日本企業が活躍する半導体製造装置とは?シェア率やランキングを紹介

半導体製造装置は、半導体産業のなかで日本が強みを持つ分野です。

半導体産業の凋落が指摘される日本ですが、技術力の高さを生かして半導体製造装置分野からの巻き返しが期待されています。本記事では半導体製造装置の市場規模やシェア率、売上ランキング、国内企業5選を紹介します。

半導体製造装置とは?

半導体製造装置とは、名前から想像できるとおり半導体を製造するための装置のことです。半導体製造装置と一括りにしていますが、装置の種類は豊富にあります。なぜなら半導体の製造には工程が多く、どの工程にも精密な装置が必要なためです。

半導体がどのように作られているか知らない方もいるでしょう。そこで半導体が作られる工程を簡単に紹介します。まず半導体は「設計」「前工程」「後工程」に製造工程がわけられています。各工程での手順は以下のとおりです。

設計前工程後工程
・回路、パターン設計
・フォトマスク作成
・ウエハーの表面の酸化
・薄膜形成
・フォトレジスト塗布
・露光、現像
・エッチング
・レジスト剥離
・洗浄
・イオン注入
・平坦化
・電極形成
・ウエハー検査
・ダイシング
・ワイヤーボンディング
・モールディング
・最終検査

このように半導体は複雑な手順を踏んで作成されています。

また半導体産業は一部の企業を除き分業制です。設計だけを担当する企業というように、前工程だけ、後工程だけの企業もあります。同様にして、半導体製造装置だけを専門に設計・開発する企業もあるのです。

半導体製造装置の市場規模

半導体製造装置の市場規模は右肩上がりに成長しています。2025年の世界市場規模が1,240億ドルに到達するとの試算もあるほどです。下記のグラフは日本製装置の販売額の推移ですが、2022年には3.8兆円と過去最高を更新しました。

参考:経済産業省「統計表一覧(経済産業省生産動態統計)

なぜ右肩上がりに市場規模が拡大しているかといえば、自動車やスマホなど、現代の生活に必要な多くの製品に半導体が欠かせないためです。

例えばパソコンやタブレット、冷蔵庫、太陽光発電などにも半導体が使われています。とくに2021年から2022年にかけて、半導体の需要が急拡大しています。デジタル機器に加えて、ゲームの人気、企業のDXなどの動きが拡大したことも要因です。

参照:SEMI、世界半導体製造装置の2023年末市場予測を発表 2025年の半導体製造装置市場は過去最高の1240億ドルへ

日本の半導体製造装置が世界に占めるシェア率

日本の半導体製造装置が世界に占めるシェア率は31%です。アメリカの35%に次いで2位を獲得しています。半導体産業から凋落したといわれて久しい日本ですが、半導体製造装置ではシェアを確保しているのです。

※EMEAとはヨーロッパ、中東、アフリカのこと

出典:経済産業省「半導体・デジタル産業戦略

日本がシェアを獲得できている理由は、技術力が挙げられます。半導体製造の工程は1,000以上あります。その工程のすべてで極めて高いクリーン度に加えて、高度かつ繊細な技術力が必要になるためです。

半導体製造装置の国内企業の売上ランキング

世界で高いシェアを獲得しているだけあり、国内では数多くの半導体製造装置を開発・販売している企業があります。そのような国内企業の2023年版の売上高ランキングは以下のとおりです。

2023年版 半導体製造装置の国内企業の売上ランキング

順位企業売上高(億円)
1位東京エレクトロン22,090
2位アドバンテスト5,601
3位SCREENホールディングス4,608
4位キヤノン3,292 ※インダストリアル事業
5位ディスコ2,841
6位KOKUSAI ELECTRIC2,454
7位ニコン2,032
8位レーザーテック1,528
9位東京精密1,123 ※半導体製造装置事業
10位TOWA412 ※半導体事業

国内企業では、1位の東京エレクトロンが2位以降と大きく差をつけていることがわかります。

日本が誇る半導体製造装置メーカー

半導体製造装置は日本が世界に誇る産業です。そのなかで活躍している5社の概要や特徴などについて解説します。

東京エレクトロン

出典:東京エレクトロン

東京エレクトロンは国内の売上ランキング1位の企業です。研究開発拠点は国内に7、海外に7の計14拠点で、活動拠点は83拠点となります。1年間に約6,000台の半導体製造装置を出荷し、これまでに89,000台以上の納入実績があります。高い技術力が特徴で、特許の保有件数は21,645件です。

東京エレクトロンの強みは製造装置の生産性の高さです。顧客の生産ラインの生産能力を向上させることで信頼を獲得しています。半導体製造装置で海外進出に成功した代表企業といえるでしょう。

アドバンテスト

出典:アドバンテスト

アドバンテストは東京に本社を置く半導体製造装置の企業です。活動拠点は日本だけではなく、アメリカやヨーロッパ、東南アジア、韓国、台湾、中国とグローバルに展開しています。

アドバンテストの強みは、長年の活動によりさまざまな業態の半導体企業や大学、研究機関とパートナーシップを持っていることです。そのつながりにより、先進的な半導体を手掛ける装置を得意としています。

また世界各地からグローバルに分業化したサプライチェーンをサポートし、アメリカのTechInsights社から「10 BEST」に35年連続で選出されているのも強みです。

SCREENホールディングス 

出典:SCREENホールディングス

SCREENホールディングスとは、日本・北米・ヨーロッパ・アジア・オセアニアで活動する企業です。半導体製造装置のほかに、プリント基板関連機器やICTソリューション、ライフサイエンスなど幅広い分野で活躍しています。

海外に29拠点を構え、海外売上比率が88%以上と高い割合を占めているのが特徴です。

SCREENホールディングスが得意とする技術は、「表面処理技術」「直接描画技術」「画像処理技術」です。これらの技術を横展開して、さまざまな分野での展開を成功させています。

ディスコ 

出典:ディスコ

ディスコは従業員が4,790人で、日本・アメリカ・アジア・ヨーロッパに拠点を持つ企業です。1969年に、日本の半導体関連企業としてアメリカに初めて進出しており、海外展開に積極的なのが特徴です。

事業内容は、「装置」と「加工ツール」の開発・製造・販売をしています。加工ツールは「砥石」のことで、砥石を用いた半導体の「削る」「切る」「磨く」の技術に優れています。

ニコン

出典:ニコン

ニコンの半導体装置事業は、国内外に17拠点を持っています。日本やアメリカ、ヨーロッパ、アジアが主な活動エリアです。

ニコンでは半導体露光装置に強みがあり、半導体の小型化・高機能化に貢献しています。半導体装置の海外進出は1980年に販売して以来、全世界で8,000台以上を出荷しています。

日本は半導体製造装置で巻き返せるか

半導体製造装置の分野は日本の高い技術力を生かせる産業です。そのため、半導体産業では凋落したといわれる日本ですが、半導体製造装置の分野では高いシェア率を誇っています。

半導体市場は拡大を続けるとみられるなか、強みを生かし、半導体産業での巻き返しが期待されます。今後は半導体装置製造産業についてもチェックしてみてください。


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