車載用半導体不足が深刻に。明暗を分けた車メーカーの調達戦略の違いとは

2021年以降、生活に欠かせないあらゆるデジタル家電使用されている半導体が世界的に不足している状態です。特に深刻なのは日本を支える基幹企業である自動車業界では、各社メーカーが自動車生産の減産をせざるを得ないような状況にあります。 

今回はそんな不測の事態となっている車載用半導体ついて記述していきます。

 

半導体とは

半導体

 

「半導体」とは、導体(電気を通すもの)と絶縁体(電気を通さないもの)の中間の性質を持つ存在です。その半導体の電気的性質を利用し、半導体上に、IC(集積回路)をのせ、その中に「ファームウエア」と呼ばれる制御の動作を決めるソフトウエアを組み込み、デジタル製品の制御を行います。そのことから、現代では機械を制御するセンサーなどの装置を組み込んだもののことを広義で「半導体」と呼び、電化製品を制御するパーツとして認識されています。 

家電製品でも、エアコンの温度センサーや、テレビ、パソコンのCPU、スマートフォン、などの生活に欠かせないあらゆる電化製品、そして今やデジタル技術の搭載が必須な自動車にも使用されている重要なパーツなのです。 

1980年代には日本も半導体産業が活発化しており、アメリカの半導体一大生産地域である北カリフォルニアの「シリコン・バレー」になぞらえ、熊本県を中心とした半導体の生産地域「シリコン・アイランド」と呼ばれていたこともありました。1985年には日本は世界1の半導体生産国になり、日本電気、東芝、日立製作所など日本のそうそうたる電機メーカーが上位を独占していました。世界の半導体需要はその後も伸び続けましたが、日本の半導体生産は2000年をピークに日本以外のアジア地域の圧倒的な成長に押され、国内の生産は減少傾向にあります。 

 

半導体生産の主要メーカーとその取引先

2021年世界で最も半導体を販売しているのは、アメリカのIntel。パソコンのCPUで有名なメーカーですよね。そのあとに韓国のサムスン、熊本に新工場を立てる予定というニュースが今年流れた台湾のTSMC、韓国のSKハイニックス、アメリカのMicronと続きます。 

ランキング メーカー 特徴
1 インテル アメリカ パソコンのCPUの製造で有名な企業
2 サムスン電子 韓国 液晶、スマートフォン、家電など世界に展開する韓国企業
3 TSMC(台湾積体電路製造)  台湾 世界最大の半導体製造ファウンドリで、半導体受託生産を行い生産を伸ばす企業
4 SK ハイニックス 韓国 韓国の財閥、SKグループの一員
5 マイクロ・テクノロジ アメリカ コンピューター用ストレージなどを製造販売する企業
6 クアルコム アメリカ 日本でもかつて携帯電話に使用されたCDMA方式を実用化させ、そのチップを販売した企業
7 ブロードコム アメリカ 無線、通信ネットワーク系の企業 
8 NVIDIA アメリカ コンピューター内のグラフィックコントローラーを取り扱う企業
9 テキサス・インスツルメンツ アメリカ 1950年代のトランジスタラジオ発売など、歴史の長い企業
10 MediaTek 台湾 自社工場を所有せず半導体を製造する「ファブレスメーカー」
11 AMD アメリカ インテルの後を追う、コンピュータ用CPUで有名な企業
12 インフィニオン・テクノロジーズ ヨーロッパ 自動車用の半導体などを製造し、本社はドイツに存在する企業
13 Apple アメリカ 日本でも有名なiPhoneMacなどを販売する企業
14 STマイクロエレクトロニクス ヨーロッパ スイスに本社を置く半導体企業
15 キオクシア 日本 2017年に東芝の半導体部門から分けられ、2019年に「キオクシア」という名称に変更

 

表1 半導体製造装置の販売台数上位15社

参考:https://www.icinsights.com/news/bulletins/Top15-Semi-Companies-Log-YearOverYear-Growth-Of-21-In-1Q21/ 

