スコープ1・2・3とは?概要とGHGプロトコルをわかりやすく解説

最近、「スコープ1やスコープ2と聞く機会が増えてきたけれど、どういう意味なの?」と思っている方はいませんか。

スコープ(Scope)はGHGプロトコルにおいて、サプライチェーンのどの部分からの二酸化炭素排出なのかを表す区分です。

横文字ばかりでわかりにくいと感じている方もいるでしょう。そこで本記事では、スコープやGHGプロトコルの概要をわかりやすく解説します。

そもそもGHGプロトコルとは

GHGプロトコルは、GHG(温室効果ガス)排出量の算出・報告の手順などを定めた国際基準です。GHGプロトコルイニシアチブにより策定され、2011年10月に公表されました。

GHGプロトコルイニシアチブとは、持続可能な開発を目指すために約200社の企業が主体となり発足したイニシアチブです。企業以外に政府機関やNGOなども参加しています。

GHGプロトコルでは、1企業からのGHG排出量だけではなく、サプライチェーン(資材調達から販売までの一連の流れ)全体の排出量も重要視しています。サプライチェーンのどの部分に該当するのかを表した、3つの区分がスコープです。

スコープ1・2・3の意味と違い

出典:環境省「サプライチェーン排出量算定の考え方

スコープ(Scope)は、「スコープ1」「スコープ2」「スコープ3」の3つに区分され、それぞれサプライチェーンのどの部分を指すのか定義されています。ここでは各区分の違いについて解説します。

スコープ1とは?自社が排出するGHG

スコープ1とは、自社の事業活動により直接排出されるGHG排出量を指します。そのため、直接排出量と呼ばれることもあります。

例えば、製鉄工場をイメージするとわかりやすいでしょう。製鉄には大量のコークスを燃焼させ、鉄鉱石を溶かす必要があります。その際にどうしても、コークスの燃焼により大量の二酸化炭素が発生します。高炉が真っ赤になる画像や映像を見たことがある方も多いはずです。

ほかにも以下のような例が挙げられます。

  • ディーゼルやガソリンなどの発電機から排出される二酸化炭素
  • 化石燃料を原料とした製品の製造
  • 社内の焼却炉から発生する二酸化炭素 など

このようにサプライチェーンの構造のなかで、スコープ1は自社のGHG排出を表します。

スコープ2とは?自社が間接的に排出するGHG

スコープ2とは、他社から供給される電気や熱エネルギーを利用する際に、他社がエネルギーを生み出すために発生させるGHG排出量のことです。自社の事業活動により間接的に発生することから、間接排出量とも呼ばれます。

例えば明かりを点けたり、設備を稼働させたりするには電気が欠かせません。火力発電所からの電気を使ったとすると、火力発電で発生したGHG排出量がスコープ2となります。

そのため、電気エネルギーを太陽光発電などの再利用可能エネルギーに変更することは、スコープ2の排出量削減につながります。

スコープ3とは?サプライチェーンの上流・下流が排出するGHG

スコープ3は、スコープ1とスコープ2以外のGHG排出量を指します。具体的には、サプライチェーンの上流や下流で発生するGHGのことです。

サプライチェーンの上流は、原材料の調達や製造、自社工場までの配達などを指します。下流は商品の出荷先のことで、問屋やスーパー、消費者などです。

つまり、サプライチェーンの上流・下流のどちらもスコープ3に該当します。しかし、上流・下流を一括りにすると範囲が広いため、スコープ3は15のカテゴリに分類されています。

スコープ3の15のカテゴリ

Scope3のカテゴリ一覧は以下のとおりです。カテゴリ1~8がサプライチェーンの上流で、カテゴリ9~15が下流を指します。

出典:環境省「サプライチェーン排出量算定の考え方

なお、サプライチェーンの潮流の定義は、上流が「購入した製品やサービスに関する活動」、下流が「販売した製品やサービスに関する活動」です。

スコープ1・2・3でのGHG排出量削減の具体例

昨今、環境汚染や気候変動などへの関心が高く、企業にもGHG排出量削減が求められています。排出量削減に取り組むことで、企業にも以下のメリットがあります。

  • 将来のコストを抑えられる
  • 企業のイメージアップにつながる
  • 投資家から評価される
  • 企業の競争力を強化できる
  • 排出削減量をクレジット化し売却できる

そこで、GHG排出量削減の6つの具体例を紹介します。

省エネ技術の導入

GHG排出量を削減する方法は、新たな省エネ技術の導入です。省エネ技術を導入することで、エネルギーの削減につながりGHG排出を抑えられるためです。例えばエネルギーマネジメントシステムは使用するエネルギーを可視化することで、効果的な省エネにつながります。

再生可能エネルギーの活用

GHG排出量を抑制するためには、エネルギーの調達先を見直すことも1つの方法です。例えば自社に太陽光発電装置を取り付けたり、再生可能エネルギーに変更したりするなどです。これらの取り組みにより、スコープ1・スコープ2のGHG排出量を抑制できます。

CCUSの導入

CCUSとは、二酸化炭素を回収し再利用や貯留する技術のことです。積極的に二酸化炭素を削減する手法として注目されています。2020年には、北海道・苫小牧で大規模な実証実験が行われ、実用化・普及に向けた開発が進んでいます。

実用化が始まったばかりのCCUSは、新たなビジネスモデルを創造する可能性も秘めているため、注目すべき技術といえるでしょう。

省エネ設備への更新

4つ目のGHG排出量削減の取り組みは、省エネ設備への更新です。例えば、LED照明や高効率空調への更新が挙げられます。

経済産業省では、「省エネルギー投資促進に向けた支援補助金」を実施しています。このような補助金を活用することで、投資費用を抑えながら、将来的なコストの削減が可能です。

出典:令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金

GHG排出量削減のためのパートナー連携

GHG排出量を抑制するためには、関連企業とのパートナー連携が重要です。例えば、サプライチェーン全体で連携すると、GHG排出量を算出するカーボンフットプリントに取り組めます。カーボンフットプリントは、消費者に炭素排出量を数値として表示できるため、消費者に対する新たな選択肢の提供として注目されています。

ネットゼロを達成したサプライヤーとの取引

ネットゼロとは、GHG排出量と吸収量を合算して正味ゼロを達成することです。カーボンニュートラルとほぼ同じ意味です。ネットゼロを達成したサプライヤーと取引すると、GHG排出量がゼロのため、サプライチェーン全体のGHG排出量を下げるのに役立ちます。

GHG排出削減にはスコープ1・2・3で対策が必要

GHG排出量を削減することは、環境汚染・地球温暖化を抑制するのに役立ちます。そのため企業においても、GHG排出削減の取り組みが求められています。

効果的に抑制するためには、スコープ1・スコープ2の自社企業の取り組みだけではなく、スコープ3のサプライチェーン全体での取り組みが必要です。この機会に、スコープ1・2・3のそれぞれの対策を見直してみてはいかがでしょうか。

 

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