日本のバイクは海外で人気!ホンダが世界シェア1位を獲得するワケ

日本の自動二輪車は、世界シェアの約半数を占めるほど人気があります。その国内企業のなかでも、とくに世界のシェア率が高いのはホンダです。

ホンダのバイクと聞くと「スーパーカブ」を思い浮かべる方も多いでしょう。日本郵政が集配業務用のバイクに採用しているのもカブです。

このように聞くと、「なぜ世界進出に成功したの?」と疑問を持つビジネスパーソンもいるでしょう。

本記事では海外進出を検討している方に向けて、自動二輪車の市場規模やホンダが世界シェア1位をキープする理由について紹介します。

世界の自動二輪車の市場規模

一般社団法人 日本自動車工業会の調査によると、2022年の自動二輪車の主要国における生産台数は4,908万台でした。5年間の推移は以下のとおりです。

参考:一般社団法人 日本自動車工業会「世界生産・販売・保有・普及率・輸出

近年は、4,800万台前後を行ったり来たりしています。また世界各国の自動二輪車の普及率と保有台数は以下のとおりです。

出典:一般社団法人 日本自動車工業会「世界生産・販売・保有・普及率・輸出

台湾・マレーシア・インドネシア・タイなど、アジアを中心に普及率と保有台数が高くなっています。

世界では日本のバイクが人気

FOURINの「世界二輪車統計年刊 2023」によると、メーカー別の二輪車販売台数のシェア率は以下のとおりです。

参考:FOURIN「世界二輪車統計年刊 2023

世界のシェア率を見てみると、ホンダが33.8%でトップを誇っています。また、ホンダ・ヤマハ・スズキの3社では、44.8%と半数近くになります。このように、自動二輪車の分野で日本は多くのシェアを獲得しているのです。

日本国内の自動二輪車の売上ランキング

日本における4大バイクメーカーは、ホンダ・ヤマハ・スズキ・カワサキ(2021年に分社化し、現在はカワサキモータース)です。各メーカーの規模を確認するために、4大バイクメーカーの売上高を比較します。

順位企業名売上高
1位ホンダ2兆9,089億円
※二輪事業
2位ヤマハ1兆2,917億円
※二輪事業
3位スズキ3,332億円
※二輪事業
4位カワサキモータース288億円

ホンダは世界1位のシェアを誇る企業だけあって、ヤマハと比較すると2倍以上の売上があります。世界シェア率と国内企業の売上ランキングから、ホンダは自動二輪車において圧倒的な地位を確立しているといえるのです。

ホンダが世界シェア1位を獲得するワケ

自動二輪車において世界シェア1位はホンダです。ホンダは、バイクの分野において海外進出に成功した事例といえます。この章では、ホンダの海外戦略について紐解いていきます。

ホンダのはじめての海外進出先は台湾

ホンダは本田宗一郎氏が1948年に設立した企業です。ホンダがはじめて海外に進出したのは、設立からわずか4年後の1952年です。台湾に進出したのを皮切りに、沖縄(当時はアメリカの統治下)やフィリピン、アメリカへと拡大しました。

そして1959年、アメリカにアメリカン・ホンダ・モーターを設立し、本格的に海外進出を開始します。

現在では、四輪車・二輪車・パワープロダクツなど、さまざまな分野でグローバルに展開するに至っています。2022年度の売上高は16兆9,077億円で、営業利益の7,807億円のうち96%は海外事業によるものです。

世界で愛されるスーパーカブの魅力

ホンダがバイクで世界のシェアを獲得できた大きな要因に、人気車種の「スーパーカブ」が挙げられます。

1958年に発売されたスーパーカブは、それまでのバイクと以下の2点で大きく異なります。

  • スカートで乗れるように開発

それまでのエンジン剥き出しのバイクは、女性から怖いと思われていました。そこで、スカートでも乗れるように開発され、足回りが独特な形状になったのです。

  • クラッチ操作はペダルで踏むだけ

ギアを変更する際のクラッチは、ペダルを踏むだけで操作できるように設計されました。

このように「だれでも扱いやすいバイク」というコンセプトで開発されたスーパーカブは、世界中で大ヒットします。生産台数の推移は以下のとおりです。

出典:ホンダ「“スーパーカブ”シリーズって何機種あるの?乗り味も違ったりするの!?

グラフからもわかるように、今でも根強い人気を誇っており、2017年には累計販売台数が1億台を突破しています。

ホンダの海外戦略は「需要のある所で生産する」

ホンダの海外戦略の特徴は、「スーパーカブ」に代表されるように、汎用製品を現地生産し販路を広げていることです。「需要のある所で生産する」を経営思想に掲げており、それを実践することでシェア拡大に成功しているのです。

このことは、日本の生産数から読み解くことができます。

出典:一般社団法人 日本自動車工業会「世界生産・販売・保有・普及率・輸出

日本のバイクのシェア率が高い割に、生産数が少ないのは積極的に現地生産に取り組んでいる結果です。また、輸出台数からも同様のことがいえます。

出典:一般社団法人 日本自動車工業会「世界生産・販売・保有・普及率・輸出

ホンダが海外進出に成功した国・地域

ホンダが海外進出に成功した国の代表例は、インドネシアとタイです。

インドネシア

インドネシアでは2.4人あたり1台のバイクを所有し、総保有台数は1億2,526万台です。中国よりも4,000万台以上も多くのバイクを保有しています。

その巨大な市場で、ホンダは約75%のシェア率を獲得しています。成功の大きな要因はスクーターの投入です。使い勝手の良いスクーターは通勤や通学の足に適していると大ヒットしています。

その人気の高さから、バイクのことを「ホンダ」と呼ぶ人がいるほど、現地に定着しています。

タイ

出典:タイ・ホンダ

タイの自動二輪車市場におけるホンダのシェア率は76.5%です。タイは二輪車の保有台数が2,129万台で日本の約2倍の規模がある市場です。

ホンダがタイの市場で成功したのは、人気車種の「WAVE」が要因といえます。WAVE110iとWAVE125iの2車種で、2022年の登録台数の44.5%を占めているためです。

「WAVE」シリーズはタイのユーザーに合わせたスクーターで、大容量の燃料タンクや大きな荷物ボックスが特徴です。扱いやすさに加えて、現地のニーズに対応している点が成功を収めている秘密といえるでしょう。

出典:バンコク産業情報センター「タイの自動二輪車市場の動向について

インドでは現地メーカーと激しいシェア争い

世界各地でトップシェアを獲得しているホンダですが、インドでは現地メーカーと激しいシェア争いを繰り広げています。

その現地メーカーは「Hero MotoCorp」で、世界二輪車販売台数において2位の企業です。

ただしHero MotoCorpの前身は、インドの自動車メーカーの「Hero Cycle」とホンダの合弁企業の「Hero Honda」です。2010年に合併を解消したため、社名をHero MotoCorpに変更しています。

つまり、ホンダは自社が育てた企業とシェア争いを繰り広げているのです。このことからも、ホンダのバイクにおけるマーケティング戦略の有効性を証明しているといえるでしょう。

バイクは現地生産により世界シェア1位をキープ

自動二輪車はホンダ・ヤマハ・スズキの3社で、世界シェアの約半数を占めています。そのなかでもホンダのバイクは、現地生産によって世界シェア1位をキープしています。

圧倒的な地位を獲得したホンダの手法は、海外進出を検討している企業にとって、参考となる点が多いでしょう。

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