 

全体的にアメリカ企業が強く、韓国、台湾がしのぎを削っている状態です。栄華を誇った日本半導体会社も順位は年々落ちてしまい、世界の15位以内にもギリギリ1社入っている状況で年々順位が下がりつつあります。ただし、キオクシアはこの上位15社の中では生産が下がっているわけではなく、他企業の伸びが大きいことか原因となっています。

 

車載用半導体automotive semiconductor とは

半導体を使う製品の中でも特に自動車はさまざまな電子的制御が必要とします。車体の制御や運転に関する制御、エンジン内・ナビやオーディオの制御など、車種にもよりますが車1台でも数10から100余りの半導体を必要とします。主要な車載半導体の種類は4つに分けられます。

  • 「マイコン」車両の動きを制御する車にとって重要なユニット
  • 「パワー半導体」電力、電圧などの電気系統を制御するユニット
  • 「プロセッサー」制御の中での判断の部分を行うユニット
  • 「センサー」距離、画像、などの測定を行うユニット

近年ではよりハイレベルの環境性能が求められるため、加えて自動車のエンジン内にも電子制御ユニット(ECU)が使用されています。これは燃料の効率的な使用を制御したり、排気ガスを制御したりするためのものです。安全運転のための装置設定も増加するなか、社内のデバイスが増えるたびに、それを制御する半導体の数も増加していき、その需要がますます上がることになります。

 

車載用半導体の市場の拡大

車載半導体

世界の半導体市場は新興国の発展による需要の拡大、使用電気機器への搭載の増加、自動車の電化や電子制御デバイスの増加などの影響で、年々増加傾向にあり2021年では約5700億ドルの市場と予想されています。自動車の主要な半導体である車載用の「マイコン」だけでも2020年に173億ドルにも上ります。 

主要な製造元としてはオランダ「NXPセミコンダクターズ」がシェアの上位に存在し、17.1パーセントを占めています。もともとは、オランダの電気機器関連メーカーである「フィリップス」から2006年に半導体部門を受け継いだ比較的新しい企業です。 

日本の「ルネサスエレクトロニクス」も、車載用マイコン市場では高いシェアを保持しており、17%とNXPセミコンダクターに迫る勢いですこの会社は、もともと日本の「三菱電機」や「日立製作所」から派生した会社と「NEC」から分社化した会社が統合されて2010年に設立された会社です。 

 

なぜ半導体が不足しているのか

世界の販売数は増加しているにも関わらず、半導体、特に車載半導体でも不足が継続しています。高額で、販売量も多い自動車の販売の減産にまで追い込まれているのでしょうか。 

一つ目の理由としては、既述した、世界での半導体需要の高まり。新興国では、自家用車、スマートフォン、パソコンなどが急速に普及し、それぞれに半導体が必要なために一人当たりの必要量が増加していることがあります。

二つ目の理由としては、電子化が進む機器への対応です。自動車業界でも、以前はエンジン内の制御や車体の制御、オーディオなどで半導体が使用されていたものが、ハイブリッド用の電子制御、安全運転のための装置のセンサー、安全装備などの設定が増加していることがあります。快適で、便利な電気的装備には半導体が使用されることが多く、1種類のデバイスであってもより多くの半導体が必要になりました。 

最後の理由として、さらに新型コロナウイルス蔓延で改めて利便性を見直されたデジタル製品・サービスへの移行が考えられます。テレワークや手続の電子化により新しいデバイスや技術が生まれ、需要が増加しています。その需要が高まる中で、新型コロナウイルス蔓延の影響による減産、大寒波によるアメリカの自動車半導体工場の停止、日本でも既述した「ルネサスエレクトロニクス」の工場火災が起こり、半導体生産自体が減少してしまったことも原因の一つと考えられ、複雑に重なり合う理由がこの半導体不足の原因にあると考えられています。 

 

