Chip4とは?日米韓台で半導体サプライチェーン構築を目指す動き

我が国の半導体産業の行方を左右するキーワードはChip4です。

しかし、あまり馴染みのない言葉のため、「Chip4って何?」と思う方が多いでしょう。

Chip4は、日本・アメリカ・韓国・台湾の4カ国による半導体サプライチェーン構想・戦略のことです。米中対立が深まるなか、中国の半導体産業に対するけん制の意味合いがあります。

本記事ではChip4の概要や動き、各国の役割について解説します。

Chip4(チップ4)とは

Chip4(チップ)とは、アメリカのバイデン政権が打ち出した、日本・アメリカ・韓国・台湾で構成される半導体サプライチェーン構想です。

半導体はパソコンや自動車、家電製品など多くの製品に使われています。このように経済安全保障上、重要な物質の半導体へのアクセスを強化することがChip4の目的となります。

ただしChip4は協議を開始したばかりで、2023年12月時点で具体的な方向性はまだ決定していません。

Chip4のこれまでの動き

Chip4は2022年に構想が発表されてから、これまでに2回の会合を開いています。

・2022年9月28日 予備会議

日本・アメリカ・韓国・台湾の関係者が集まり、予備会議が開催されました。予備会議のために具体的な議論は行われなかったものの、各国との意見交換が行われています。

・2023年2月16日 初会合

初会合はオンラインで行われ、日本・アメリカ・韓国・台湾が参加しています。各国・地域政府も参加しており、日本からは経済産業省が参加しました。半導体における供給網の多角化について議論されています。

Chip4の動きは、この2回の会合のみです。次回の会合の予定についても決まっておらず、現在は水面下で調整が続けられていると思われます。

Chip4はアメリカ主導による半導体サプライチェーン

そもそもChip4の構想がなぜ立ち上がったのかといえば、米中対立とコロナ禍・ウクライナ侵攻による既存のサプライチェーンの混乱が要因として挙げられます。

米中対立はトランプ前大統領の時代に激化して、高い関税をかけあう攻防が続いたのを覚えている方も多いでしょう。半導体産業においても対中のデカップリングが進められています。具体的には、2022年10月にアメリカは先端半導体・半導体製造装置の中国への輸出を規制しました。そして日本やオランダに対しても同調するように要請し、日本は2023年7月、オランダは2023年8月に中国への輸出を規制しています。

バイデン大統領になった後も半導体に関する規制を緩めないのは、アメリカの安全保障上、重要なためです。半導体は軍事兵器にも欠かせず、人工知能などの先端技術が取り入れられている最新兵器となれば、先端半導体が必要です。つまり、中国へ先端半導体の輸出を禁止することで、中国の先端半導体の製造・入手コストが高くなり軍事力の弱体化につながります。

アメリカはこれらを理由に、中国を除いた4カ国による半導体サプライチェーンの構築を目指しているのです。

参加国にとっては、信頼できるサプライチェーンを確保できるメリットがあります。コロナ禍・ウクライナ侵攻の際はサプライチェーンが混乱し、世界的な半導体不足に陥りました。このようなリスクを減らすのは、国家戦略上重要といえるでしょう。

Chip4の半導体サプライチェーンでの役割

半導体産業は日本や韓国、台湾、中国などのアジアに集中しているのが特徴です。また各国それぞれに特徴があり、サプライチェーンでの役割が異なっています。ここではChip4の半導体サプライチェーンを考えるうえで、各国の半導体産業の役割について考察します。

日本:素材・製造装置

日本の半導体産業で強みを持つ分野は、「素材」や「製造装置」です。製造装置のシェアは世界の31%でアメリカに次いで2位、素材は48%と世界の約半数を占めています。Chip4では、これら素材・製造装置の分野で重要な役割を果たすと思われます。

出展:経済産業省「半導体・デジタル産業戦略

アメリカ:製造・設計

アメリカの半導体産業において強みのある分野は設計・製造です。代表的な企業は「Intel」で、パソコンのCPUメーカーとして広く認知されています。またほかにも、「NVIDIA」「Broadcom」「Qualcomm」など、大手メーカーが数多くあります。

韓国:メモリ半導体・DRAM

韓国の強みは半導体メモリとDRAMです。韓国の代表的な半導体企業のSamsungは、半導体メモリの世界シェアの39%、DRAMの42.8%を占めています。

なお半導体メモリは、データの記録を保持する半導体回路のことです。DRAMは通電時のみ記録を保持できる半導体回路で、パソコンやスマホ、家電などに使われています。

台湾:ファウンドリー

台湾の強みはファウンドリーです。ファウンドリーとは、半導体製造工程の前工程と呼ばれる半導体製造に特化した領域です。台湾の半導体企業TSMCは、ファウンドリーの代表的な企業で、世界シェアの56.1%と過半数を占めています。

Chip4のメリットは信頼性の高いサプライチェーンの確保

そもそも、「なぜ日本がChip4に参加するの?」と思う方もいるでしょう。その理由は、Chip4のメリットと大きく関係しています。

コロナ禍・ウクライナ侵攻により、サプライチェーンが混乱した際に世界的な半導体不足になりました。日本も例外ではなく、2020年以降は半導体の不足により新車の納期遅れが発生し、今現在も続いています。

つまり、半導体不足により日本の主要産業である車を作りたくても作れない状態なのです。そこで、安定したサプライチェーンを確保するために、日本はChip4に参加しているのです。また、IPEFと呼ばれるアメリカが呼びかけた経済連携にも参加し、半導体以外のサプライチェーンの確保にも努めています。

Chip4のリスクは対中輸出への影響

Chip4に参加するデメリットは、中国への輸出に影響する可能性があることです。Chip4は中国をサプライチェーンから排除することが目的のため、参加すれば中国からの反発が容易に想像できます。日本も影響は大きく、中国への輸出を拡大させている日本企業には相当な痛手になると予想されます。

アメリカは中国への規制をさらに強化

初会合以来、Chip4は表立った動きがないものの、アメリカは対中輸出への規制強化の動きをみせています。

2022年10月、先端半導体や装置を中国に輸出することを規制したのに続き、2023年10月にさらなる強化を打ち出しています。中国の半導体設計企業を簡易制限リストに加えることで、他国経由で輸出されるのを防ぐ構えです。

一方、韓国や台湾の企業に対しては、規制適応の猶予を延長することを発表しています。各国が中国に依存している現状に対して、配慮しているようにみえます。このことからも、中国をサプライチェーンから排除するのは簡単ではないといえるでしょう。

Chip4が本格的に始動するかに注目

Chip4は、アメリカ主導で立ち上がった半導体サプライチェーン構想です。参加国は日本・アメリカ・韓国・台湾です。中国をサプライチェーンから排除することで、地政学的リスクを抑えることを目的としています。

しかし、日本を含む参加国は半導体の輸出において中国も無視できない存在です。そのような情勢のなか、Chip4が本格的に動きだすのかに注目が集まっています。

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