鴻海(ホンハイ)精密工業とはどんな会社?会社概要や業績を紹介

鴻海(ホンハイ)精密工業は、2016年に日本のシャープ株式会社を買収したことで知られる企業です。2024年9月、そのシャープ株式会社が電気自動車の開発に参入することを発表したため、鴻海精密工業にも注目が集まっています。本記事では鴻海精密工業の会社概要や経営状況、成長戦略について紹介します。

鴻海精密工業とはどんな企業

出典:鴻海精密工業

鴻海精密工業は、台湾に本社を置く世界最大のEMS企業です。EMSは電子機器製造受託の意味で、電子機器の設計や製造などを請け負うことを指します。この章では、同社の会社概要や歴史、経営理念を紹介します。

会社概要

鴻海精密工業の会社概要は以下のとおりです。

会社名鴻海精密工業
英語:Hon Hai Precision Industry Co., Ltd.
中国語:鴻海精密工業股份有限公司
本社台湾
設立1974年
従業員数613,893人(2024年3月31日時点)
売上高6兆1,622億台湾ドル(2023年度)

同社の研究開発及び製造センターは、中国・インド・日本・ベトナム・マレーシア・チェコ共和国・アメリカなどにあります。また、同社はフォーチュン誌の2024年の「フォーチュン・グローバル500」において、32位を獲得しました。※フォーチュン・グローバル500は、世界中の会社を対象とした総収益ランキングです。

歴史

1974年、創業者の郭台銘(かくたいめい)氏は鴻海精密工業の前身企業である鴻海プラスチック工業を設立しました。郭台銘氏は中国の山西省にルーツを持つ台湾人で、資産家としても知られています。また、近年では台湾総統選挙において出馬を目指すなど、政界進出の動きにも注目が集まっています。

鴻海精密工業は設立当初、白黒のテレビのつまみ部分を製造する企業でした。そして、1981年にパソコンの基盤のコネクタ部分、1982年にパソコンの電線やケーブルの製造を開始しました。

その後の同社の主な出来事は以下のとおりです。

1985年:アメリカに支社を設立し、「FOXCONN」ブランドを展開する

1988年:中国に支社を設立し、「富士康」ブランドを展開する

2002年:チェコ共和国に欧州事業本部を設立する

2014年:通信業界に参入する

2016年:シャープ株式会社を買収する

同社は2023年に実験用の低軌道衛星の打ち上げに成功するなど、現在では様々な分野で活躍しています。

経営理念

鴻海精密工業の経営ビジョンは、「世界中のお客様に総合的でスマートな生活体験を提供する」です。その実現のために、以下の5つの柱を経営理念として掲げています。

  • 長期的な価値創造

従業員とお客様のために長期的な価値を創造し、持続可能な事業成長を推進すること。

  • 事業の持続可能性

持続可能な成長のために、強固で安定した基盤の確立に専念すること。

  • 絶え間ない改善の追求

業界における国際競争力を確保するために、常に事業の成功と改善に努めること。

  • イノベーション

技術と科学のブレークスルーを目指して、新技術の研究開発、新しい知識の獲得と応用、知的財産の保護に全力を尽くすこと。

  • グローバルな視点

戦略的なグローバルネットワークを通じて、お客様に高度な統合技術と強力な生産能力を提供すること。

鴻海精密工業の経営状況

鴻海精密工業の経営状況として、直近6年間の売上高と営業利益の推移を紹介します。

参考:鴻海精密工業「Annual Reports

2023年度の売上高は6兆1,622億台湾ドル(27兆7,299億円)で、2022年度の6兆6,269億台湾ドル(29兆8,210億円)から4,647億台湾ドル(2兆911億円)減少しました。2023年度の営業利益は1,665億台湾ドル(7,492億円)で、2022年度の1,737億台湾ドル(7,816億円)から72億台湾ドル(324億円)減少しました。2023年度の売上高は前年度と比較して減少したものの、同社史上2番目の好成績です。※1台湾ドル=4.5円換算

また、地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:鴻海精密工業「Annual Reports

同社の主要地域は、アメリカ・シンガポール・アイルランドだとわかります。

鴻海精密工業の製品別売上高の推移

鴻海精密工業の経営状況を深掘りするために、この章では製品別の売上高に焦点を当てて解説します。製品別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:鴻海精密工業「Annual Reports

スマート家電の売上高が半分以上を占めており、次いでクラウド及びネットワーク製品、コンピューティング製品が続きます。さらに、各製品の売上高の推移を紹介します。

スマート家電

スマート家電製品は、主にスマートフォンやテレビ、ゲーム機などの関連製品です。スマート家電製品の売上高の推移は以下のとおりです。

参考:鴻海精密工業「Quarterly Results

2023年度の売上高は3兆3,513億台湾ドル(15兆808億円)で、2022年度の3兆5,048億台湾ドル(15兆7,716億円)から1,535億台湾ドル(6,907億円)減少しました。減少した要因として、スマートフォン市場の低迷が挙げられます。

クラウド及びネットワーク製品

クラウド及びネットワーク製品は、主にサーバーやネットワーク製品や5Gなどの関連製品です。クラウド及びネットワーク製品の売上高の推移は以下のとおりです。

参考:鴻海精密工業「Quarterly Results

2023年度の売上高は1兆3,773億台湾ドル(6兆1,978億円)で、2022年度の1兆5,508億台湾ドル(6兆9,786億円)から1,735億台湾ドル(7,807億円)減少しました。減少した主な要因として、世界のサーバー市場の低迷が挙げられます。

コンピューティング製品

コンピューティング製品は、主にコンピューターやタブレットなどの関連製品です。コンピューティング製品の売上高の推移は以下のとおりです。

参考:鴻海精密工業「Quarterly Results

2023年度の売上高は1兆774億台湾ドル(4兆8,483億円)で、2022年度の1兆2,144億台湾ドル(5兆4,648億円)から1,370億台湾ドル(6,165億円)減少しました。減少した主な要因として、パソコンの需要低迷が挙げられます。

コンポーネント及びその他

コンポーネント及びその他は、①コネクタや機械部品②サービスが該当します。コンポーネント及びその他の売上高の推移は以下のとおりです。

参考:鴻海精密工業「Quarterly Results

2023年度の売上高は3,560億台湾ドル(1兆6,020億円)で、2022年度の3,569億台湾ドル(1兆6,060億円)から9億台湾ドル(40億円)減少しました。コンポーネント及びその他は、他の製品が減少している中、ほぼ横ばいを維持しています。

鴻海精密工業の成長戦略

鴻海精密工業は成長戦略として、3つの産業と3つの技術を重要視する「3+3」戦略を掲げています。3つの産業は「電気自動車」「デジタルヘルス」「ロボット」で、3つの技術は「人工知能」「半導体」「次世代通信」です。また、短期戦略として、新たに電気自動車市場と半導体市場への進出を計画しています。冒頭に紹介したシャープ株式会社が電気自動車の開発に参入するのも、同社の短期戦略の一環と言えるでしょう。

電気自動車分野の動向に注目しよう

鴻海精密工業は世界最大のEMS企業で、主な製品はスマート家電・クラウド及びネットワーク製品・コンピューティング製品です。過去最高売上高を記録した2022年度と比較して、2023年度は1,535億台湾ドル(6,907億円)減少しました。しかし、同社史上2番目の記録のため、業績は好調を維持していると言えるでしょう。

そのような鴻海精密工業が次の成長産業と捉えているのは、「電気自動車」「デジタルヘルス」「ロボット」です。特に電気自動車市場は、シャープ株式会社と新たに参入する方針のため、同社の今後の動向に注目しましょう。

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