自動車メーカー各社の対応と状況

自動車には多くの半導体が使用されている上に、単価が高くかかわる業種も多種多様に及び、生産台数も世界規模で多くなるため、経済に多大なる影響が波及します。日本においても自動車産業は重要な基幹産業であり、半導体不足による売上の減少はできる限り圧縮したいという考えです。それでは各自動車メーカーの対応はどのようなものなのでしょうか。

 

トヨタ

トヨタ 会社ロゴ

世界有数の販売台数を誇る日本のトヨタ。トヨタは有名な「カンバン方式」を掲げ、パーツの在庫をできる限り減らし、下請け会社に必要な時に注文して生産してもらう形です。今回の半導体不足の問題でも、半導体は下請け会社から納入される形なので、下請け会社である半導体メーカーがトヨタの希望している量の半導体を納入することができなければ、自動車の生産はストップに。大きな影響を受けました。さらにトヨタは既述の火災があった「ルネサスエレクトロニクス」との取引量が多く、それも減産の理由の一つとして挙げられます。 

この中でもトヨタは既に世界的な半導体需要を見込み、4ヶ月分以上在庫を調達していたため、他の自動車メーカーほど影響は少ないと発表をしています。

 

GM、フォード

アメリカ国旗とビル群

半導体不足はアメリカの自動車生産にも影を落としています。半導体不足や寒波が原因での自動車の減産量は、20217月で約170万台分にも上る発表しています。アメリカの大手自動車メーカー「GM」はこれを機にサプライチェーンの大幅な見直しを検討しており、供給不足や、不足の事態に対応できる形を模索しています。

一方のアメリカの大手自動車メーカーの一角であるフォードも半導体不足の影響で、純利益が、23%も減少してしまいました。しかしながら、早い段階で、半導体不足による生産の調整を行ったため、GMと比較すると影響は少ない模様。そして半導体の生産量の回復を見込み、自動車生産も回復するであろうという楽観的な見方をしています。 

 

テスラ

世界の自動車メーカーが半導体不足による減産が起こる中、アメリカの電気自動車メーカーである「テスラ」は、過去最高の販売台数を売り上げました。なぜテスラは半導体不足の中でも供給を続けることができたのでしょうか。 

それはテスラ内で半導体を生産していることが主な理由となります。企業内で半導体を生産することにより、自動車の販売台数画通りに半導体を使用することが可能なため、世界の半導体不足の影響を受けることがなく、生産を継続することが可能だったのです。 

 

まとめ

世界で巻き起こる半導体不足の状況。半導体は現代のありとあらゆる電子デバイスに使用されており、搭載されるデバイスの価格も高額で、特に自動車は一般市民が購入できる最高価格の商品です。このことにより半導体不足による減産は経済に多大な影響を及ぼし各産業が対策に奔走しているような状況です。この影響により世界の大手メーカーも大幅なサプライチェーンの見直しや、生産体制の見直しを行うことが予想されます。

自動車産業が盛んな日本では、特に重要となる半導体問題。かつて一大半導体生産国であった日本も、その供給不足を解消できるように、国内工場の建設や国内企業の増産などを行い、人々の仕事も増え、それをきっかけに景気上昇の足がかりになるといいですよね。 

 

^半導体 

https://www.hitachi-hightech.com/jp/products/device/semiconductor/life.html 

^世界半導体市場 

https://www.jeita.or.jp/japanese/stat/wsts/docs/20210608WSTS.pdf 

^半導体生産市場の変遷 

https://www.shmj.or.jp/toukei/pdf/STA2016_01.pdf 

^車載用半導体 

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ305YC0Q1A330C2000000/ 

^アメリカ自動車メーカー半導体不足 

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2800I0Y1A021C2000000/ 

^トヨタ、テスラ半導体不足事情 

https://news.yahoo.co.jp/articles/dfb5a5c01ffa64b0608d2bf6f14f5187a16c8908?page=2 

 

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