進出の取り組みなどについて解説します。
グローブライドの会社概要
グローブライドの会社概要は以下のとおりです。
社名 | グローブライド株式会社 (GLOBERIDE, Inc.) |
---|---|
本社 | 東京都 |
設立 | 1958年7月29日 |
資本金 | 41億8,411万円 |
従業員数 | 連結 7,722名(個別 824名) |
売上高 | 1,345億8,300万円(2023年3月期) |
海外拠点数 | 19拠点 |
参考:グローブライド「会社情報」
グローブライドは、1955年にリールの製造を開始した松井製作所が1958年に「大和精工株式会社」を設立したのが始まりです。
1969年に商号を「ダイワ精工株式会社」に、さらに2009年に「グローブライド株式会社」に変更し現在に至ります。釣り具用具以外にも、ゴルフ用品やテニス用品、サイクルスポーツ用品の製造・開発を行っています。
2023年3月期のセグメント別の売上高は以下のとおりです。

参考:グローブライド「部門別セグメントデータ」
このようにグローブライドの売上の約9割は、フィッシング事業となります。
釣り具事業の売上高の推移
釣り具事業の売上高の推移は以下のとおりです 。

決算時期 | 売上高 (億円) | 構成割合 (%) | 決算時期 | 売上高 (億円) | 構成割合 (%) |
---|---|---|---|---|---|
2014/3 | 550.12 | 81.6 | 2019/3 | 768.27 | 87.5 |
2015/3 | 614.73 | 82.9 | 2020/3 | 780.31 | 88.4 |
2016/3 | 653.18 | 82.6 | 2021/3 | 911.50 | 90.9 |
2017/3 | 664.61 | 84.0 | 2022/3 | 1,082.81 | 89.7 |
2018/3 | 728.24 | 84.9 | 2023/3 | 1,201.52 | 89.3 |
参考:グローブライド「グローブライドレポート/決算説明会資料」
グローブライドの主力事業である釣り具事業は、年々売上を拡大し、2023年には1,201億円に達しました。10年で2.1倍に拡大し、近年は売上の約9割を占めている状態が続いています。
海外進出の歴史
2023年の全体に占める日本の売上の割合は56.5%で、アジア・オセアニアは22.4%、欧州は10.7%、米州は10.4%でした。
このことからも、世界各国で販売していることがわかります。年々拡大するグローブライドの釣り具事業の売上高は、海外進出が成功しているためといえるでしょう。
グローブライドの海外進出の歴史は古く、1966年にアメリカのロサンゼルスの「ダイワ・コーポレーション」設立から始まります。
1973年にはオーストラリア、1977年にはイギリスに進出し、1976年には世界1位の釣り具メーカーとなりました。
現在の主な海外進出先は、以下の15の国・地域です。
米州 | 欧州 | アジア・オセアニア |
---|---|---|
・アメリカ | ・イギリス ・ドイツ ・フランス ・イタリア ・ロシア | ・オーストラリア ・タイ ・中国 ・ベトナム ・香港 ・韓国 ・台湾 ・シンガポール ・マレーシア |
海外進出の戦略
グローブライドは早い段階から海外進出に乗りだし、高い技術力を背景に世界市場でのシェアを拡大してきました。そのグローブライドの海外戦略は、地域の魚種ごとに細分化した製品をマーケティングすることです。
例えばアメリカではバス釣り用品、中国では海釣り、東南アジアではレジャー用といった具合です。また各地域に子会社を設立し、販売拠点としているのもグローブライドの海外戦略の特徴といえます。
海外拠点の一覧は以下のとおりです。
海外販売拠点 (15拠点) | ・ダイワ・コーポレーション(アメリカ) ・ダイワ・スポーツ・リミテッド(イギリス、兼製造) ・ダイワ・フランスS.A.S. ・ダイワ・ジャーマニーGmbH ・ダイワ・イタリアS.r.l. ・《OOO》ダイワ・ロシア ・ダイワ(オーストラリア)Pty.リミテッド ・ダイワ・FT・エンタープライズ(タイワン)Co.,リミテッド ・ダイワ(香港)Co.,リミテッド ・ダイワ・コリアCo.,リミテッド ・ダイワ・スポーツ(広州)リミテッド ・アジア ダイワ(香港)Co.,リミテッド ・シンガポール・ダイワPTE.リミテッド ・ダイワ・スポーツ(M)SDN.BHD.(マレーシア) ・ダイワ・キャスティング(広州)トレーディングCo.,リミテッド |
海外生産拠点 (4拠点) | ・ダイワセイコー(タイランド)Co.,リミテッド(兼販売) ・ゾンサン・ダイワ・スポーティンググッズ・リミテッド ・トンガン・ダイワ・スポーティンググッズ・リミテッド ・ダイワ・ベトナム・リミテッド |
引用:グローブライド「会社情報」
釣り具市場を参考に海外進出を検討しよう
釣り具市場では、国内企業のグローブライドやシマノが世界の2強です。海外進出に成功しているスポーツ分野といえるでしょう。 国内の少子高齢化・人口減少が進むなか、グローブライドの海外進出はどの産業においても参考となるはずです。この機会に海外進出について検討してみてはいかがでしょうか。